釣り上げた魚をうっかり素手で握って痛い目にあった人、どれぐらいいるのだろう。代表的なものがアイゴにゴンズイ、ハオコゼ、ミノカサゴだ。どれもヒレや棘に毒を持っている。「何だ、それぐらい知ってる。僕は気を付けているから大丈夫!」と油断してはいけない。個人的な話で申し訳ないが、子供のころ防波堤でバリコ(小型のアイゴ)釣りをしていてエサを刺そうとしていたら、父親が釣り上げたバリコが飛んできて、僕の手の甲に背ビレがグサリ!という苦い思い出がある。めったに釣れる魚ではないがアカエイも尾の付け根寄りに毒棘を持っている。不用意に近づいて足首を刺されたという話も少なくないのだ。
実は多くの魚たちは多かれ少なかれヒレの棘には毒を持っているらしい。ガシラでもメバルでもヒレが手に刺さると鈍い痛みが続くのはアイゴやゴンズイほどではない弱い毒を持っているせいなのである。
またヒレや棘の毒は魚が死んでしまっても威力は衰えない。アイゴなど持ち帰って食べる魚は釣り場で毒ヒレをカットしてしまうのもよい。キッチンバサミで背ビレ、腹ビレ、尻ビレを根元からじょきじょきカット。そうそう、背ビレの前、頭の後ろにも逆向きに隠し棘があるので注意。ただしカットした棘を釣り場に放置しないこと。切った棘でも手や足に刺さるとヤバイのだ。
ヒレや棘に毒がなくても鋭い歯を持っている魚も危険だ。代表格がタチウオだ。うっかり指が触れるとカミソリで切ったように、一瞬で血が噴き出すのでご用心。イシダイやイシガキダイ、チヌ、マダイも鋭くはないが硬い歯を持っているので、うっかり口の中に指を入れないこと。硬い貝やカニをバリバリ食うやつらだから、人間の指などひとたまりもない。そうそう、イシダイ釣りの外道ウツボも鋭い歯を持っている。磯ブーツに噛みつかれ穴が開いてしまったという話もあるのだ。
スズキなども用心に越したことはない。歯は大したことないが背ビレの棘は鋭いし、特にエラブタの縁は非常に薄く鋭いから素手で触れるとケガのもと。サンノジ(ニザダイ)の尾柄部(尾ビレの付け根)両側にある黒い棘もうっかり触れると指を切ることがある。ダツも大型になると鋭いくちばしが人間に突き刺さることも! おお恐い。
とにかく、これら危険な魚を釣り上げたときは直接手で触らないこと。魚ばさみやフィッシュグリップ、なければボロ布やタオルを厚く巻いて固定してから、プライヤーなどでハリを外すべし。ハオコゼやゴンズイは大きくないので魚バサミでキャッチするのは難しくないが、釣り上げたタチウオはクネクネ暴れるので、その際に歯が手に触れないよう要注意。一旦、地面に下ろしてから押さえつけるようにホールドするのが賢明。良型のチヌやスズキなどをタモ入れして取り込んだ場合は、先に魚バサミ等でホールドしてタモから出すほうが安全。特にルアーが口に付いている場合は、魚の歯やヒレだけでなくルアーのフックにも注意しよう。魚が暴れて手にフックが刺さる事故が多いのだ。
いずれにしても釣り上げた自分だけの問題ではなく、周囲の人への安全にも気を配ることが大切だ。もし毒ヒレや棘に刺された場合は必ず医療機関での治療を!