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長年釣りをしていると当たり前のことでも、釣りを始めて間もない人にとっては「目から鱗!」「そうだったのか!」という、ちょっとしたノウハウをお届けするのがこのコーナー。釣果に直接かかわることではないけれど、アナタの釣りが快適になるかもしれない!? ほんのちょっとの工夫とアイデア。
今回は良型魚、大型魚の取り込みに欠かせないタモ網について。防波堤や磯での使用を前提に正しい使用法、賢い利用法をお届けしよう。
1.タモ枠サイズ、柄の長さはTPOに合わせて
タモ、タモ網(ランディングネット)はハリに掛かった魚を抜き上げることが無理(糸が切れる、竿が折れるなど)と判断された場合に、水面に浮かせた魚をすくい手元に取り込むために欠かせないアイテムだ。ここでは防波堤や磯での使用を前提にタモに関する基本的なノウハウをお届けしよう。
まずタモは網の部分と柄の部分に分けて考えることが必要。現在市販されているタモ枠はおおむねジュラルミン、チタンなどの丈夫な軽金属製(安価なものはステンレス製でやや重い)で、現在は4分割して折りたためるものが主流。その昔、折りたたみ式は広げたときや使用中の撓み(たわみ)、型くずれが気になることがあり、折りたためない一体型が持てはやされたが、現在の折りたたみ式は、そんな欠点も解消された。一体型は持ち運びの不便さから、ほとんど釣り場で見かけなくなった。
枠のサイズは直径30cmぐらいから大きいもので60cmぐらいとさまざまだが、これはねらう魚の大きさで決めればよい。防波堤や磯でチヌやグレを釣るのなら40~50cmで充分。メジロやブリ、シーバスなどの大型魚をメインにするなら直径60cm枠が無難だろう。
枠径が大きいほど魚を網の中に入れやすく「大は小を兼ねる」のは間違いないが、必要以上に大きな枠はそれだけ重量もあるし、水面で波などにもまれたときの抵抗も大きく、かえって魚をすくいにくい。網にそこそこの深さがあれば、直径50cm枠でもそれ以上のサイズの魚をすくうことが可能だ。
網(ネット)はナイロンモノフィラメント(単線)を編んだものが主流。すくった魚へのダメージが少ないとされるラバー(ゴム)ネットはルアーフィッシングや船釣りで使うシーンが多いが、波がある防波堤や磯では水の抵抗が大きいので使いにくいかもしれない。
水面まで高さがある防波堤や磯で使用するタモの柄は、振出式で全長4~6mぐらいがメイン。これも「長が短を兼ねる」のは間違いないが、柄が長くなるほど重量も増すので使いにくい。メインの釣り場に合わせ、やや余裕がある程度の長さがあればOKだ。足下から水面まで3mなら立って操作することを考えれば4.5mほどの柄の長さがあればいいだろう。
2.決して魚を追い回さない!正しい魚のすくい方
釣り場でタモはすぐ手に取れる位置にスタンバイしておくのが基本。とにかく最初に仕掛を投入する前に必ず準備しておくこと。単独釣行の場合、魚が掛かってからではどうにもならないし、同行者がいる場合でも魚が掛かってからタモを準備してもらうようでは、待っている間にハリが外れ待望の大物を逃がしてしまうかもしてない。
タモを手にするのは魚を水面まで浮かせてから。空気を吸わせて魚が暴れず大人しくなってからでよい。タモですくおうと柄を伸ばしたとたんに再び魚が大暴れ! 海中に突進するシーンも多いが、そんな場合は慌てず一旦タモ置き仕切直すほうがよい。
タモ入れでの鉄則は決して魚を網で追い回さないこと。網に驚いた魚がよけいに暴れ逃がしてしまうことも多いのだ。何度も言うが、タモ入れは浮かせた魚に空気を吸わせ大人しくなってから、手前の水面で構えたタモに魚を引き込むようにするのが基本。
竿を立てた状態で、ゆっくり後方に引き魚がタモ枠の上に来た時点で、さっとテンションを抜いてやれば、魚は自然に網の中に収まる。
魚が網に入ったら振出式の柄を縮めながら手元まで引き上げる。柄を伸ばしたまま横に持ち上げるのは不可。魚が大きいほど重くてどうにもならない。ヘタすると柄が折れてしまうこともあるので、必ず柄を縮めながら縦方向に引き上げること。このとき竿を股に挟んで作業すると両手が使えるのでひじょうに楽だ。
ただし磯では足場が悪い場合もあるので自力でのタモ入れが厳しい場合は同行者に、もしくは単独釣行の場合は防波堤でも周囲の人にお願いしてタモ入れを手伝ってもらおう。決して無理をしないことだ。
3.魚をすくうだけが能じゃない!
タモの役目は魚をすくうことだが、水面に落として浮いているものを回収するときにも役に立つ。帽子を風で飛ばされたり飲みかけのペットボトルを落としてしまったり、根掛かりなどで仕掛が切れて大切なウキを流してしまったり……。いずれにしてもタモが届く範囲に限られるが、大切な物を回収できるシーンは多い。
ウキなど網の目よりも小さいものをすくう場合に、よい方法がある。タモ網の目の粗さはさまざまで、現在は網底部の目かなり細かいものが増えてきたので、小さいウキでもそのまますくえることが多い。しかし、もし目の粗い網しか持ち合わせがない場合は、網の底部を縛ることで目が詰まり、かなり小さいウキでもかんたんにすくうことできるので、覚えておくとよいだろう。
このようにタモは本来の目的以外にも役に立つことがあるので、ねらう魚が小さくタモ不要の釣りでも万が一に備え持参しておくと何かと便利だ。