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大海原で自由に船を操り、好きなところで好きなように釣りをするためには、もちろん船舶免許が必要。しかし1級免許ともなると、気持ち的にも技能的にもなかなかハードルが高そう……。いえいえ決してそんなことはありません!
実際に私がトライした、船舶1級免許取得のために受講したスクールとその試験の模様をレポートします。安心安全な航海のためには、技能や知識を理解し習得するに越したことはありませんが、実は免許取得にもコツがある! そんな実のトコロをお届けしましょう。
まずは気軽に、船舶免許にチャレンジしてみませんか?
船酔い対策のため?
「手前船頭」目指して船舶1級免許に挑戦!
アジングを始めて約3年。この間ずっと釣れなくてもオカッパリ一筋。何度か船釣りにも誘われたこともありますが、踏み切れず…。その理由は、船酔いが酷いので乗合船で船釣りに行く勇気がないためでした。
そこで思いついたのが、「クルマと同じで船も自分で運転すれば酔わないんじゃないか?」「それならボート免許を取って自分で船を運転し、酔ったら好きなときに戻ればいいではないか?」ということ。アウトドアレジャーのシーズンオフである真冬の暇つぶしを兼ねて、船舶1級免許の取得に挑戦してみました。
かつては「船舶1級免許」といえばかなりハードルが高く、取得が難しい資格というイメージだったと思います。「遊びでやるなら4級で十分!」という感じで、1級免許は本職の人だけが取るものだという感覚だったように思います。しかし今は、等級が1級と2級の2段階に集約されたこともあって、1級の取得も驚くほどかんたんになっているようでした!
最初の2日間でまずは2級免許を取得
私が受講した「集中講習」的なスクールでは、全てのプログラムが4日間だけで終了するというもの。土日だけで受講できるコースもあり、私は2週連続の土日を利用して取得してきました。ただし、その4日間は文字通り朝から晩までギッシリのスケジュールでした。
操船の実技を習うのは実質3時間のみ!
講習初日の集合時間はなんと朝の7時です! そして実技講習&実技試験まで午前中の半日で終了してしまいました。信じられないことですが、実際の操船技術を習うのはこの半日間の4~5時間ほどだけです。しかもそのうち最初の1時間ほどは岸に係留された船の中で安全確認や機器の説明、ロープの結び方などを習うだけで、実際に船を操縦するわけではありません。
さらに、実技講習の最後の30分ほどは、実技試験(自動車教習所の「路上検定」に相当)なので、実際に船の操縦を習うのは真ん中の3時間ほどだけです。また、その半分以上は先生が見本を示して操船しているので、自分自身でハンドルを握っていたのは半分以下の1時間ほどでした。
たったこれだけで、「船長」として(船舶免許を取得したら「船長」になれます!)大海原をどこまでも運転して行けるようになるのです!
クルマの場合だと考えられないことですが、船の場合はそれだけでもまがりなりにも動かすことができるようになります。離岸と接岸さえできれば、あとはほとんど障害物のない海の上なので、ハンドルを回してスロットルレバーさえ操作できれば何とかなってしまうというのが実情です。
実技試験ではおもに6つの項目をテスト
実技試験では、「直進」「方向転換」「スラローム」「接岸」「人命救助」「ロープワーク」など、おもに6つの項目がテスト対象となります。
●直進:
波や風の影響を受けながらも目標に向かってまっすぐに進めるか(ただまっすぐ走るだけなのに、海上ではこれが意外に難しいのです…)
●方向転換:
直進中に別の目標に向かって大きく右折や左折ができるか
●スラローム:
20~30m間隔で直線状に浮いている5つぐらいのブイの間をぶつからずにジグザグに走行できるか
●接岸:
岸に激しく衝突せずにできるだけ船を寄せられるか
●人命救助:
人間に見立てた水面のブイにゆっくり接近し、船上に引き上げることができるか
●ロープワーク:
「△△結びで」という試験官に指示された方法でロープを結べるか
あとは1日目の午後から最終日の4日目までずっと座学だけで、船の仕組みや海図の書き方、天気図の見方などを延々と頭に詰め込んでいくことになります。
学科試験は3分の2できれば合格??
そして講習2日目の最後に1回目の学科試験があります。ここで65%以上、50問中33問以上取れれば、まずは2級合格! となります。
試験終了後、3日以内に「不合格」の連絡がなければ「合格」ということらしく、「合格の通知」というのはとくにないようです。
「分厚いテキストを実質1日ほどで覚えてすぐ試験」というのはなかなか大変ですが、スクールが作成した問題集というのがあって、その中から試験に出そうなところを中心に講師の方が説明してくれます。そして、実際の試験もほぼそれと同じものが出題されます。なので、試験のときもみなさんスイスイ解いて、終了時間前に早々に退出していました。
後半2日でいよいよ1級免許の取得へ!
