知っていれば安心!釣魚豆知識 似たやつがいっぱい!アジ科の魚たち
簡単な見分け方と地方名

マアジに代表されるアジ科の魚は、全世界には約30属150種がおり、アジ科分布の北限とされる日本近海では南に行くほど種類が多いが、マアジやマルアジは北海道や琉球などをのぞく、ほぼ全域に分布する。
とにかく「味がよいからアジ」が語源といわれるほど、日本では食卓でなじみのある魚だし、サビキで釣る小アジから巨大になるカンパチやヒラアジ類まで釣りの対象魚としての人気も非常に高いのだ。
アジ科の魚たちには非常に似たものが多く、また日本各地での呼び名もさまざまで、自分が釣りあげたアジが何なのか混乱してる人も多いはず。今回は釣りの入門向けに「似たものアジ」の簡単な見分け方と地方名を整理してお届けしよう。

マアジとマルアジ

サビキで小アジを釣っていると同じようなアジでも赤っぽい個体と青っぽい個体のものがいることに気が付いたことはないだろうか。実はこれがマアジとマルアジなのである。
赤っぽい方がマアジ属のマアジで青っぽいのがムロアジ属のマルアジ。その体色からして関西では赤アジ、青アジと呼び分けて区別しているし、体高があり平べったいマアジに対しマルアジは細長いので、慣れれば見分けが付くが、なかには赤っぽくもなく青っぽくもない、平べったくもなく細長くもない、中途半端なやつがいるからやっかいだ。そこで、もっとも簡単な見分け方。注目は尾ビレの付け根。ここを魚類学的には尾柄部(びへいぶ)と呼ぶが、この尾柄部の上下に小さなヒレがあればマルアジ、なければマアジだ。この小さなヒレを小離鰭(しょうりき)と呼ぶ。胸ビレ先端と側線のカーブ位置の違いで見分ける方法もあるが、小離鰭で見分ける方が確実だ。食味の点でいうとマアジに軍配が上がるが、夏場に沖釣りで釣れる大型のマルアジはなかなか美味しい。

マアジ
マアジ
マルアジ
マルアジ

【マアジの地方名】
アヅ(富山、秋田)、メダマ(東京)、ノドクロ、クロアジ(東京 : 回遊型)、キアジ、キンアジ(東京 : 居着き型)、アカアジ(関西)、ヒラアジ(和歌山、大阪、広島)、ホンアジ(和歌山)、トツカアジ、トツカワ(和歌山)、オオアジ(神戸、松江)、オニアジ(兵庫明石、大阪湾の大型)、ゼンゴ(中国、四国地方)、キンベアジ(鹿児島)、ジンタン(鹿児島 : 稚魚)などさまざまだが、全国的にアジ、マアジで通じる。

【マルアジの地方名】
アオアジ(関西ほか)、アオタ(千葉県竹岡、横須賀市佐島)、他にアカムロ、アカメ、アオコ、アオゴ、アオムロ、ガツン、シムロ、ナガイユー、ナガウオ、マル、ムロアジなど。

ブリとヒラマサ

ブリとヒラマサも慣れないとパッと見て区別するのは難しい。もっともポピュラーな見分け方は、上顎後端の上角の違い。角ばっているのがブリで丸みがあるのがヒラマサなのだが、どっちつかずで判断に迷う場合もあるのは事実。もうひとつ、胸ビレと腹ビレの長さのバランスを見るというのもある。ブリでは胸ビレと腹ビレの長さがほぼ同じだが、ヒラマサは胸ビレが腹ビレよりも明らかに短いのだ。これはけっこう分かりやすいと思う。さらに、胸ビレの先端が体側の黄色い線にかかっていなければブリ、かかっているのがヒラマサという違いもあるようだが、黄色い線自体が不明瞭な個体もいるので、胸ビレの長さを見る方が確実だろう。

ブリ
ブリ
ヒラマサ
ヒラマサ
  20cm未満 40cm未満 40cm以上 60cm以上 80cm以上
関東 ワカシ イナダ ワラサ ブリ
関西 ワカナ ツバス ハマチ メジロ ブリ

【ヒラマサの地方名】
マサ(東京)、ヒラス(大阪、高知、九州)、ヒラサ(瀬戸内海の一部)、ヒラソ(山陰地方)、テンコツ、ヒラソウジ(九州)など

メッキ類(ギンガメアジ、カスミアジ、ロウニンアジ、
オニヒラアジ)

