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HEATでは魚釣りを末永く楽しむために、また、魚釣りの社会的地位をより盤石にするため、「釣りのルールやマナー」に関して、日ごろから協力してくれているライターさん向けにアンケートを実施。その結果と貴重な意見をまとめ、今後の釣り人への指針となるようお伝えしていこうという当企画。
第2回は「堤防(防波堤、護岸など)釣りのルールとマナー」。海釣り入門やファミリーフィッシングなどに最適な手軽な釣りの代表格である堤防釣りには、それだけ多くの人が訪れることから、釣り客同士の配慮、距離感が大事だし、また漁港などでは漁師さんや近隣にお住まいの人に迷惑をかけないようにするのが鉄則だ。
手軽な釣りだからこそ求められる謙虚な態度
堤防(防波堤や護岸など、関西では波止とも呼ばれる)は多くの人が同時に釣りを楽しめるフィールドだ。初心者や家族連れなどから、その堤防に通い詰めるベテランまで多くの人が季節に応じいろいろな魚種を、さまざまな釣り方でねらうことができるありがたい場所だ。
ただし、海岸線のすべての漁港や港湾部で釣りができるわけではない。場所によっては立入禁止、釣り禁止になっていることがあるので、そのような場所には絶対立ち入らず釣りをしてはいけない。また立入禁止、釣り禁止と表示されていなくても、本来は漁港も港湾部も「魚釣りの施設」ではないので、「釣りをさせてもらっている」という謙虚な態度で楽しんでほしい。
このように釣りが認められている(させてもらっている)場所で多くの人が手軽に楽しめる堤防釣りだからこそ、釣り人同士が意識し気を付けなければいけないことが多いし、漁港や港湾などでは漁師さんや船舶関係者、周辺の住民や施設などに迷惑をかけないよう、とくに配慮が必要だ。釣り人に求められる「ルールとマナーの縮図」が、そこにあるといってよいだろう。
手軽な釣りだがまずは安全第一!
第1回と同じだが、まずは安全第一。
堤防で楽しく釣りをするうえで、まずは安全面への注意と配慮が欠かせない。以下のポイントを押さえておこう。
- ●ライフジャケット着用
- ●グローブ、キャップの着用
- ●毒魚に注意
手軽な堤防釣りとはいってもライフジャケット、グローブ、キャップなど安全装備は万全に。自然海岸と違い垂直護岸や消波ブロック(テトラ)などが入っている場所で落水すると、かんたんには陸に上がることはできないし、壁面には貝類などが付着しているので、堤防釣りといっても危険と隣り合わせであることを肝に銘じておきたい。
堤防釣りではヒレに毒を持つ危険な魚も釣れるので魚バサミ、フィッシュグリップ、プライヤーは必需品。毒魚でなくても魚によってはヒレなどに鋭い棘があるのでケガをしないためにも必要なアイテムだ。持ち合わせがなければタオルでくるむなどで対処し、素手での接触は極力避けよう。
とくにゴンズイ、アイゴ、ハオコゼなど刺されると危険な毒棘を持つ魚に関してはフィッシュグリップなどを利用し素手では絶対に触らないこと!
