From HEAT the WEB DIRECTOR知って得する!魚へんの漢字
春が旬の魚にまつわる漢字トリビア

魚へんの漢字_text-photo_岳原雅浩

春。気温は次第に暖かくなり、木々が芽吹いて色鮮やかな景色になると、自然と外に出掛けたくなるもの。まだまだ水温が低く、釣れる魚は限られているとはいえ何だかワクワクしてくるのが釣り人のさが。週末の天気や釣果が気になるのではないだろうか?

さて逸話や由来が面白いというよりは、釣りや魚について日々携わるうえで、単に知っておいて損はないと感じる魚へんの漢字。個人的な都合で大変恐縮だが、お出掛けしたくてソワソワする季節を迎えた今回は、「春が旬の魚」にまつわる漢字をご紹介したい。

春が旬の魚といえば…!
アナタはいくつ知っていますか?

illust01_ 魚へんイラスト

「へん」と「つくり」からなる漢字。あまたある漢字のなかで、魚へん(さかなへん・うおへん)の漢字は大半が魚の名称を表している。常用漢字ではないものも含めて、ひじょうにたくさんある魚へんの漢字…。「いったいコレなんて読むの?」と、まず全て読める方は少ないだろう。そんななか、今回は比較的見たことがあるものが多いかも??

【鰆】

illust02_ サワラ漢字

スズキ目サバ科に属す魚。漢字のつくりに春を持つ「ザ・春の魚」は、みなさんよくご存じの「サワラ」だ。晩秋から初春の産卵期に多く獲れ、ショア、オフショア問わずジギングの好ターゲット! 体長40~50cmの若魚を「サゴシ(関東ではサゴチ)」、大きくなるにつれて「ヤナギ」「サワラ(成魚)」と呼び名が変わっていく出世魚で、1mを超えるサイズにまで最長する。歯はひじょうに鋭く顔もイカツイ、見るからにフィッシュイーターであるサワラは釣り人に人気だ。

「春」をつくりに持っているため春が旬の魚かと思いきや、食に関して関西では刺身や白子を好むため春が旬とされているものの、関東では塩焼きや西京漬けが美味しい寒ザワラの獲れる冬が旬だそうだ。
細長い魚でお腹の部分が狭い容姿から「狭腹(さはら)」→「さわら」となったという説。また、斑点のある植物の葉を「いさは(斑葉)」というらしく、サワラの体表にある斑紋に着目。「いさはだ」→「さはだ」→「さわら」となったという説などがある。

「釣って楽しい! 食べて美味しい!」釣り人に馴染み深い、自(字?)他ともに認める春の代表的な魚であることは間違いないだろう。

02_ サワラ
出典:写真AC

【鰹】

illust03_ カツオ漢字

サワラ同様、スズキ目サバ科に属し、日本近海(主に太平洋側)を回遊する魚「カツオ」。年に2回旬が訪れるといわれているカツオ(※参考:カツオの旬はなぜ2回くる?)は、春ごろになると黒潮に乗ってエサのイワシを追いかけ日本(九州から高知)へとやってくる。3~5月の春、その年初めてのカツオを「初ガツオ」「上りガツオ」といい、まだ脂は少ないもののサッパリして美味しい。そして2度目の旬の秋にはエサを豊富に食べ栄養タップリ! 三陸沖でUターンし南下してきたカツオはモッチリとした身で秋の「戻りガツオ」という。
カツオの身にはタンパク質が多く、また血合いの肉には鉄分のほか、ビタミンA、B、EPAやDHAも豊富に含まれており栄養満点!! 誰もが知っている高知の郷土料理「カツオのたたき」は絶品だ。

釣りにおいては、オフショアジギングでよく釣れ、掛かった途端に力強い引きとともに駆け回る魚との駆け引きはスリリング! また、バケと呼ばれる擬似餌をシャクリ誘う「カッタクリ釣り」や、オキアミをエサにコマセを撒きながら誘う「ビシコマセ釣り」は船からライトタックルでも楽しめる。もちろん漁として群れを追いかけ、イワシを撒いて散水を行いながらの「一本釣り」も有名だろう。

そんなカツオの漢字は「堅魚(かたうお)」が変化したもの。お察しかもしれないが、鰹節がひじょうに堅いことから「鰹」になったというのが通説。一方で、カツオは釣り糸や釣りバリに気がつくと逃げてしまうほど臆病で利口な魚でありながら、一度興奮すると見さかいなく擬似餌に食らいつき、どんどん釣れるくらい頑なな魚「頑魚(かたうお)」から「かつお」になったという説。また、弱いイワシに対して強い魚だから、「勝つ魚」→「かつお」になったという説などがあるそうだ。

