メデタイ人気の釣りターゲット
早わかり!「マダイの生態」

text-photo_岳原雅浩記事協力:【無双真鯛フリースライド特設サイト】

(※当記事は、「無双真鯛フリースライド特設サイト」に掲載された記事を、必要な文言等の追記、その他の部分も修正するなど改編したものです)

鯛ラバ(タイラバ)で真鯛(マダイ)を釣るために、タックルやルアー(タイラバ)の使い方をマスターし、ねらい方や戦略といったテクニックを深めていくことは大事だ。しかし一方で、ターゲットとなるマダイについて知ることも同様に大切ではないだろうか。
ここでは、マダイとはいったいどんな魚なのか? マダイについて一緒に学んでみたい。

真鯛の生態 - ECOLOGY OF “MADAI” –

01_ マダイ釣果オンパレ

魚の王様と呼ばれ、おめでたい魚の代名詞である「真鯛(マダイ)」。日本では高級魚として昔から重宝され、赤く美しい色に、調理方法を選ばない癖のない綺麗な白身のタイは、おめでたい席などには欠かせない魚。そのマダイの仲間である「スズキ目タイ科の魚」で日本近海に生息するのは以下の13種マダイ、チダイ、キダイ、キビレアカレンコ、ホシレンコ、タイワンダイ、ヒレコダイ、クロダイ、キチヌ、ヘダイ、オキナワキチヌ、ミナミクロダイ、ナンヨウチヌ のみだ。

他にも「○○鯛(ダイ)」をよく耳にされるだろう。イシダイにイシガキダイ、アマダイ、ニザダイ、サクラダイ、フエダイにフエフキダイ、スズメダイ……。日本産魚類の図鑑をめくってみると約300種もの魚に「何とかダイ」という名前を見つけることができる。 ご存じの方も多いと思うが、実はこれらの魚はいわゆる「あやかりダイ」と呼ばれているもので、おめでたくて高級な? 「タイ」ブランドにあやかっているだけである。タイ科には分類されず、マダイやクロダイとは近縁でも何でもないのだ。

このように、正真正銘「ニッポンのタイ」は前述した13種だけなのである。そのタイ科の魚たちはマダイのように赤いタイと、クロダイのように黒っぽいタイに分けることができる。

赤いタイの見分け方 - HOW TO DISTINGUISH –

赤いタイを見分ける場合に、まずキーになるのが体に青色斑があるかないかだ。青色斑があればマダイかチダイ、青色斑がなければキダイかキビレアカレンコだ。ちなみに、その他のホシレンコ、タイワンダイ、ヒレコダイにも青色斑はない。

ここでは、「マダイ」と一番混同しやすい「チダイ」の見分け方を紹介させていただく。成魚の場合、見慣れた人なら釣り上げたときにパッと見て全体の雰囲気でマダイかチダイの区別は付くはず。「チダイ」は後頭部が張り出しているのだ。しかし小型の個体はこの限りではない。かんたんなのは鰓膜(さいまく)と呼ばれる鰓孔(さいこう)近くにあって、その開閉に関与する膜。血鯛という漢字があてられるチダイは、その鰓膜が血のように赤く、その赤い部分がひじょうに幅広い。 比べて「マダイ」は赤い部分が狭い。もしくは赤くない個体もいる。かんたんに見分ける方法は尾鰭(びき=おびれ)の後縁に注目すること。マダイは黒く縁取られているがチダイは黒くない。尾鰭下葉の先端が白いのもマダイの特徴だ。

02_illustマダイの見分け方.jpg マダイの見分け方

マダイの形・特徴 - SHAPE / FEATURES –

マダイの体は、横から見ると体高が高く、前から見ると体高に比べて厚みがなく側扁している。体色は美しい紅・赤色で、鮮やかな青い小斑点(=青色斑)がみられるのは前項のとおり。また(繰り返しになるが)、尾鰭の後縁が黒っぽいことも特徴だ。
背鰭(はいき=せびれ)は1枚で、12本の硬い棘(きょく=とげ)と10本の軟条(なんじょう)と呼ばれる軟らかい筋からなり、臀鰭(でんき=しりびれ)は、3本の棘と8本の軟条からなる。また、両顎の歯は頑丈で、ひじょうに発達した2列の臼歯が並んでおり、その硬く強い顎でエビやカニなどの海底に棲む生き物を食べるのに適している。

