難しさが魅力(?)のサクラマスジギング
ズバリっ!ミドルレンジの攻略がカギ!!

東北の早春の釣りとして大きく盛り上がるのがサクラマスジギングです。近年ではその人気も全国的となり、遠く関東、関西から足繁く釣行されるアングラーもたくさん見かけるようになりました。
サクラマスジギングの魅力はサクラマス自体の持つ美しさやその繊細さもさることながら、その食味のよさやトリッキーなファイトなど多岐にわたります。なかでも釣りの面白さ、難しさは特筆ものでその魚体を手にしたときの感動と達成感は、ほかのどの魚種でも得られない一種独特なものがあります。

今回はそんなサクラマスジギングの魅力と攻略ポイントを解説したいと思います。

ジギングでねらうサクラマスとは?

01_ サクラマス
リヤフックがきれいに口に掛かったサクラマス。サクラマスジギングではフッキングミスも多く、身切れによるバラシも発生しやすい

「サクラマス」は渓流魚のヤマメの降海型というのは広く知られたところです。
ヤマメは秋に産卵し、孵化した稚魚の中から生育の悪いものが河川を降り海に入るのだそうです。そして数年ほど海で過ごして大きく生育し、河川に回帰するのです。その生態はまだ解明されていない部分も多く、サクラマスの魅力のひとつとなっています。

ご紹介するサクラマスジギングは、河川回帰するために沿岸海域に接岸するサクラマスをバーチカルジギングでねらう釣りです。沿岸にいるサクラマスは少数の群れを形成して回遊しており、小魚や甲殻類などを捕食しながら河川を遡上するタイミングを模索しています。

ミドルレンジを釣る難しさ…
ゆえに面白いのがサクラマスジギング

02_ サクラマス釣果

本来、海のサクラマスはボトムから表層まで広く生息していますが、サクラマスジギングのメインレンジはやはりミドルレンジであり、そのことが釣り自体を難しく難易度を高めています。

基本的には遊漁船の船長から指示されるレンジ幅を繰り返し誘い上げてねらうのですが、サクラマスの絶対数の少なさからバイト数は少なく単純な作業の繰り返しとなってしまいがちな面もあり、疑心暗鬼に陥って惨敗するパターンがひじょうに多いようです。関東方面から毎年遠征するアングラーが最初の1尾をキャッチするまでに4年を費やしたと耳にしたこともあります。遊漁船での釣りでノーヒットは当たり前の厳しい釣りなのです。
その反面、群れに当たれば船中100本を超える爆釣日もあります。とはいえ、そのような釣れる日でさえ、歯車が合わないと船中で自分だけバイトなしなんてことも普通にあります。

その日のパターンを読み釣り方を合わせていく難しさ、少ないバイトをモノにしてフックアップ、そしてキャッチするまでバラさないファイト…。そんなハラハラさせられるやり取りが展開するサクラマスジギングは、多くのアングラーを惹きつける魅力に溢れています。

ミドルレンジ攻略!4つのポイント

サクラマスジギングでは船長の指示ダナを繰り返しねらいます。たとえば水深70mのエリアを釣る場面、ねらう水深は20~50mといった感じです。
ジグを投入したら50mまでフォールさせてから誘い上げていき20mまで誘ったら再びジグをフォールしての繰り返しです。一連の動作を繰り返しながら一定の距離を流して、ポイントを外れたら潮上に登り流し直すのが一般的です。

そんなサクラマスジギングのミドルレンジ攻略のポイントは以下の通りです。

  • (1)ねらうレンジを外さない
  • (2)一定のリズムで繰り返し誘う
  • (3)状況の変化に対応してねらうレンジをシフトする
  • (4)船中のアングラーで情報を共有する

03_ 釣り人同士で情報交換
ポイントに向かう船上で他船と情報交換。バイトが全くないこともあるサクラマスジギングだけに情報の共有はとても大切

(1)は当たり前といえば当たり前ですが、バイトの少なさに集中力が途切れてしまいPEラインのカラーを見落としたりしてしまいがちです。こうなると釣れるものも釣れなくなってしまいます。

(2)は釣れない、バイトがないからといってジャークのテンポを変えたり、コンビネーションに変化を入れたりしても徒労に終わることが多いです。一定のリズムでステディに誘い、サクラマスとのコンタクトを待つのが一番です。

(3)船がドリフトすれば水深も変化します。深いポイントから流し始めてブレイクラインに達すると、当然ながら水深は浅くなったりします。地形変化に合わせて攻めるレンジ幅をシフトすることが大切です。

(4)サクラマスジギングではそもそもバイト数が少ないのが当たり前です。船中で釣れたサクラマスの情報をアングラー間で共有し、次のバイトに繋げていくことはとても大事です。ヒットレンジやジグのカラーなどの情報を共有し、チームプレーで攻略するのが大切になってきます。

