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春が訪れ日々気温が上がっていく5月。ブラックバスの活性も上がり、釣り人にとっては大きなチャンス到来の時期でもあります。
ただ気になることもさまざま。その一つはやはり「天気」ではないでしょうか。気温が上がるにつれて水温も上がり、ブラックバスの動きが活発化する一方で、雨はその傾向に水を差す可能性もあります。とくに5月、6月と春から初夏に移る時期は梅雨も始まります。雨の影響をますます受けやすくなることでしょう。
そこで今回は、バス釣りにおける「雨の影響」をテーマに、好釣果を得るためのヒントや考え方を見ていきましょう。
雨が降って濁ったら…
ブラックバスの気持ちや行動はどう変わる?
まずブラックバスの習性に対して、雨降りがどのように影響するのかを釣り場の状態の変化とともに考えてみましょう。
まず、湖や野池のような場所であれば、基本的に雨によって水量の増加という現象が起きます。このことは水温、水質(濁り具合など)、あるいは水中の酸素量という面でブラックバスの生態に影響し、晴れの日の釣り場とは異なった状況となることが予想されます。
たとえば雨水が流れ込んだ影響で水が濁った場合には、ブラックバスの視界はさえぎられ、釣り人への警戒心は薄れることでしょう。となると、「雨が降るとブラックバスは釣りやすくなるのか!?」と思いがちですが、ぬか喜びしてはいけません。
ブラックバスの視界がさえぎられるということは、魚から釣り人が見えなくなると同時に、エサや外敵も見えなくなるのです。するとどうでしょう? 食いつかせようと投げたルアーにブラックバスが気づかない可能性すらあるわけです。
ならば、ルアーをアピールさせようと「アピール度の高いルアーを投げればいいんじゃないか?」と考えるかもしれません。もちろんそこにいるブラックバスが元気で空腹なら、すぐにでも飛びついてくるでしょう。でも逆にそれほど空腹でもなく、安全を優先したいと考えるブラックバスだったら…? とりあえず見つかりにくいところに潜んで、身動き一つとらないかもしれません。
この違いはブラックバスの、いわゆる「活性」というものに関わってきます。そしてその活性は雨による水の濁り以外の性質、水中の酸素量や水温が大きく影響していると考えられます。
暑い日の雨はブラックバスにとってまさに「恵みの雨」
雨降りや雨水の流れ込みは、水中に溶け込む「酸素の量」に変化をもたらしブラックバスの動きにも影響を与えます。魚も水中の生き物とはいえ酸素が必要であり、これを水中に溶け込んだ酸素から得ているからです。
たとえば夏のカンカン照りのもとでは、おおよそ水温は上がり水中の酸素の量は減る傾向となります。とくに小さな野池などは、水の流れも少なく水温の上昇も速いためこの影響は大きなものになります。酸素が少なくなればブラックバスは苦しくなり(酸欠状態)、動きも鈍ってしまいます…。
しかしこの状況に対して雨が降れば、水中の酸素量が増えブラックバスも元気に! 夏の高水温を下げてくれる効果も相まって、魚の活性は上がる傾向にあると考えられるので、普段なかなかブラックバスが現れないエリアでもヒットする可能性が高まります。
バス釣り攻略の壁「水温の変化」
一方で雨による影響として最も複雑な要素がもう一つあります。それは「水温変化」です。
先述の「水中の酸素量」の変化についての説明では、暑いなかでの雨降りはバスの活性を上げるといいましたが、必要以上に水温が下がってしまうとブラックバスの活性も結局は下がってしまいます。雨の影響で水温がどれくらい「冷たく」、あるいは「温かく」なるのがいいのか。それは雨の降り方や釣り場の状況によって千差万別で、一概にこうだという説明は難しいものなのです。
これはあくまで私の体験談ですが、春先の釣行でこんなことがありました。
4月の前半ごろ、雨が降った翌日の朝のことですが、日が昇ると一気に気温も上がり朝方から蒸し暑くなる雰囲気がありました。この日は思い切って葦(あし)際にトップウォータールアーを投げ込んでみたのですが、1投目から1尾のバスが「ガブッ!」と食らいついてきました。
それから1~2週間後、また再び雨が降った翌日。打って変わって「また寒くなるのか?」と思えるくらいに肌寒さを感じた朝でした。とはいえ、水の濁り方はほぼ変わらない感じだったので、前回の「ガブッ!」が忘れられず同じようにトップウォーターで攻めてみました。ところが、その日は「ガブッ!」はおろか、水の中に魚がいる気配すら感じられないほどでした…。
同じ季節のたった1~2週間でもこれだけ状況の違いがあります。「雨が降る前までのフィールドはどんな状態だったのか?」「気圧配置の影響で雨自体がどんな雨だったのか?」「その結果どんな状態になったのか…」雨上がりとひと口にいっても、さまざまな要素が絡んでいるので何とも言えないのです。
ただ一つ水温に関して言えるとすれば、ブラックバスが好む「適水温」くらいでしょうか。ブラックバスが好む水温は(個体や地域に違いはあるでしょうが)およそ18℃~27℃といわれています。活動しやすいということは、それだけお腹も減る、そしてルアーを追ってくれやすいということです。水温を意識する際は参考にしてみてください。
梅雨のバス釣りは思ったよりも複雑…
でも、考えながら積極的にチャレンジしよう!