人との距離が近い堤防釣りならではの配慮
さてアンケートの回答でもっとも多かったのが、自分たち以外の釣り人、周囲への配慮に関するもの。不特定多数の人が楽しめる手軽な堤防の釣りだからこそ、自分本位にならず周囲への配慮を忘れずに釣りを楽しもう。
- ●割り込みをしない
- ●広く場所を独占しない
- ●釣り種の違いを理解
- ●仕掛や道具を放置しない
- ●周囲の安全確認
- ●漁業者に迷惑をかけない
- ●夜釣りでは海にライトを向けない
無理な割り込み禁止!挨拶、声かけを徹底しよう
先客がいて、その近くで釣りをする際は「ここで釣りをさせてもらってよろしいでしょうか?」などと声をかける(挨拶する)ことが大切だし、とくに混雑している場合は無理に割り込むのを控えよう。
逆に自分が先に釣り場に到着してからといって、混雑が予想される場合は、離れたところに荷物を置くなどして自分のスペースをあまりにも広く必要以上に取りすぎない(主張しない)ようお願いしたい。置き竿を並べるカレイの投げ釣りなどでも適度な竿数(竿3本ぐらいまでが一般的)での釣りを心がけよう。
釣り方の違いを理解し適度なインターバルを
釣りを開始してからも置き竿などで投げ込んだ仕掛を放置したままにしたりしないように。カレイの投げ釣りなど置き竿でねらうのが基本の釣りの場合は、潮流で流された仕掛、道糸が周囲の人の迷惑にならないよう、こまめに仕掛を回収し投げ直しを行うこと。その意味でも多すぎる竿数は禁物だ。
多くの人が楽しんでいる堤防では、人ぞれぞれ釣り方はさまざまだ。サビキ釣りの人、ブッ込みや投げ釣りの人、ウキ釣りの人、ルアー釣りの人など、どの釣りも楽しい。
まずは自分以外のほかの釣りへの理解が必要で、潮流がある場合は「自分の仕掛が流されほかの人の釣りの邪魔になっていないか?」「自分の投げ込んだ仕掛やルアーが周囲の人のラインや仕掛に交差していないか?」など気を付けなくてはいけない。
しかし充分注意していてもキャストミスなどは起こりがち。ほかの人のラインや仕掛に絡ませてしまった場合はまず謝罪。絡ませた仕掛がなかなか外せない場合は、自分の仕掛やラインを切るのがマナーだ。
キャスト時など周囲への安全確認を徹底
ルアーや仕掛をキャストするときは周囲への安全確認を忘れてはいけない。ルアーや仕掛のキャスト時のフックやハリ、オモリなどを人と接触させてしまうと取り返しの付かない大ケガをさせてしまうことがあるので、十分に慎重な安全確認を徹底してほしい。とくに自分の後方は死角になるので要注意だ。
逆に海底などに根掛かりした際、それを外そうと思い切り引っ張って外れたルアーやオモリが、海中から勢い余って堤防上に飛び上がってくることがあり、ことのほか危険。根掛かりした位置が自分から近いほど、このリスクは高い。これは自分だけでなく周囲の人にも驚異となるのでとくに注意が必要だ。
漁船や漁港施設などへの迷惑行為は厳禁!
漁港などでは係留されている漁船には絶対乗り込まないこと。また堤防上に置いてる漁具などにも触れないように。冬場、寒いからといってトロ箱など木製のものを燃やすなど言語道断だ。また漁港内で漁船を係留するロープにも注意。ロープに引っ掛かったルアーフックやハリで漁師さんが大ケガをすることもある。早い話、港内の漁船が係留されている付近では釣りをしないことだ。
漁港防波堤の先端部などは漁船の出入りに注意し、仕掛やルアーが入っている場合はすみやかに回収し、漁船の出入りの邪魔にならないように。もし船に引っ掛けられて仕掛やルアーを切られて失っても文句は言えない。結局、泣きを見るのは釣り人側なのだから。もちろん仕掛やルアーのキャスト時は通行中や係留中の漁船や船舶に充分注意すること。
夜釣りではライトも扱いに注意
夜釣りではライトを海面に向けないように注意しよう。対象魚にもよるがチヌ(クロダイ)など警戒心が強い魚をねらう人は電気ウキの光にも気を配る(黒いビニールテープでウキ発光部を狭くするなど)ほどだ。同様に釣り場で騒いだり大きな物音を立てないようにするのも釣り人としてのマナーだ。これは夜釣りにかぎらず日中の釣りでも同様だ。
釣り場はみんなのものだから!
誰もが手軽に楽しめる堤防釣りだが、残念なことに釣り場に放置されたゴミ、エサなどでの汚れ、干からびた小魚の姿を見かけることが少なくない。「自分の釣りが終了したら、あとのことは知らない」ということでは釣り人失格だ! 釣り場での不用意な用足し(トイレ)にも気を配ろう。
- ●ゴミの放置、不法投棄をしない
- ●汚した釣り場の清掃
- ●用足し(トイレ)にも気を配る
- ●不要な魚は優しくリリース
ゴミの放置厳禁!エサや魚の血など汚れは洗い流そう!