03_ さまざまなマダイ
04_ さまざまなマダイ
05_ さまざまなマダイ

オスとメスの見分け方 - MALES AND FEMALES –

パッと見て判断できるほど、明確に雌雄を見分けるのはかんたんではないだろう。幼魚はほとんど見分けがつかないのではないかと思われるが、一般的に「成魚のオスは全体的に黒っぽく、メスは比較的鮮やかな桜色」といわれている。特に産卵時期の春は、オスの黒味が増すことが知られ、この黒味がかった色は婚姻色であるそうだ。

その他の雌雄の見分け方としては、「おでこの形」がポイント。成魚になったオスは目玉に沿っておでこが出っ張っており、メスはおでこが出ておらず柔らかい輪郭をしている。また、マダイの特徴である目の上の青いアイシャドウが、メスの方が鮮やかで綺麗だ。このようなポイントを押さえておけば、オスとメスを見分けることが、ある程度は可能だ。
ちなみに、全般的にメスの方がマダイらしい美しさがあることから、お祝いの席でよく使われるが、実は味の方はオスの方が美味しいといわれている。

06_ メスのマダイ
恐らく雌(メス)と思われる個体。しかもよく見ると片側の2つの鼻孔がつながっており、人工種苗、養殖マダイの特徴が見られる。天然マダイは鼻孔が左右に2つずつ(計4つ)という違いがある
07_ オスのマダイ
恐らく雄(オス)と思われる個体。比較的体色が黒ずんでおり、おでこも出ている

マダイの好む環境(生息・食性) - ENVIRONMENT –

日本全国、比較的広いエリアで見かけるマダイ。正確には、北海道南部より南の日本海、太平洋沿岸域、朝鮮半島南部から台湾を経て南シナ海までといったエリアに生息している。

水深30~200m

どれくらいの水深に棲んでいるかについては、調べたところエリアによりまちまちであるが、おもに水深30~200mという幅広い水深を行き来しているようだ。
ご存じのようにマダイは岸釣りのターゲットにもなっているので30mよりも浅いエリアにも生息するが、2歳までの若魚は砂底や砂礫底を好み、成魚は岩礁や深場の砂底を好む傾向がある。また、起伏に富み潮通しのよい地形もマダイの好む環境である。

適水温15~28℃

春から初夏にかけて、岩礁付近の浅場で産卵することが知られているマダイは、水温が8℃を下まわる海域では生活できないといわれ、12℃を下回る冬は食欲も落ち深場の水温が安定しているエリアで越冬するようだ。適水温は15~28℃で、18℃以上の水温で食欲旺盛となる。

 

深場で越冬した後、水温が上がってくると浅場に現れて積極的にエサを食べ、産卵をおこない、秋から冬にかけての水温低下とともに深場へと戻っていく。

幼魚のうちは動物性プランクトンを食べて育ち、藻場(内湾の浅いエリア)では、エビ・カニの幼生やワレカラ類、ウミグモ類、ウニ、ヒトデなどを食べ大きくなっていく。「エビでタイを釣る」という諺があるほど、エビ類(甲殻類)が好物であるが、その他、貝類やイカ類、小魚、またエサが乏しい場合はさまざまな底生生物、海藻などもたべる雑食でもあるようだ。

08_イラスト-鯛生息水深.jpg タイの生息する水深

マダイの成長(寿命) - GROWTH –

卵から孵化した生まれたての赤ちゃんは、1ヶ月程度浮遊生活をした後、1cm程度に成長してから内湾の浅場や藻場で生活を始める。その年の秋には10cm以上に成長し、1歳で全長が約15~18cmとなる。
その後、2歳で約23~25cm、3歳で約30cmとなり、オスはおおよそ3歳で成熟、メスは半数が成熟する。4歳で約40cmに成長し、雌雄全てが成熟するそうだ。体重も1kgを超えるまでとなる。生活環境にもよるだろうが、10歳では60cmほどになり、一般的によく釣れるサイズは全長70cmまでのものが多い。
またマダイはひじょうに長寿ということでも知られており、20~30年が寿命だそうだ。しかしなかには40年も生きる個体がおり、全長で100cm以上、体重も10kgを超えるものがある。

