知っていれば安心!釣魚豆知識 知らずに食べるとヤバイ魚たち!

今回は食べると中毒を起こす、または、その可能性がある釣魚の話。
トラフグに代表されるフグ類の多くは、内臓、皮膚、血液、筋肉の全部または一部にテトロドトキシンを持っており、誤って食べると食後20分ぐらいから数時間で症状が現れ、意識が明瞭なまま麻痺が急速に進行し、24時間以内に死亡に至る場合が多い……というのは有名な話。ご存じのとおり加熱処理しても毒性は失われないのだ。

たとえばシロサバフグは日本で食中毒の例がないそうだが、よく似たクロサバフグと素人目には判断が難しこともあるので調理はプロにまかせたほうがよい。早い話、フグ類を釣っても食べないことだ。どうしても自分で釣って食べたい場合はカットウ釣りなどを行っている遊漁船を利用し、寄港後に船宿でさばいてもらうべし。

クロサバフグ
クロサバフグ
シロサバフグ
シロサバフグ

我々が普段相手にする釣魚で多い中毒例はシガテラだ。シガテラとは熱帯の海洋に生息するプランクトンが産生する毒素に汚染された魚介類を食べることで発生する食中毒のことである。シガテラ毒にやられると吐き気、下痢、腹痛が数日から数週間続く。また不整脈、血圧低下、徐脈、めまい、頭痛や筋肉の痛み、麻痺、感覚異常を起こしたりするのだ。おお、恐い! テトロドトキシン同様、加熱処理しても毒性は失われない。

バラハタ
バラハタ
バラフエダイ
バラフエダイ
イシガキダイ
イシガキダイ

シガテラ毒を持つ代表的な魚はバラハタ、バラフエダイ、イッテンフエダイ、オニカマスなどだが、イシガキダイ、ウツボにカマス、ギンガメアジからヒラマサ、ブリまで400種以上の魚にシガテラ毒保有例があるそう。
それじゃあ、何も食べられないじゃないか!というワケではなく同一種でも地域差や個体差があり必ずシガテラ毒を持っているとは限らず、日本近海では主に沖縄地方で見られることが多い。
ただ、近年は温暖化の影響で本土の太平洋岸で釣れたイシガキダイでの中毒例が結構あるのが気にかかる。

続いてパリトキシン。こいつは海産毒素の1種、非ペプチド性の化合物ではマイトトキシンに次ぐ猛毒、原因は有毒渦鞭毛藻と考えられている……と文献にある。素人にはよく分からないが、とにかく猛毒! フグ毒よりも強いというからヤバイ。3~36時間で発症し主な症状は横紋筋融解症による筋肉痛、尿の変色、麻痺、痙攣など。重症の場合は呼吸困難、不整脈、ショックや腎障害などが起こり、ひどい場合は死に至る。パリトキシンは水溶性で加熱調理しても毒性は失われず、加熱調理により毒成分が煮汁等に移行するものと考えられている。

アオブダイ
アオブダイ
ソウシハギ
ソウシハギ

このパリトキシンがあるのはアオブダイ、ソウシハギ、ハコフグなどの内臓だ。身には毒はないが調理中に肝臓などを傷付けてしまい毒が身に移る可能性もあるので厳重注意。食べないに越したことはない。

特にヒスタミンによるアレルギー性食中毒を起こしやすいのがマルソウダ。血合いが非常に多いカツオ類で、その血合い部分にヒスタミンを生成する物質が多く含まれる。常温で放置すると細菌が増殖しヒスタミンが多く生成されてしまう。この物質は加熱しても減ることがないからやっかいだ。

マルソウダ
マルソウダ

一定量を超えてヒスタミンを食べた場合、個人差もあるが数10分から1時間程度でじんま疹、嘔吐、下痢、腹痛、舌や顔面の腫れ、頭痛、発熱等のアレルギー反応を示すそう。
釣り上げてすぐのマルソウダを食べて、船上でもがき苦しんだという知人がいる。鮮度を保ち血合いをきれいに取れば非常にオイシイという話もあるが、生食はオススメしない。鮮度が悪いものは加熱しても食べないことだ。

寄生虫のアニサキスも恐い。サバやスルメイカに多く寄生するがアジ、イワシ、サンマ、サケ、ホッケにもいる場合があるそう。運悪くアニサキスが寄生した魚を食べてしまった場合、人の胃や腸壁に侵入し激しい腹痛を起こし吐き気、嘔吐をともなうことも。アニサキスは充分加熱することや-20℃で24時間以上の冷凍死滅するが、酢や醤油、ワサビでは死なないので念のため。

サバ
サバ
スルメイカ
スルメイカ

イシナギの肝臓には大量のビタミンAが含まれるため、激しい頭痛、嘔吐、発熱という症状のビタミンA過剰症を起こす話は有名。またウナギやアナゴの新鮮な血も大量に摂取すると下痢、嘔吐、皮膚の発疹、チアノーゼ、無気力症、不整脈、衰弱、感覚異常、麻痺、呼吸困難が引き起こされ死に至る場合もあるそう。ただ、この毒はタンパク質なので60℃、5分以上の加熱で毒性を失う。そう、蒲焼きは問題なし! ただし、この血が目や傷口に入ると激しい炎症を起こすので調理の際は注意が必要だ。

ウナギ
ウナギ

フグ類の毒はあまりにも有名なため、自分で料理して食べようという人はまずいないと思うし、サバやスルメイカの生食も注意している人が多いだろう。問題は普段、気にせず食べている魚のなかにも毒や寄生虫を持つ個体が希にいるということ。これを言いだすと、何も食べられなくなってしまうが、釣り上げた魚はきちっと締め、すぐに氷等が入ったクーラーに入れて鮮度を十分保ったまま持ち帰るのが最低限の心得。
とにかく中毒が疑わしい魚は決して食べないこと。寄生虫が心配な魚は加熱調理を励行してほしい。