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緑と清流の町、埼玉県飯能市にある「名栗湖」はカヌーイング、フィッシングなど水上アクティビティが楽しめる大注目のアウトドアスポット。カヌーで湖上散歩を満喫したあと、湖に仕掛を投じれば、愛らしい顔をしたお目当てのヌマチチブが次々と姿を現し、楽しさは倍増!
アウトドアマニアだけでなく、親子で1日楽しく遊べること請け合いの名栗湖と周辺レジャー施設を紹介しましょう。
カヌーや釣りが楽しめる水辺のフィールド「名栗湖」

首都圏から約1時間半の県営第1号の人造湖
埼玉県飯能市の山間に位置し、周囲5kmほどのこぢんまりした湖が「名栗(なぐり)湖」です。飯能市街地から県道を秩父方面に向かって西進し、下名栗地区の町並みが途切れた辺りを左折。坂を登りきった前方の山間に姿を現します。
入間川支流の有間川を堰き止めた、県営第1号の「有間ダム」(昭和61年完成)により生まれた名栗湖。その湖畔には、水上アクティビティを楽しむ人たちがやってくる全国でも珍しい「認定NPO法人 名栗カヌー工房」があります。
同工房は、カナディアンカヌーやカヤックを地場の木材を原材料に製作するほか、同湖でのカヌーレンタルも行うなど、カヌービルド&カヌーイングの拠点施設です。
一方、湖には釣り人も訪れます。彼らがねらうのは、清冽な水を好むトラウト類。40cm近くまで成長した姿態の整ったニジマスをはじめ、ヤマメやイワナがヒットすることもある魅力のフィッシングフィールドです。
高速道路を利用すれば都心から約1時間半という良好なアクセス性と相まって、名栗湖とカヌー工房は、アウトドア愛好家たちを魅了し続けています。
実はヌマチチブも生息
熱狂的なトラウトマニアの姿が絶えないフィールドですが、実は、淡水ハゼ「ヌマチチブ」が生息していることは、まだあまり知られていません。実際、私が知ったのも最近ことです。
カヌー工房のスタッフは木工技術の熟練者ぞろいですが、何を隠そう全員がバリバリの釣り人。聞くところによると、数年前からカヌー乗降用の浮き桟橋を利用して、密かにヌマチチブ釣りを楽しんでいたそうです
ヌマチチブという名前は知っているものの、まだ出会ったことのない私。「釣りたいぞ!」という思いを胸に、名栗湖へ向かいました。
湖畔の「名栗カヌー工房」を訪問
「認定NPO法人 名栗カヌー工房」の建物は、平成8年当時の旧名栗村(現在は飯能市に合併)が、地域振興を目的に開設した公営施設です。当初、施設は同法人が指定管理者として運営していましたが、現在は市から施設を取得し、同法人が所有・運営しています。

「名栗カヌー工房」は、名栗湖での魚釣りのインフォメーションやフロント的な役割も担っています。釣り場(湖の一部)を管理し、遊漁券も販売しています。
有間ダムを管理する埼玉県では、事故防止の観点から法面などダム湖内への人の立ち入りを禁止しています。そのため、同湖での魚釣りについては、「名栗カヌー工房」が用意するカヌーやボート、桟橋利用に限って許可されているといった具合です。漁業権が設定されており、所管は入間漁業協同組合(飯能市阿須)となります。
工房窓口でヌマチチブ釣りであることを伝え、600円の日釣り券(のべ竿雑魚釣り用)を購入。カヌー工房の浮き桟橋から釣りをするため、施設使用料として500円(2時間)を支払います。さあ、これで釣り準備OKです。

地元木材を使ったカナディアンカヌーを製作
施設内を見渡すと、スタッフたちがカナディアンカヌーの仕上げ作業中でした。
柔らかな曲線を持ち、木目の美しい全長4mのカナディアンカヌー。「湖面を渡る涼風を受けながら、ゆったりとカヌーで水面を滑ったら気持ちいいだろうなあ」と思いを巡らしていたところ、「乗ってみませんか?」と工房スタッフの方から突然のお誘いが。ヌマチチブ釣りを控えていたため少しとまどったものの、釣り場にはもう到着しているし、第一ヌマチチブは逃げません。「喜んで!」と即答してしまいました。