活性に合わせてジャークとフォールを意識

04_ サクラマス釣果2
ロングジグにヒットした良型のサクラマス

サクラマスのジグへの反応はさまざまです。レンジが浅い場面では活性は高くジグへの反応は良好なことが多いです。逆に90~70mとレンジが深い場面ではジグへの反応は鈍く捕食スイッチが入りにくい場面もあります。いずれの場面でも1度、捕食スイッチが入れば、しつこくジグを追い回します。

少数の群れで回遊していますので群れの中の1尾がジグに反応すると群れ全体の活性が上がり、ヒットが船中で連鎖反応的に続く場面があります。こうしたラッシュシーンでは1番最初にヒットしたアングラーの釣り方、ジグの種類やカラーを参考にするのがマストです。
また、潮流れや天候などによってもサクラマスの活性は左右されます。よく潮が流れて、外気温が高く、よく晴れて明るいシチュエーションの方がサクラマスの活性は高いように思います。

サクラマスの活性が高い場面では、ジグのジャーク直後の一瞬にバイトが集中します。活性が低くなるに従ってジャーク後のフォールにバイトタイミングが移っていくことが多いです。自分のジグがどんな状態のときにバイトがあったのかを意識して、そのときの状況に合わせていく目安にするとよいでしょう。
活性が高いと判断したなら、ジャークをより意識して上に上に誘い上げます。低い場面ではフォールを意識して、よりスローに誘うと効果的です。

ベイトによってアタリはさまざま
アワセはロッドを軽く立てる程度に!

サクラマスの捕食パターンはサクラマスが捕食しているベイトによっても変わります。

イワシを捕食しているときのサクラマスのジグへの反応は強く、素早いスピードで激しく襲いかかります。ガツンと当たって一気に走るようなヒットや、一瞬ジグの重さが消えてラインスラックが出るなどのヒットパターンが多くなります。ベイトがイワシの場合は、ジグにキレのあるアクションを与えて誘うと好反応を得やすいでしょう。
一方、イサダ(ツノナシオキアミ)やヨコエビなど甲殻類を捕食しているときは、ジグに戯れ付く(じゃれつく)ようなショートバイトが多くなります。こうした状況ではジグのサイズを小さくするのも効果があります。

いずれの場面でもバイトがあった際は軽くロッドを立ててフックアップさせます。ここで大事なのは強いフックセットにはしないこと。サクラマスは皮が薄く弱いのでよく身ギレします。強いアワセはハリ傷を広げてバラシの原因になるだけです。
同じ理由でドラグ調整は緩めの方がキャッチ率は上がります。強引なやりとりは控えて一定のペースでリールを巻きバラさないようファイトするといいでしょう。季節が進み河川に遡上する時期が近づくころには皮も厚みが出て身切れしなくなりますが、シーズン初期から中盤に掛けてはサクラマスの皮の弱さに充分な注意が必要です。

07_ 実績のメタルジグ
実績のあるジグを使用することで集中力を高めることは好釣果につながります

解説したようにサクラマスジギングは待ちの釣りの典型です。こうした釣りで大切なのは諦めないこと、ロッドを振り続けること、魚とのコンタクトの確率を高めること、バイトをヒットに繋げる確率を上げること、バラさないことです。

08_ サクラマス釣果3
プラチナシルバーの魚体。激しくローリングする独特なファイトは渓流のヤマメのファイトそのまま

遊漁船という同じ空間で釣りをしていても、釣果に大きく差がでるのがサクラマスジギング。その要因は突然訪れるチャンスを確実に引き寄せ、サクラマスをキャッチする心構えと準備ができているかどうかに掛かっています。十分な備えがありキャッチできたサクラマスの価値は、まさにプライスレス! プラチナシルバーの魚体が神々しく見えるはずです。
釣れない釣りの代表ともいえる(?)サクラマスジギングですが、この釣りにはアングラーの心をとらえてはなさない不思議な魅力があるのです。

レポーターREPORTER

堀籠 賢志
プロフィール:堀籠 賢志
フライフィッシング、バス、シーバス、ロックフィッシュ、フラットフィッシュ、エギング、鮎釣りまで、さまざまなジャンルを釣りこなすマルチアングラー。現在はスーパーライトからヘビークラスまでジギング全般と、メタルスッテを中心としたイカ釣りに取り組む。
東北エリアの面白い釣りを発信することで、震災復興に繋げていきたいという熱い想いのもと活動中。
GOMEXUS社フィールドテスター /tamaTV社フィールドモニター /キーストン社フィールドサポーター などを務める。
ブログ:Anglershighごめのブログ