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長年釣りをしていると当たり前のことでも、釣りを始めて間もない人にとっては「目から鱗!」「そうだったのか!」という、ちょっとしたノウハウをお届けするのがこのコーナー。釣果に直接かかわることではないけれど、アナタの釣りが快適になるかもしれない!? ほんのちょっとの工夫とアイデア。
今回は固着して縮められなくなった振出竿を元通りにする方法。
まず固着する原因を知ろう
ルアーロッドや船竿など、並継ぎや印籠継ぎといったバットからティップまでの複数本をつないで使用するロッドが多くなった現在、振出式ロッドを使ったことがない人も多いのもしれない。アユ竿や渓流竿など淡水用の竿はもちろん、グレやチヌをねらう磯竿の多くは今でも振出式が圧倒的多数を占める。一部のシーバスロッドや船竿にも振出式がなくはないので、今後振出式のロッドを使用する機会があるかもしれない。そのときのためにぜひ覚えておいていただきたいのが固着を解消する方法だ。
固着というのは振出竿を伸ばして使用したあと、元に戻せなく(縮められなく)なることだ。たとえば6本継ぎの振出竿の接合部5ヶ所すべてが固着することは希だが、竿を縮められないまま、すなわち長いままで持ち帰るのはなかなか大変。1ヶ所の固着ならまだしも2ヶ所、3ヶ所固着してしまうと車に乗せるにも乗せられないし、電車釣行も言わずもがなである。たいていの場合、1ヶ所だけの固着とういうことが多いので「何とか持ち帰れた」ということになるが、それが細い穂先部分だったりすると穂先破損のリスクがかなり高い。
振出竿が固着する原因の多くは、あわてて勢いよく伸ばしたため竿の接合部分が必要以上に密着してしまうことにある。空気を押し出した吸盤がガラスなどの平面に密着するすように竿接合部の空気がなくなり、竿同士が張り付いてしまうのだ。さらに力まかせに伸ばしたための「伸ばしすぎ」ということもよく起こる。釣り竿はテーパー状になっているので、伸ばしすぎるとそれだけ竿同士の密接力が高まり、さらには、より空気も排除され、ますます縮めにくくなるのだ。
とにかく固着させないことが肝心だ
多くの振出竿は固着しないように接合部に溝を入れたり段差を付けるなど、空気が入るように設計されているが、それでも完璧に防ぐことはできないし、長年使用した場合、接合部の溝や段差が徐々にすり減ってしまい固着防止機能は低下する。そこで接合部表面の何ヶ所かに瞬間接着剤を1滴ずつ垂らし乾燥させて小さな突起を複数作り、必要以上に密着しないようにする方法が知られているが、これも何回か使ううちにすり減り効果は薄れる。
最大の対策としては、やはり可能な限り固着させない振出竿の伸ばし方を覚えることだろう。とにかく「空気を入れるような感じで竿同士をねじりながらゆっくり伸ばす」のが基本だ。また洗ったままの竿で水分が残ってると、より密着、固着しやすくなるので注意。洗ったあとはしっかり乾燥させておくことも忘れずに。逆に縮めるときも、ゆっくりねじりながら押し込むのが正しい方法。
それでも固着してしまったら……
気を付けていても固着してしまうことがある。無理に縮めようと力まかせに押し込むと竿が折れることもある。1人では無理と判断し、誰かに手伝ってもらってそれぞれ握った部分を逆方向にねじりながら押し込む方法もあるが、これも竿を折ってしまうことがある。とくに肉が薄いアユ竿などは破損のリスクがきわめて高い。
推奨される方法としては、まず竿の尻栓を外し地面に折り畳んだタオルなどを敷き、その上に竿をまっすぐ立てた状態で固着した部分の上を持ち、竿が破損しない程度の力で気長にトントンと床を小突くようにショックを与えると、時間はかかるが固着が解消できることが多い。これなら釣り場でも可能なので、ぜひ試してほしい。
それでも固着が解消されない場合はお湯を使う。自宅なら固着部分の外側を数秒でよいので熱湯で温める。すると竿の外側が膨張し密着部分にわずかながら隙間ができ、前述の方法との併用で固着を解消しやすくなる。釣り場でもお湯が使えるならおすすめだ。さらに全く手入れしていなかった竿だと尻栓が固まって外せないことがある。こんな尻栓を外す場合にもお湯は有効。膨張効果だけでなく尻栓のネジ部分に溜まった塩分を溶かす効果もある。もちろん日頃のメンテナンスが重要なのはいうまでもない。