
出典:写真AC
周囲を海に囲まれた我が国ニッポンは紛れもなく海釣り天国、多種多様な魚がねらえるが、同じ魚種をねらうにしても、さらに同じ釣りジャンルといえど、地方によって独特のカラーがあるのが、何より古くからニッポン人が釣りに親しんできた証拠。
「あの釣りこの釣り古今東西」第28回はアイゴ釣り。アイゴは背ビレの棘(トゲ)などに毒があり、また内臓に独特の磯臭さがあるためか、全国的にみれば歓迎されない魚であることが多い。しかし一部の地域では熱烈なファンを持つ。そんなアイゴ釣りの地域性を中心に語ってみたい。
日本一?の“アイゴ好き県“
和歌山ではアイゴの干物が名物
平べったいボディに、きゅっと締まった尾柄部(びへいぶ・尾ビレの付け根)、ガッと張った背ビレ……。スピードこそないもののアイゴはなかなか引きが強いファイターだ。ハリに掛かるとガッガッガッとロッドを執拗に叩く節がある引きを見せ、磯釣りに慣れた人なら、掛かった瞬間に「アイゴ」と判断できる場合が多い。
琉球列島を除く日本各地に棲息し、ほぼ全国的に標準和名の「アイゴ」で通じるが、和歌山県や徳島県では単に「アイ」と呼ぶことも。また、関西では手の平クラス以下のアイゴを「バリコ」と呼ぶが、九州では小型から大型までひっくるめて「バリ」と呼ぶのが一般的だ。


そんなアイゴだが、磯臭さと毒棘(どくきょく)のため、全国的にみれば釣魚としての地位は高くない。たとえば、同じ紀州の磯をホームグラウンドにする京阪神の人からは、完全に迷惑魚扱いされることが多い。
しかし、釣り上げてすぐに毒棘をハサミでカットし、内臓を潰さないように抜いてからクーラーに入れて持ち帰れば、美味しくいただけるはず。和歌山県中南部の土産物店に並ぶ「アイゴの干物」を購入し、一度味わってみるのもいいだろう。釣魚としての価値を見直す機会になるかもしれない。
釣り方はフカセというより
仕掛を立たせたウキ釣り
釣り方は一般的な磯フカセでもよいが、グレやチヌを釣るように、長いハリス部を海中でふかせる(フワフワとたなびかせる)必要はない。
ハリ上数10cmに重めのガン玉などを打ち、仕掛を立たせるようにねらうとアタリが取りやすい。その方がウキに明確にアタリが出るため、アワセのタイミングが取りやすくなる。
ウキはグレ、チヌ併用の中通しの円錐ウキでも構わないが、古くからマニアックにアイゴをねらう紀州・田辺や九州では、細長く感度がよい棒ウキ(田辺では古くから「田辺ウキ」という名前で浸透している)を使用することが多い。ヘラブナ釣りのように、わずかなウキの変化で掛けアワセてねらっている。

サシエに酒粕、マキエにヌカ…
紀州のアイゴ釣りの伝統にして定番
エサはグレ釣りやチヌ釣り同様に、オキアミ(生・ボイル)や湖産エビ(冷凍のスジエビ)で大丈夫だが、和歌山県の田辺周辺の磯では、古くから“酒粕”が使われている。
酒粕はそのままでも構わないが、サナギ粉などを混ぜ込んで使用する方が集魚効果は高く、アイゴ釣り専用の、酒粕をベースにしたネリエも市販されているので利用するのもいいだろう。
小豆ぐらいの大きさに指先でキレイに丸めて、ハリ先にチョンと乗せるように刺すのが基本だ。


出典:浜市

マキエもグレ釣り同様にオキアミと集魚材のミックスでOKだが、田辺の方いわく「アイゴは米ヌカ大好き」ということ。なので、米ヌカを少量の海水で練ったものをシャクで撒くだけでも十分に効果がある。
また、このヌカをハリ上のサルカンやオモリ部分にギュッと握り付けてねらう、「ヌカ切り」と呼ばれる釣り方が古くからあり、アイゴ釣りにも多用されていたように思うが、現在では……? 近年はごく少数派(?)、ほとんど見かけなくなったのかもしれない。
余談だが、およそ50年近く前、兵庫県の播州地方の沖堤にバリコ(大きくて10数cm)が大量に押し寄せたことがあった。それをねらうエサは、何と地元で「本荘貝」と呼ばれる「バカ貝」の貝柱だった。これを数ミリ角にハサミで切り、アジバリのような小バリのハリ先にチョンと刺して、小型のヘラウキ(のような棒ウキ)で防波堤際ギリギリをねらった。
そのときに毒棘に刺され腫れ上がった手の痛みは、今でも鮮明に覚えている。