09_イラスト-鯛成長.jpg タイの年数ごとの成長

食・文化・豆知識 - FOOD / CULTURE / KNOWLEDGE –

10_ 魚料理

食文化としてわれわれ日本人と結びつきの強いマダイ。
一番美味しいとされるのは40~50cm、1~2kgのサイズであるが、先に述べた生態以外の話として知っておきたい「豆知識」についても少しだけ見ていこう。

釣りと食

漁として延縄、刺網、定置網、巻網などで獲られるマダイだが、その姿形のよさが商品価値に大きく影響するため、特に釣りによる漁獲量は多いそうだ。
九州西岸で日本の年間漁獲量の約半分が獲られているマダイだが、近年では天然マダイの漁獲量は減少傾向にあり、幼魚の放流や西日本を中心とした養殖事業も盛んに行われているそうだ。

マダイ回遊説

先に述べたように、マダイは季節に応じて浅場と深場を行き来するだけと考えられているが、なかには回遊するものもいるのではないかという説がある。
聞く話では、西伊豆から放流された幼魚が、その後、高知県沖で捕獲され、約5年間の間に約500kmという距離を移動したとのこと。全てのマダイがそうなのか、一部がそうなのかは不明だが、そのような事例が報告されている。

タイの名前の由来

11_サクラダイ.jpg マダイ釣果

春、桜が咲くころ産卵のために瀬戸内海に集まったマダイは、その体色が美しく美味なため「桜鯛」と呼ばれる。また、兵庫県では、豊富な餌に恵まれ潮流の速い明石海峡で育ったマダイが、身が引き締まり美味しいということで「明石鯛」と呼ばれ、地域ブランドとして有名だ。しかし、そもそも「鯛がタイたる名前の由来」はどのようなものだろうか。諸説あるようだ。

  • 【説1】昔、タイは見た目の形が平たいことから”平魚(たいらうお)”と呼ばれていた。それが短縮されて”タイ”となった説。
  • 【説2】位が高く上等という意味の”大位(たいい)”から”タイ”と呼ばれるようになったという説。
  • 【説3】朝廷が召し上がる魚との意味”廷の魚(ていのうお)”から訛って”タイ”となった説。

いずれにしてもこの時点では「タイ」であるが、その後「あやかりダイ」が多数増えたことで他の魚と区別をするために『マダイ』と呼ばれるようになったそうだ。また、名前以外に次のような説もある。

縁起物とされる由来

12_縁起物.jpg 祝いの席のマダイ料理

紀元前1,200年ごろ、中国の殷(いん)の時代に呂尚(ろしょう=後の太公望)という男がいた。呂尚は気性が真っ直ぐで、釣りをする際にも真っ直ぐなハリを使うほどであったそうだ。(真っ直ぐなハリで釣り上げる仕組みは不明)
この真っ直ぐな呂尚のことを知り非凡な才能を見抜いた、当時殷に仕えていた文王は彼を重用したそうだ。文王は後に父から受け継いだ「周」を建国し、呂尚は大臣となった。
このような話から、「鯛」の漢字のつくりに「周」の字があるため縁起物とされているという話だ。

ことわざ「鯛もひとりはうまからず」

タイは縁起物。しかしタイのようなご馳走でも、たった一人で食べたのでは美味しく感じられない。つまり、食事の味を引き立てるのは、雰囲気も重要であるという意味のことわざ。

 

フカセ釣り、コマセ釣り、ビシマ釣り、シャクリ釣り、一つテンヤ釣りなどなど、さまざまにマダイを釣る方法があるが、「タイラバ」は比較的新しい釣り方で、伝統的な漁法を現代のルアー釣りにアレンジしたものだ。
その道具や技術、テクニックの進化は目覚しいが、狙う相手は昔から変わらず日本人に愛されている「マダイ」。自然を相手にするためには、まずは相手のことをよく知ることも大切。ということで、当記事が少しでもアングラーのみなさんのお役に立てれば幸いだ。