From HEAT the WEB DIRECTOR 知って得する!魚へんの漢字
季節や自然にまつわる魚漢字トリビア

魚偏(へん)の漢字_text-photo岳原雅浩

釣りが好き、魚が大好き…とはいえ、なかなか釣りの用語や魚の名前はおろか、魚の漢字までは正確に覚えることができない私スタッフD。もともとの頭のまずさに加え、最近では加齢も手伝って、パッと言葉が出てこない…、読めない…ことも多く、文章を書く身としては常に辞書や参考書を片手に、四苦八苦しているのが現実…。

そんな私がこれまでに気になった魚へん(偏)の漢字は多く、調べていくとなかなかに奥が深い。今回は、魚へんの漢字のなかでも逸話が面白かったり、まとめて知ってしまうことで覚えやすいグループをご紹介。みなさんは魚へんの漢字、けっこう詳しい??

季節・自然にまつわる魚へんの漢字 その1

illust01_ 魚へん・つくり

魚へんの漢字は本当に多く、しかも調べていくと、ある魚へんの漢字が複数の魚を表していることや、ある魚に複数の漢字があてられていることが多い。またその経緯も、中国から来た漢字由来のものもあれば、日本で独自に生み出されたもの(国字という)、もしくは、逆輸入されたものなど、その漢字の意味が現代の形となるまでにはさまざまな経緯があるそうだ。
ちなみに、魚へん(偏)は「さかなへん」と読んでも差し支えないようだが、「うおへん」と読む方が多いそう。

01_季節.jpg 季節

そういった魚へんの漢字のなかでも私が気になったのは、「季節や自然」にまつわるもの。特有の季節を持つ日本では、四季折々の料理や旬な魚があり、日ごろから「今が旬!」という言葉をよく耳にする。というわけで、そんな魚へんの漢字、まずはこちらから。

【鰆】

illust02_ サワラ 漢字画像

こちらの漢字はいわずと知れた「サワラ」。早春に多く獲れるため、「春の魚」というイメージが強く、季語にもなっている。大きく成長するサワラは1mほどに育ち、体長40~50cmの小さいものは「サゴシ(関西)」と呼ばれる出世魚。ジギングでもよく食らいついてくる、歯が鋭いフィッシュイーターだ。魚へんに「春」がついた漢字があてられている通り、関西や瀬戸内での旬は春だが、地域によって美味しい旬は異なるそう。関東地方で美味しいのは秋以降といわれ、特に真冬の「寒ザワラ」は身がしまって絶品だそうだ。いずれにしても、比較的知られたメジャーな漢字のように思う。

02_DSC_1170.JPG サワラ

【鰍】

illust03_ カジカ 漢字画像

さて、ちょいと夏を飛び越えて、魚へんに「秋」と書く漢字は何と読むだろうか?
実はこの漢字は「カジカ」と読む。カジカはスズキ目カジカ科の魚で、その仲間は海にも淡水にも多い。漢字のものは、なかでも淡水・水のきれいな川に棲むものを指している。漢字の由来としては、カジカは秋によく鳴くとされたため、魚へんに「秋」がついた漢字があてられたそうだが、お察しの通り魚のカジカは鳴かない…。カジカは頭が扁平で不格好な姿も相まって、カエルの一種のカジカ(河鹿)と間違えられたようだ…。そして、秋によく鳴く魚となった。

03_ カジカ
出典:写真AC

【鮗】

illust04_ コノシロ 漢字画像

秋の次は「冬」。冬の魚として思い浮かぶのは何だろうか…?
冬の釣りモノとしては、ワカサギやニジマス釣り、はたまた最近流行りのライトゲーム、アジングやメバリングも思い浮かぶ。しかし、魚へんに「冬」と書く魚は「コノシロ」

この「コノシロ」にあてられた漢字、実はかなり多く4つの漢字がある。魚へんに「冬」と書く以外にも「鰶」「鱅」「鯯」などがあり、なかでも魚へんに「制」と書くコノシロは、同じニシン科でコノシロに似た魚「サッパ」とも読む。岡山県の名産ママカリのことだ。コノシロは漢字が多くあるだけに逸話も多く、魚を焼くと独特なニオイがすることから「火葬場のニオイがする」と嫌われたり、武家社会では「コノシロ(此の城)を食べる」ということに通じるため嫌われ、切腹する際に用いる風習があったそうだ。また、殺されかけた子どもを助けるため、子どもの代わりにコノシロ(子の代)を棺に入れ火葬したという伝承もあったりと、なかなか恐ろしい話が多い。

04a_ コノシロ
出典:写真AC
04b_ 寿司コハダ
出典:足成

だが、魚そのものは「冬の光モノ」として好まれ、2月ごろまでが旬の魚。江戸前寿司では「コハダ」の名前で親しまれる魚といえばよくご存じだろう。小さいものは「シンコ」、成長するにつれて「コハダ」「コノシロ」と名前を変える、これまた出世魚だ。

【魚夏】

illust05_ ワカシ 漢字画像

さて、先ほどなぜ「夏」をとばしたかというと、実は魚へんに「夏」という漢字はないようだ…。いくら調べても出てこなかった。代わりに、「魚夏」という漢字があてられた魚がいた。はたして何と読む魚だろうか?
この漢字の読み方は「ワカシ」。ピンときた方は多いはず。そう、こちらも出世魚「ブリ」の子どものころ(幼魚・若魚)の名前で、しかも関東での呼び名だ。ブリは関東では、「ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ」と成長し、関西では「ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ」といった具合に、地方によって異なる呼び名で成長する出世魚だ。初夏に小さいサイズのワカシやツバスが釣れることから、ワカシには「魚夏」という漢字があてられたと考えられているそう。
ちなみに、ブリと似た魚でヒラマサ(平政)がおり、どちらもスズキ目アジ科の仲間だ。その見分け方はひじょうに難しいものの味はぜんぜん違うため、好みが分かれるところだろう。

05_IMG_0656.JPG ワカシ(ツバス)