掛けてからでは遅い!?
ジギングサビキ大物対策

出典:写真AC

今まさに、ジギングサビキのベストシーズンですね。というか、秋はジギングサビキに限らず釣りのベストシーズンといえる時期なのです。
冬に向けて魚がエサをどんどん食べて栄養を蓄えるので釣りやすいということもありますし、釣れた魚は脂がのって絶品という季節。そして、ジギングサビキでねらう青物も秋にかけてサイズがよくなっていきます。まさに「ジギングサビキ今やらなくていつやるの?」という時期なんですね。ですが、魚のサイズが大きくなるということは、青物も例えばサバやツバス(40cm以下)、ハマチ(40~60cm)といったサイズで収まらない場合があります。

そこで今回は、エキスパートアングラーであるハヤブサフィールドスタッフの井上隆史さんにお話を伺いながら大物対策を考えていきますよ。

1.ベストシーズンの沖堤
備えがないとどうなるの?

(1)予期せぬ大物が掛かってしまう!

01_P1011056.JPG 予期せぬ大物

ジギングサビキは大物が掛かることがある。
大物が通る場所でやっていれば、当然掛かる可能性があります。いろんな道具で手軽に楽しめるのが利点のジギングサビキですが、ベストシーズンの沖堤防ではきてしまうんですね、大型青物が。

基本的にジギングサビキはメタルジグをオモリにして投げることになるので、そのジグを青物などのフィッシュイーターが食ってきます。たまたまジグが活性の高い大物の目の前を通ったら、食いついてくる可能性は高いでしょう。そして、ジギングサビキはジグを食いきれないサイズの魚を、サビキ部分で食わせられるのが利点ですが、そのサビキに大物が掛かることがあります。また、サビキにスレ掛かりするケースもあります。
つまり、高活性の大物が回ってきている場合、ジギングサビキの釣りは魚のサイズを選べません。意外とサビキ側で大物を掛けてしまうケースは多いのです。大物が掛かるのは嬉しいことですが、ライトなタックルではすんなり釣り上げるのは難しいでしょう。

(2)まずは周りの人に声掛け!

02_DSC01458.JPG 大勢の釣り人がいる沖堤イメージ

では、掛かってしまったらどうすればいいんでしょうか?
ライトなタックルで大物が掛かってしまった場合、まともにやり合えば魚を止めようにも糸や結び目が耐えきれなくて切れてしまう。せいぜい、ドラグを糸が切られない程度に緩めて魚に走ってもらうぐらいしか方法がありません。
沖堤防で青物を掛けた場合、根に擦られることはあまりないので魚が疲れるまで泳がせることができますが長期戦は必至。どうすればいいのかエキスパートの井上さんにアドバイスを伺ってみました。

井上さん: 「青物が走るときには走らせて、止まったときに寄せる。周りに人がいなければじっくり時間を掛けて取り込めばいいんですが、問題は他の釣り人がいる場合です。とにかく他の釣り人がいたら、まず声掛けをするとよいと思います

重要なのはまずは声掛けということですね。
デカいのが掛かったら「うわー! すいませーん! デッカいの掛かりましたー!」と隣の人にアピール。魚の泳ぐ方にいる釣り人に「すいませーん、そっち泳いでますー!」と伝えましょう。ルアーなど回収して避けてくれるかもしれません。正直、釣りをしていて隣の人が掛けた青物が走ってきたら自分の糸に絡まるのは困るので慌てて回収することになります。周りの人も黙って泳がされるよりはありがたいはずです。
そして、ロングファイトできる状況であれば、ドラグを緩めて切られないように糸を出しつつ、止まったら巻いて寄せるという作業を繰り返すことになるのですね。

(3)やはり最後は運

03_IMG_6925.JPG 良型青物

「切られる確率はもちろん高いですが運がよければ獲れるかもしれませんよ。
僕が経験したことなんですが、近くの人がシーバスロッドでジギングサビキをやっていて、ブリがヒットしてしまったんです。せっかく掛けた1尾だから私もアドバイスしながら手伝って、なんとか獲ってもらったということがありました。
やはり、声を掛けるのが一番重要で、周りに声を掛けていれば近くの人が助けてくれるかもしれません。協力が得られて時間を掛けるファイトができるなら焦らずに取り込みましょう」

結局、大物を獲るためには最後は運ということですね。
とはいえ、タックルが弱すぎる場合や周りに釣り人が多い場合は、迷惑を掛けないためにも大物を諦める勇気も必要でしょう。リールの糸を全部出されて持っていかれることもありえますし、涙を飲んで素直に切られなければならない場面もあるでしょう。
では、そうならないためにはどうしたらいいんでしょうか?

2.大物を釣るための備え

04_DSC01461.JPG リールの写真

井上さん: 「大物を釣るためには備えが必要となります。
ブリなどの大物を想定すると、本来ショアジギング用のタックルが欲しいところです。僕はライトショアジギングの場合、4000番クラスのリールにPE1.5号。ショックリーダーは太目が好きなので5号や7号を使い分けます。ちなみにガチの大物ねらいや、ここぞといったときには、リールは6000番にしてPE2号を使用します」

つまり、大物対策には本格ショアジギングタックルがあるのが理想ということですね。
ですが、気軽にできるのが売りのジギングサビキ。もう少し汎用性のある道具でできないものでしょうか?