ククサやルアーなども手掛ける
ところで、施設名称こそ「カヌー工房」ですが、製作物はそれに留まらないのが「名栗カヌー工房」の特筆すべきところです。
木工技術の熟練者ぞろいの工房スタッフが作り出すアウトドア関連のアイテムは数多くリリースされていますが、なかでも釣り人から高い評価を得ている小物に、ククサとウッドルアーがあります。
「ククサ」とは、フィンランドなど北欧に古くから伝わる伝統的な木製マグカップ。「名栗カヌー工房」では「飯能ククサ」の商品名で、ヒノキ、ケヤキ、サクラ、エンジュなどの飯能産の木材を素材に製品化しています。
飯能ククサは、日常生活からアウトドアまで幅広いシーンで活躍し、使い込むほどに風合いが増していくのが魅力です。その味わい深さから、工房の商品群のなかでもとくに人気の高いアイテムとなっています。

理事長以下、スタッフ全員が釣り人という環境から製品化されたウッドルアーも、見逃せない存在です。
ラインナップは、トップウオーター用の「カヌー型」、お尻をリズミカルに振ってトラウトやバスを誘引する「ニョロ」など、ユニークなフォルムをした3種類。いずれも、実際にスタッフが名栗湖で何度もテストを繰り返し、満を持して市場に送り出した逸品です。

試作段階で投げたルアーに、バスやニジマスがヒットしたことが何度もあるとのこと。ルアーのサイズは5~7cmで、カヌー同様に無着色で仕上げ、木目の美しさを強調しているのが工房らしい魅力です。
認定NPO法人 名栗カヌー工房
住所:〒357-0112 埼玉県飯能市下名栗1817-9
TEL:042-979-1117
HP:https://naguri-canoe.co.jp/
営業時間:9:30~16:30
定休日:毎週水曜日、年末年始
工房のカナディアンカヌーで名栗湖へ

さて、ライフジャケットを着て、カヌー係留・乗降用の浮き桟橋へと向かうと、いよいよカナディアンカヌーに乗り込みます。前席に私、後席にパドルを操作するスタッフが座り、湖へと漕ぎ出しました。山々に囲まれた湖をカヌーは滑るように進んでいきます。視線は低く、水面にペタリと座り込んだ感じです。頬をなでる風が心地よく、聞こえてくるのは後方に水をかくパドルの音だけでした。
岬の先に停泊しているカヌーは、ルアーでトラウトフィッシングを楽しむ2人組の釣り人たちでした。キャスティングの邪魔にならぬよう注意しながら近付き、釣果をたずねると、釣りの手を休めて「いいサイズの美しいニジマスが釣れました」と満面の笑み。
カナディアンカヌーを操り、清冽な湖の美形トラウトを釣る。自然との一体感を味わえる、まさに唯一無二の瞬間です。
木のぬくもりを感じるオリジナルカヌー
「名栗カヌー工房」のカナディアンカヌーは、地元の山林から切りだされた、古くから「西川材」と呼ばれているスギ材で製作されています。
スギの丸太を大きな帯ノコで製材し、細長くスライスした板を型に沿って何枚も張り合わせて仕上げるといった工程です。4m、4.8m艇の2つのバージョンがあり、参考までに4m艇の重量は18kg。驚くほど軽く、大人なら1人で楽に持ち上げられ、移動も容易です。
「名栗カヌー工房」の作るカナディアンカヌーは、柔らかなフォルムに加え、木目の美しさにも定評があります。

出典:名栗カヌー工房
湖上から眺める名栗湖の景色を満喫
カヌーの漕艇を後部座席のスタッフに任せ、後方へ流れる湖畔の景色を楽しむ。風の影響を受けやすいカヌーですが、この日の湖面は静穏(せいおん)。パドルをひとかきするたびに、音もなくスー、スーと静かに前へ進んでいきます。
湖を取り囲む山林の多くは針葉樹で構成されていますが、尾根付近は雑木が葉を茂らせています。その尾根の上空では、絶滅危惧種の大型猛禽類クマタカが滑空する日もあるそうですが、残念ながら姿を見ることはできませんでした。

カヌーはいいものです。乗っていると時間がゆっくり流れ、日々の忙しさから解放されるような感じです。さて、桟橋に戻って、釣りの準備に取り掛かることにしました。いよいよ、本日第2のメインイベントの始まりです!
桟橋からヌマチチブ釣りに挑戦!