金属メッキをしたように体表がピカピカ光ることから小型のヒラアジ類を釣り人はメッキと呼んでいる。主に釣れるのはギンガメアジで、カスミアジ、ロウニンアジもときどき混じる。また希だがオニヒラアジも釣れることがある。どれもが南方系のアジで幼魚のうちに黒潮に流され南の海から本州の太平洋岸にやって来るわけだが、よくいわれる「日本近海の冬の低水温には適合せず、その多くは死んでしまう死滅回遊魚である」という話は正しくない。

最近は「季節来遊魚」などという表記もネット上で見受けられるが、考えれば釣りの対象魚はほとんど季節来遊魚であって、これも違和感があるのだ。本来「死滅回遊魚」と呼ぶのは冬場に死んで海岸に大量に打ち上げられるハリセンボンの幼魚など、遊泳力に乏しい魚に対してであって、遊泳力があるメッキたちが冬に打ち上げられたという話は聞いたことがなく、メッキは南北回遊をしている可能性もあるそう。これは釣り人の勝手な思いこみなのである。

さて、夏場に10cmそこそこだったメッキも秋になれば20cmぐらいに成長し釣りシーズンを迎える。通常は30cmを超えるものは希だが、発電所などから温排水が入る海域などでは、温かい水温のおかげで冬もその場に居着き、40cm以上にまで大きくなる個体もいる。メッキ4種の見分け方は以下の通り。

ギンガメアジ
ギンガメアジ
鰓蓋(エラブタ)の上部に小さな黒斑がある。幼魚のメッキは尾ビレの後縁が黒く縁どられ、よく似たロウニンアジより体型は細い。釣り上げた直後に出る体側の横帯(縞模様)は5本(尾柄部を除く)。
カスミアジ
カスミアジ
幼魚の時、胸ビレが黄色。尾ビレは黄色くない。
ロウニンアジ
ロウニンアジ
幼魚の体側から尾部にかけて4本の横帯がある(尾柄部を除く)。吻の前縁の角度が急。
オニヒラアジ
オニヒラアジ
幼魚の時は体色や体型ではロウニンアジと区別しづらいが、第2背ビレの軟条数がロウニンアジは18~20とオニヒラアジよりも少ないので区別できる。オニヒラアジはロウニンアジよりも顔がとがり、スマートな印象。釣り上げた直後に出る体側の横帯(縞模様)は5本(尾柄部を除く)。

カンパチとヒレナガカンパチ

カンパチの小型を関西地方ではシオと呼び、秋になると大阪湾にも入ってくる。それほど数多く釣れるわけではないが、比較的身近な魚だ。近縁種に南方系のヒレナガカンパチがいるが見分け方は第2背ビレ前部の先端と尾ビレ下葉の先端。第2背ビレ前部が鎌のように曲がり長く伸びるのがヒレナガで、真っ直ぐで短いのが普通のカンパチ。カンパチは尾ビレ下葉の先端が白いがヒレナガカンパチは白くない。

カンパチ
カンパチ
ヒレンガカンパチ
ヒレンガカンパチ

【カンパチの地方名】
カンパ(東京)、ヒヨ(神奈川)、アカイオ(北陸)、シオ(東海~関西:若魚)、チギリキ(和歌山)、アカハナ(和歌山、高知)、アカバネ(香川)、アカバナ(関西~九州)、ネイリ(高知)、ニリ(宮崎)、アカバラ、ネリ、ニノコ(鹿児島)、ネイゴ(鹿児島:若魚)など

【日本に分布する代表的なアジ科の魚】

マアジ属 マアジ
ムロアジ属 マルアジ、ムロアジ、モロ、クサヤムロ、オアカムロ、アカアジ
メアジ属 メアジ
ブリ属 ブリ、ヒラマサ、カンパチ、ヒレナガカンパチ
ギンガメアジ属 ギンガメアジ、カスミアジ、ロウニンアジ、オニヒラアジ
シマアジ属 シマアジ
ヨロイアジ属 ナンヨウカイワリ、ホシカイワリ、マルヒラアジ、クロヒラアジ、ヨロイアジ
カイワリ属 カイワリ
イトヒキアジ属 イトヒキアジ、ウマヅラアジ