05_IMG_0186.JPG タックル

「そうですね、最低でもジギングサビキの竿は40gぐらいを投げられるようなミディアムヘビークラス以上のシーバスロッドか、ミディアムクラスのライトショアジギングロッドが欲しいですね。PEラインも1.5号ぐらいは必要でしょう。それでも大物がきたら十分とはいえませんが……。
ミディアムクラスのライトショアジギングロッドでは強引に引き寄せることができないものの(特殊なロッドは覗く)、魚との我慢比べというかロングファイトには耐えられます。ライトショアジギングロッドなら獲れる確率はだいぶ上がると思いますね」

なるほど、やり取りはできるがロングファイトになる……。とにかく、いかに大物がパワフルかということは分かりました。タックルチョイスが悩ましいところですね。

06_IMG_4492.JPG 沖堤防

「やっていれば大物の可能性が高いポイントってわかってきますし、沖堤であれば『ブリが上がりだしました』という情報もでるので、情報を得てから準備をすれば大丈夫です。今だとネットでも情報は見れますしね。
大物が釣れているなら、ジギングサビキも幹糸やハリスが太いLサイズを持っていくなど、備えが重要です。大物の可能性が高ければ、大物に対応した道具をしっかりと準備してほしいですね」

兎にも角にも、大物を甘く見てはいけないということですね。備えなしに大物を獲るのは難しいのです。掛かってしまったら周りの人に声を掛けて協力してもらうしかありませんが、大型青物が掛かる可能性が高い場所では少しでも強いタックル、仕掛を使う必要がありそうです。(もしブリクラスの大物を掛けたら、絶対獲りたいですよね?)

3.大物ねらい基礎知識

ここからはジギングサビキや他の釣りモノに関わらず、沖堤で大物を釣る際に必要な基礎知識です。ぜひとも心得ておいてくださいね。きっと役に立ちますよ。

(1)タモの注意点

07_P1014736.JPG タモ

取り込みできるまで魚を寄せてきたとして、次にやることはタモ入れです。
青物をメインにねらうのであれば、タモはデカければデカいほどイイのです。魚より大きくないと入りませんし、タモ網が小さいとメタルジグのフックが網に掛かってしまうようなトラブルも起こりやすくなります。
ちなみに魚をタモに入れるときは魚の進行方向である頭の方からタモに入れましょう。タモを動かしてすくうのではなく、タモを水面に浸けておいてロッドで魚を誘導するように入れます。後ろから入れようとしても魚が逃げていくのでうまく入りません。

タモ入れの際、魚の口にはフックが掛かっていますから、フックがタモの入り口に引っ掛かってしまったら魚は網の奥に入らなくなってしまいます。網の奥に入らずそのまま魚が暴れたら、高確率でバレてしまうので要注意! タモ入れは慎重に行いましょう。
また、潮の流れが速いとタモが潮に押されるので、さらに難易度が上がります。慣れないうちは人にすくってもらうのがベストですが、失敗してもお互い様。これも釣りと同じで経験を重ねるごとに上手くなるので、どんどん魚を釣りましょう。

08_tamoire.jpg タモ入れイラスト

 

井上さん: 「ところで、取り込みだけでなくタモの柄の長さも気にしておいてください。例に挙げると、武庫川一文字の堤防なら僕は6mのものを持っていきます。干潮で潮位が下がると5mでは届かなくなります。行く場所に応じた長さのタモを用意してください」

なるほど、行く場所の情報を確認しておかないとタモが届かないという悲劇がおこりますね。さすがに6mも伸びれば大抵なんとかなるでしょう。
網に魚が収まったら、落ち着いてタモの柄の手元側から縮めつつ、真っすぐ上に引き抜く感じで持ち上げましょう。伸ばしたまま真横に持ち上げたら折れてしまいますよ。

(2)クーラーボックスはどんなのがいいの?

09_IMG_6979.JPG クーラーボックス

次に、魚を持って帰るときに悩むクーラーボックスのサイズ。魚がデカいと大きいクーラーボックスが必要ですが、初心者だと大きいクーラーを持ってないことが多いと思います。
「小型のクーラーしかない…」こんな場合はどうしたらいいんでしょうか?

「本音としては、できれば30Lから40Lクラスは持っておいてほしいですね(笑)。でも、もし持っていったクーラーより大きい魚が釣れた場合、僕は現場で魚をさばいてしまいます。
血抜きをして頭もボキっと折ってしまえば短くなりますし、尾ビレを切ることもあります。 ナイフは必ず持っていきますが、100円ショップで売っているキッチンバサミがとても重宝します。ある程度の魚ならこれでさばけるんですよ! キッチンバサミで解体してクーラーに入れてやれば、少々大物が釣れても大丈夫です」

なるほど、入らない大物なら入るようにさばいてしまえばイイってことですね。血抜きや解体用に水汲みバケツも用意しておくといいでしょう。
ここで重要なのは、さばいたときに出るワタなどをその場に捨ててしまうと、不法投棄になりかねないということ。ゴミを入れられる厚手のビニール袋も用意しておくことが重要です。ゴミもきちんと持って帰って、気持ちよく釣りがしたいものですね。

 

10_IMG_1972_17.JPG ジギングサビキ

ということで、今回は井上さんにご協力いただきジギングサビキで万一釣れてしまう、大物対策について考えてみました。
憧れの大物も、いざ掛かってから残念な思いをしないように準備したいものですね。そして、(大物に限りませんが)持って帰って美味しくいただくために、血抜きも勉強しておくとよいかもしれません。一つ一つ学んでいくことで釣りの楽しみがアップするハズですよ。