さて、こういった状況を踏まえて、梅雨時期のブラックバス釣りを考えてみましょう。
気温は夏に向けてグングンと上がっていくこの時期に雨となれば、水温もほどよく下がり、酸素の量も増え「ブラックバスの活性なんて爆上がり! やっぱりウハウハ状態じゃないか!」とつい顔がほころんできたりしませんか? しかし残念ながらそうかんたんにいくとは限りません。
ひと言で梅雨といっても、時と場合、場所によって雨の降り方もまったく変わってきます。実際に気象予報士の方のなかには、「西日本と東日本で梅雨の雨の降り方はまったく違う」とおっしゃる方もいるくらい違いがあるのです。
「シトシト」と控えめな雨も長く太陽をさえぎっていれば水温をグッと下げることになり、ブラックバスの活性なんてすぐ下がってしまうことも当たり前にあります。やはり、その時々のフィールドの状況を直前に判断したうえで、「バスの活性」を見極め、攻め方を考えるしかありません。
具体的な方法論にはなり得ませんが、「水の濁り具合」「水中の酸素量」「水温の変化」をキーに、地域の情報やご自身の経験則をもとに総合的に判断してみてください。
そう考えると梅雨は攻略に難しい時期ではあります……。しかしもう一つの理由から、バス釣りにおいてこの時期を逃がす手はありません! というのも、ブラックバスはこの5月から6月にあたる時期が「ポスト・スポーン(産卵直後)」あるいは「アフター・スポーン(産卵後)」というタイミングにあたるからです。
このタイミングは産卵によって体力を使い果たしたブラックバスが体力を回復するため、積極的な捕食に向き始める時期。絶好の釣りのタイミングといわれています。
産卵後というこのタイミングは、魚の活性が上るだろう「雨降り」を、逆に釣りにくい状況に変えてしまうネガティブな可能性もありますが、「雨降り」というハプニングをヒントにさまざまな攻略法を考えてトライすれば、次につながるよい経験となるはず。苦労して1尾を手にすれば、釣ったという出来事以上に大きな意味を得ることができるでしょう。
さて、雨を味方につけて、この時期のバス釣りを積極的にチャレンジできそうでしょうか?
雨が降るとジメジメして、フィールドに行くのもなんだか…という方もいるかもしれませんが、いつもとは違う雨降りの環境は、チャンスとなる可能性があるのです。そう考えれば、梅雨という時期も少し楽しみになってきませんか?
最後に、雨の際は水辺の足下は悪くなり、滑落やスリップなどでケガをする危険性もありますので十分注意してください。とくに川などは増水により水流も強くなるため、ある程度水が引くまで釣り自体を避けるべきです。
安全には十分注意して、さらなるバスフィッシングの楽しみ方を満喫していただければ幸いです!
レポーターREPORTER
40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。
広島、とくに実家の東広島はブラックバス釣りでは「野池天国」と呼ばれる場所。マナーを守って楽しめる釣りを、HEATの執筆を通して追究していきたいと考えている。