03_ カツオ

【鱵】

illust04_ サヨリ漢字

ダツ目サヨリ科に属し、サンマに近い種類の魚。細長くて光沢のあるその姿はハリのようだというそのままを漢字にした、「魚へんに針」という字もあてられるのが「サヨリ」だ。
(残念ながら文字変換で出てこなかった…)

釣れる時期は地域にもよるが、5~6月が産卵期で旬は春。春の光モノの筆頭といわれている。鮮度が落ちやすく、とくに胃が痛みやすいため早目に調理し食した方がよいようだ。ちなみに、「サヨリのような人」という表現があるがご存じだろうか? サヨリのように清楚で可憐……という意味ではなく、「外見ばかりがよくて腹黒い人間」を意味し、決してよい意味ではない。サヨリのお腹の中が黒い粘膜でおおわれていて苦みがあることに由来しているのだそうだ。
そんなサヨリはウキ釣りでねらう。ウキ釣りといってもシモリウキにハリス0.4~0.6号(遠投が必要な場合はスーパーボールや飛ばしウキを使用しハリスは0.8~1.2号)、ハリは袖バリの3~5号といった、かなり繊細な仕掛を使う。アミエビをエサに水面もしくは水面下50cmほどの表層を漂わせながら釣る。うまくサヨリの群れを見つけることが大事だ。

古くは海藻に絡みついたサヨリの卵の姿が「より糸」のようだということで、「ヨリトウオ」と呼ばれたそう。そして身が細いことから、ヨリトウオの略称“ヨリ”に狭く長い意の“サ”を冠した「サヨリ」となったそうだ。漢名はもともと箴魚(しんぎょ)といい、下あごが細長く突き出た姿を”箴”(=鍼・針)に見立てたということで「鱵」という漢字が使われるようになったという。
「針魚」や「細魚」とも書くサヨリ。身が細く繊細な釣りごたえを味わうにはちょっとしたコツがいるかもしれないが楽しい魚。一度サヨリ釣りにトライしてみてはいかがだろうか? ただしその清楚な姿の反面、エラに寄生虫(サヨリヤドリムシ)がいることが多いので、さばく際にはビックリしないようにご注意を。奥様には見せない方がイイかも…。

04_ サヨリ
出典:写真AC

【鰈】

illust05_ カレイ漢字

投げ釣りファンに大人気の対象魚「カレイ」。カレイとはカレイ目カレイ科に属す魚の総称で、種類がひじょうに多く、日本近海では約40種類もいるといわれている。すべてでなないものの、おおよそ体の右側に両目が寄り、目のある側を上にして海底生活をおくる魚。似た魚でヒラメがいるので、「左ヒラメに右カレイ」ということわざで覚えると判別しやすいというのは有名な話だ。
一般的には冬が旬といわれるが、種類や料理によっても旬が異なるので一概に言えない。カレイ全体としては旬は1年中といったところだろう。ビタミンAが豊富で、マガレイ、クロガシラガレイ、クロガレイ、スナガレイなどが春に旬のカレイだとされている。

早春から春の始まりの3月下旬は水温が低くエサ取りが少ないうえ、産卵後の食いの渋いタイミングから食い気が戻る時期でもある。この時期釣れるカレイを「戻りガレイ」といい、さらに体力が回復し活発にエサを食べ始める桜の季節には「花見ガレイ」と呼ばれる。
食いの渋い戻りガレイの時期には、目の前にエサがあってもなかなか食いついてくれないのでじっくり待ち、アタリがあってからもしっかりと食いこむまで待つのがセオリーだ。

名前の由来は「韓(から)」からきているのではないかという説がある。朝鮮の異名を「鰈域(ちょういき)」というほどカレイは朝鮮に多い魚とされ、そしてエイに似た魚というところから、「からえひ」→「かれひ」→「かれい」となったということだ。
漢字としては葉や蝶と共通の記号「枼(よう)」、すなわち薄いというイメージを用いて形態的特徴を表し「鰈」となったそう。「葉っぱや蝶のように平たい魚」ということだろうか。比較的イメージしやすく意味が分かれば覚えやすい漢字だ。

05_ カレイ

【鮊】

illust06_ シラウオ漢字

生きているときは半透明だが、死ぬと(または煮ると)白くなることから白魚とも表記される「シラウオ」。沿岸や汽水域に生息し産卵期の春になると川を遡っていくサケ目シラウオ科の魚。昔は隅田川でよく獲れていたそうで、江戸の春の風物詩であり、将軍家にも献上されていたとのこと。淡白で上品な味だが鮮度が落ちやすく、お寿司や刺身、卵とじや釜揚げなどが代表的な料理だ。