翌週の2日間は早くも1級クラスになります。ここでは丸2日間、朝9時から夕方5時ごろまでずっと座学のみで、実技は全くありませんでした。座学の内容は、2級にはなかった海図や天気図などがメインで加わります。
講習では、実際に海図の上に三角定規とコンパスで航路などを書き込んでいきました。ここで苦労する人もいるので1級を難しい印象にしていますが、基本を理解すればパターンは3つぐらいしかないのですぐに慣れることでしょう。
1級の学科試験そのものは2級より範囲も狭く、問題数も14問だけなので、むしろ1級の方がかんたんかもしれません。(ちなみに、1級の試験には2級の範囲は出ないので、2級の内容を全部忘れてしまっていても大丈夫です(笑))
回答方式も2級と同じく全て4択問題です。海図の問題も、最終的には選択肢の中から最も近そうなものを選ぶ選択問題なので、仮に全く分からなくても4分の1の確率で正解する可能性はあります(笑)。
試験範囲は「上級運航Ⅰ(航海・気象・海難など)」から8問、「上級運航Ⅱ(エンジンなどの機関)」から6問、の合計14問です。このうち65%の10問以上正解すれば合格となります。
しかし、「上級運航Ⅰ」「上級運航Ⅱ」それぞれで半分の、4問と3問は少なくとも正解しなければなりません。つまり、「Ⅰ」で8問全て正解し「Ⅱ」では2問だけ正解して合計10問の正解…ではダメ! ということになります。また、「Ⅰ」の8問の中身は、海図3問、天気2問、海難1問、そのほか2問という構成になっており、海図の3問が1問も解けないと、残り5問のうち1問しか間違えられないのでやや苦しくなります。
受験テクニックとして、「先に海図以外の11問をさっさと片付けてしまい、残りの時間でゆっくり海図に取り組む」という作戦もアリかもしれません。ちなみに試験時間は70分あります。海図以外の11問の暗記問題は15分もあれば終わるので(覚えていないものはいくら時間をかけて考えてもどうしようもありません…)、残り55分かけて3問の海図をやればいい計算になります。
さらにさらに、海図3問のうち最後の1問は海流などが絡む複雑な問題です。もし解けないようであれば、試験終了間際に4択のなかから「エイや!」で選ぶといったのも一つの手。となると、実質2問で55分なので時間的にはたっぷりあります。
これでスクールのすべてのプログラムは終わり、あとは合格発表を待つだけです。1級の試験も2級と同様に合格通知はなく、3日経っても何も連絡がなければ「合格」ということなので、しばらくは合格した実感がありません。1ヵ月ほどして免許が郵送されてきて、やっとここで「船長」になったことを実感しました(笑)。
船長になって初めてのボートフィッシングへ!
無事「小型船舶操縦免許証」が届き、晴れて「船長」になったので、まずは免許スクールの関連マリーナが開催している「操船セミナー」に行ってみました。私が参加したのは、教官に同乗してもらい、船の操縦とボートフィッシングの両方を教えてもらうという「ビギナーコース」でした。
最大の心配事は「船の離着岸」でしたが、当日は教官がやってくれたので、あとは広々とした海上で4000回転ぐらいまで速度を上げて釣りのポイントまで疾走。そしてポイントに着くと、できるだけその付近に船を固定するコントロール方法などを教えてもらいました。
しかし、この「釣りのポイントで船を止める」というのが一番の難題…。潮と風で常に流される船をいかにポイントに留めておけるか。ギアをバックに入れて潮に逆らいながら、ハンドルを常に左右に大きく切って舵を当てるという微妙なコントロールが求められました。そんな操船に気を配りながら釣り竿も操らなければならないので、初心者の私にはかなり難易度が高かったように感じます。
初のボートフィッシングでアジが釣れた!
今回は操船技術の習得がメインで釣りはあくまでサブなので、釣り自体はサビキでアジをねらうというシンプルなものでした。コマセカゴもなしで、サビキ仕掛とオモリをシーバスロッドに付けて底まで落とすだけ。そしていくつかの釣れるポイントを転々としながらボートフィッシングの感覚を学びました。
そんな3時間ほどの半日コースで、なんとかアジ2尾とサッパ数尾にコノシロを釣り上げることに成功! サビキ釣りではありましたが、真っ昼間にアジが釣れたので私的には大いに満足!! 家に持ち帰り刺身にして、ありがたくいただきましたよ。
次に目指すは「手前船頭」
また、今回は自分が釣りをしている間、教官がほとんど操船して船をポイントに止めてくれていたので釣りに集中できましたが、これを1人でやるとなると、かなり熟練が必要だろうと思いました。とくに魚が釣れた際、「魚を取り込んでハリを外し、さらに操縦席から離れた場所にある生け簀に入れる」という一連の作業の間は要注意。どんどん船が流されて橋脚などのストラクチャーに接近したりします。
サビキ釣りなら、操縦席の横から海底に仕掛を落とすだけなので片手でもできましたが、キャストするとなると両手を使うのでさらに難易度が増すでしょう。まだまだ習得しなければいけないことは山積みです…。
これからもっといろいろな操船術をマスターして、最終的には、1人で操船しながら釣りもする「手前船頭」を目標に頑張りたいと思います!
「船酔い対策」というヒョンなことから船舶1級免許取得を目指しました。そして、実際に船の操縦をしながら釣りをするという初体験を経て、新たな世界が一気に広がった気がします。今まで自分がこだわっていた陸のいつもの狭い釣り場を海側から眺め、はるか遠く沖合に出てみると、「自分はなんて小さな世界にいたんだ!」という気持ちになります(笑)。
また、これまでのオカッパリでは、魚がいるのかどうかも分からない場所でじっと留まっていたのが、船であれば釣れなければすぐ別のポイントに移動できます。魚群探知機で魚がいるのを確認して釣ることができるのです。大きな自由とチャンスを手に入れたような気がしました。
みなさんも船舶免許を取得し、手前船頭を目指してみてはいかがでしょうか? 1級免許でも思ったよりもずっとかんたんに取れましたし、2級免許であればわずか2日で取れるのでさらにお手軽です。
たとえば東京湾内であれば、2級免許で航行できる距離(海岸から約9.2km)でほぼ全てのエリアをカバーできます。最初のうちは2級免許でも何ら不自由はないと思いますよ。
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