釣り場に放置されたゴミで多いのが使用した仕掛のパッケージやレジ袋、エサが入っていた容器やビニール袋、切断したラインやハリスの切れっ端、使い終わった仕掛、ハリなど直接釣りに関わるもの。そして弁当がらや飲料水のペットボトル、空き缶など。
釣りの最中に出たゴミは、その都度大きめのナイロン袋などにまとめ入れ、また散らばったり風で飛ばされないように心がけること。釣り公園などでゴミ箱が設置されていれば、釣り終了後に定められた種類でゴミを分別し、かならず所定の場所に。漁港や一般の護岸などでは自宅まで持ち帰り処理するのがマナー。
堤防の一角に誰かが捨てたゴミを見て、また誰かが……が積み重なり、まるでゴミ捨て場のようになっている事例を見ると心が痛む。また人の目に付かないよう海に廃棄! などということは絶対にしないように。釣り人としてだけでなくヒトとして問題のある行為だろう。
またサビキ釣りのマキエであるアミエビや、虫エサのパッケージに入っているおがくずや釣り上げた魚の血などで堤防上を汚してしまった場合は、海水を汲み上げて洗い流すことも忘れずに。当たり前だがマキエが禁止されているエリアで、釣れないからといってマキエを絶対にしないこと。ローカルルールに従おう。
トイレ問題!それが問題だ!
人が多い防波堤や堤防ではトイレ問題にも気を配らなければいけない。
釣り公園や釣り専用施設ならかならず設置されたトイレを利用すること。沖堤防などトイレがない場所では可能な限り人目に触れないよう心がける。渡船利用の釣り場で船にトイレがある場合は、渡船の見回り時に船長にお願いして用を足そう。
「立つ鳥跡を濁さず」で次に来る釣り人だけでなく、漁港関係者や港湾関係者、周辺住民への配慮が必要だ。実際に現場に放置されたゴミ問題やトイレ問題で立入禁止になってしまった釣り場も多い。不道徳行為が自らの首を絞めることになりかねない。
エサ取りなど不要な魚を放置しないこと
ゴミだけではない。フグなどエサ取りの小魚から大きなボラまで、釣りのターゲットではない魚たちが堤防上で干からびた姿を見ると、常識を疑わざるを得ない。エサをかすめ取りハリスに傷を付ける憎い魚として地面に叩き付けて、キタマクラなどを殺す人をかつて見かけたことがあるが、心が痛まないのだろうか……。
出典:写真AC
自分にとって邪魔な魚でも大切な命に変わりない。ていねいに素早くハリを外し優しく海に帰してやろう。それでも血を流して死んでしまう魚もいる。フグやキタマクラなど毒魚は別として、食べられる魚はできるかぎり持ち帰って食べてやるのが魚たちへの何よりの供養だろう。
「堤防釣りのルールとマナー」まとめ
第2回は堤防釣りにかかわるルール、マナーをまとめたが、多くの人が手軽に楽しめる釣り場だけに、「自分だけがよければ……」「自分は間違っていない……」という独善的な意識を持たないことが何より大切だ。
最後に、改めて今回のポイントをまとめておくので、これらのポイントを参考に気持ちよく、安全に釣りを楽しんでいただきたい。
【今回のポイント】
- ●安全第一
- ・ライフジャケットの着用
- ・グローブ、キャップの着用
- ・毒魚に注意
- ●周囲への配慮
- ・割り込みをしない
- ・広く場所を独占しない
- ・釣り種の違いを理解
- ・仕掛や道具を放置しない
- ・周囲の安全確認
- ・漁業者に迷惑をかけない
- ・夜釣りでは海にライトを向けない
- ●釣り場はみんなのもの
- ・ゴミの放置、不法投棄をしない
- ・汚した釣り場の清掃
- ・用足し(トイレ)にも気を配る
- ・不要な魚は優しくリリース