ところで、釜揚げといえば「しらすの釜揚げ」があるが、「しらす」とはシラウオも含め、踊り食いで有名なスズキ目ハゼ科のシロウオ(素魚)や、関西の春の風物詩「くぎ煮」でも知られ、春告魚としても有名なスズキ目イカナゴ科のイカナゴ(玉筋魚)、そのほかイワシもアユもウナギも…小さくて白い稚魚の総称なのだ。(※参考:シラウオとシロウオどう違う?

06_ シラウオ
出典:写真AC
07_ キビナゴ
出典:写真AC

<ついでに…>
イカナゴに似た魚でニシン目ニシン科のキビナゴ(吉備奈仔・黍魚子)がいる。こちらも旬は春で鹿児島県が漁獲日本一! 同じニシン目ニシン科のウルメイワシの近縁種ではないかと考えられている。
以前(私の経験談で恐縮だが…)、鹿児島県の甑島(こしきしま)で刺身、天ぷら、唐揚げに丼ぶり、そしてアンチョビのピザまでキビナゴづくしを味わったことがある。どれも美味で普段味わえない料理に舌鼓を打ったほど。鹿児島県では愛されている魚なのだ。
(そのあと調子に乗って食べ過ぎたために少々体調を崩したが…(笑))

【春告魚】

よく春の魚として「春告魚」という名を目にするが、先でも紹介したイカナゴのように、「春の訪れを告げる魚」の意味であり、地方により春告魚が指す魚は異なる。春告魚とはいわゆる俗称だ。

illust08_ メバル漢字

春告魚としてよく知られているのは、キョロっとした大きな目玉が可愛い「メバル」。胴突仕掛でのエサ釣りやメバリングといったルアー釣りで釣り人にも人気のメバルは、その特徴的な目が張っているため「眼張」という字があてられている。一方、魚へんで表すと「鮴」と書く。岩礁の隙間や海藻の茂るところに生息する根魚としてのメバルは、その場からあまり動かず岩と岩の間で休んでいるようにも見えるということで、このように表記されるようだ。
※「鮴」はゴリという魚をも指す。石の間に伏している(休んでいる)魚で、ゴリとはカジカの別名だ

illust09_ ニシン漢字

また、メバル同様に有名なのが、「鰊」「鯡」と表記される「ニシン」。春に産卵のため沿岸にやってくるニシンは、かつて北海道沿岸に大群で押し寄せてきたそうだ。そして、ニシンの卵巣はいわずと知れたお正月にお馴染みの「数の子」。
ニシンの漢字のつくりである柬は若いという意味、そして非というつくりは否定を表し、双方まだ成魚になっていない小魚ということからニシンの字となったそうだ。しかし、また別の説もある。
については「楝(れん)」に由来するという。楝はセンダンという木で、端午の節句に邪気を祓うために飾るという縁起のよい木。ニシンは別名をカドといい「カドの子」が訛ってカズノコになったというが、カズノコは数がたくさんあることから子孫繁栄のシンボル。同じ縁起物である楝のつくりを取って鰊と書くようになったという説だ。
またについては、つくりの「非」が鳥の羽が反対方向に向いている図形を表し、2つが両方に並ぶというイメージから魚の卵を連想させる。カズノコとのつながりから鯡という字もニシンを表すようになったそうな。ちなみにカズノコは魚へんで「鯑」と表記する。

08_ メバル
09_ ニシン

 

といったわけで、「春が旬の魚」にまつわる漢字を紹介させていただいた。いかがだっただろうか?
四方を海に囲まれた島国日本に住むわれわれにとって、魚は身近な存在。四季折々の魚料理が食卓を飾り、胃袋を満たしてくれる恵まれた環境に感謝し、また機会があれば他の季節の漢字も紹介させていただきたい。
ぜひ、懲りずにお付き合いを…。

 

※本文の漢字の成り立ちや名前の由来は諸説あるうちの一部です。ご了承下さい。

出典:
新村出編 (2018) 『広辞苑』第7版 岩波書店.
小西英人著 (2018) 『写真検索 釣魚1400種図鑑』 KADOKAWAメディアファクトリー.
江戸屋魚八著 (2002) 『ザ教養 魚へん魚講座』 新潮社.
加納喜光著 (2008) 『魚偏漢字の話』 中央公論新社.