浮き桟橋に帰着し、釣り場を観察します。桟橋から岸側の水深1mほどの浅場を覗き込むと、黒色をした5~6cmの小魚が底でじっとしているのが見えました。
「ヌマチチブだ!」
水面の揺らぎに目が慣れてくると、湖底に沈んだ石の陰に身を潜めている個体も、かんたんに目視できるようになりました。工房スタッフも「いますね! 今日は釣れますよ!」と太鼓判。はやる気持ちを抑え、仕掛をセットしました。
ヌマチチブとはどんな魚?
ヌマチチブはスズキ目ハゼ科の淡水魚。かんたんに、手軽に釣れる小魚として人気があるようです。
私の知人で魚類研究者・金澤光氏の著書「埼玉県の魚類」(さきたま出版会)を参考にすると、埼玉県内の汽水域から中流域、農業水路、湖池沼など、さまざまな場所にいるヌマチチブ。県内には降海型と陸封型の両方が生息しており、陸封型については珍しいものではないとされています。
同著によると、名栗湖下流の入間川にも分布しているそうです。流域に生息するオイカワやカワムツは人目に付きやすく、釣りの対象魚としてポピュラーですが、一方で、川底に潜むヌマチチブは、その生態からしてマイナーな存在なのでしょうか。当地の入間川流域で釣っているという話は、あまり伝わってきません。

使用したタックルと釣り方
今回のヌマチチブ釣りに使った道具を少々説明しましょう。といっても、道具はいたってシンプル。1mほどののべ竿に0.6号のハリス、ハリ、オモリ(3B)、エサのミミズを用意しました。ポイントの水深は1mほどなので、仕掛の全長は竿半分程度。エサがヌマチチブの潜む湖底に届かなければ、穂先を水中に突っ込めばよいといった具合です。
今回は手持ちの道具で仕掛を作ったので、ハリについてはフライ用の16番(バーブレス)を流用しました。

カヌーと釣りで満喫する名栗湖の1日
事前情報では、ヌマチチブのサイズは大きくても10cm程度と聞いていました。なので、エサのミミズを5~10mmほどにちぎりハリに掛ける、釣り方はサイトの「ミャク釣り」です。
桟橋に座り込んで、そろそろと石陰にエサを落としていくと、湖底でじっとしていたヌマチチブがミミズのニオイに誘われるようにわっと集まってきます。そして、エサを突いたり、ついばんだりと、さっそく反応を見せてくれました。

ミミズを頬張れず、口から放してしまうのは小型の個体です。良型をヒットさせたい私は、エサの周囲に小型が集まってくると、フッキングしないよう、仕掛を引き上げます。
しかし、そこは悲しい釣り人の性。ククンとアタリが出ると、小さいと承知していても、ついアワセを入れてしまうのです(笑)。オモリを盛んに突く慌て者もいて、思わず笑ってしまいました。
釣れる楽しさに夢中!
ヌマチチブ釣りで最高の時間
釣り上げるたびに観察用容器に入れていると、30分ほどで平均サイズ8cmを10尾超え。小さいものは黒色ですが、大きいサイズだと体のドット模様がひときわ目立っていました。顔立ちは愛嬌たっぷりで、全体的にユーモラス。食べると美味いそうですが、今回はそれが目的ではないため、すべてリリースして初体験のヌマチチブ釣りを終えました。
一方、工房スタッフのなっちゃんの様子を見ると、まだ真剣モード。かがみ込んで、一心に水中を見つめています。「終わるよー」と声を掛けても、なかなかやめる気配がありません。そうだよね。楽しいもん。

名栗湖に広がる新たな楽しみ!
ヌマチチブ釣りの可能性
名栗湖のカヌーイングは愛好家の間で広く知られており、関東圏を中心に多くのリピーターが訪れています。トラウト、ワカサギ釣りで太公望たちにも有名な名栗湖に、釣り未経験でも十分に楽しめる新たなアクティビティとして、ヌマチチブ釣りが加わる日も近いかもしれません。
実際に名栗カヌー工房では、子どもや釣り初心者でも手軽なタックルで遊べる「ヌマチチブ釣り」を、名栗湖でのアクティビティの1つとして検討しているそうです。
今回、シーズンにはクマタカが舞う湖でカナディアンカヌーに乗り、浮き桟橋では愛らしい小魚・ヌマチチブ釣りを楽しみました。どちらも、自然と一体になれる至福の時間でした。ぜひみなさんも、一度「名栗湖」を訪れて、カヌーや釣りに興じてみてはいかがでしょうか。
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レポーターREPORTER

埼玉県在住
釣り雑誌「北の釣り」(廃刊)東京支局員後、地域紙の記者を勤め、現在は業界紙に記事執筆中。淡水の釣りがメイン。幼少より清流で遊び、青緑やオレンジに体を染めるオイカワや愛らしいカジカの存在を知る。フライフィッシングから和式毛バリ釣りに転向したものの寄る年波に勝てず、近年は釣り場が渓谷から民家近くの里川に。オイカワやカワムツといったチャブフィッシングに興じながら、河原でエモーショナルな夕焼けを待つのが楽しみ。そんな釣り場への移動は50ccのエコなカブ。Cubに乗って、Chub釣りへ!
