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ブラックバスって何をエサとしているの? と考えたとき、まず挙げられるのは小魚でしょう。そして次の候補として、「ザリガニ」と答える人は結構いるのではないでしょうか? 最近「おすすめのルアーは?」といった雑誌やWEB記事、YouTube動画などでも、ザリガニを模したクローワームと呼ばれるものが多く取り上げられていることからも、その傾向はうかがえるところであります。
しかし、そもそも本物のザリガニはどんなふうに生きているのでしょう? クローワームでバスをキャッチしようとするなら、実はこうしたポイントを知っておくことがすごく重要となります。
そこで今回は、ザリガニの生態に関する情報を関して掘り下げ、これらの知識がいかにバス釣りに活かせるかを考えてみたいと思います。
ライフワーク、捕食におけるブラックバスとザリガニの関係
ザリガニは基本的に水中の小魚、ゲンゴロウなどの水生昆虫、水草といったものを食料にする雑食です。実はこの小魚というカテゴリーにはバスの稚魚もいるわけで、ある意味甲殻類を捕食するバスとは「食って食われて」という複雑な関係にあります。つまりは成長して成体となったザリガニが、稚魚やバスの卵をねらい、バスも十分に大きくなった成体は小さなザリガニをねらうという相互関係にあるわけです。
また、ザリガニは脱皮を繰り返すことで成長を続けていきますが、丈夫な殻に覆われたザリガニであっても脱皮直後は殻の組織が柔らかくなってしまうため、成長したザリガニでも大きなエサをねらうビッグバスの捕食対象となる可能性があるわけです。
一方、たとえばバスの産卵期に卵をねらってやってきたザリガニを、巣から排除するためにあえて口を使いにやってくるバスもいます。その意味では、バスはザリガニに対して常に注意を払っている魚であるともいえるでしょう。
環境省のホームページではザリガニの生態に関する情報を入手することができますが、その繁殖期は「ちょうど3月の終わりごろから秋の9月末ごろにかけて」とあります。実はこの時期、ブラックバスの繁殖期ということも、釣り方にひじょうに深く関わってきます。
出典:
環境省ホームページ『どんな生き物? 身近だけど、ヤバイ奴!』
https://www.env.go.jp/nature/amezari_info.html
産卵時期やアフタースポーン、卵からのふ化や成長といった過程を考えると「ブラックバスはどんなザリガニを、どの時期にねらうのか?」という情報に目が止まります。つまりザリガニの卵がふ化する時期とバスのアフタースポーンという時期、この2つが重なる時期は、バスがザリガニをねらう時期として大きなインパクトをもたらす時期であるとも考えられます。
ザリガニの居場所からポイントを考えてみよう
ザリガニは基本的に「流れのない、浅い水辺」に生息しているといわれています。すなわち、野池などでは基本的に浅瀬の岸際ということになります。
また水中の深い部分でも生きていくことは可能ですが、どちらかというと岸辺の浅いところで、ある程度オダなどの障害物が溜まっているようなところに身をひそめる傾向があります。つまりこういった場所、あるいはこの周辺が、ザリガニをねらう捕食生物のエサ場となる可能性が大きくなるわけです。
「じゃあ常にここをねらえばいいのか?」と考えるかもしれませんが、そこは注意が必要です。いくらエサがいるからといって、バスもシャローに出るにはそれなりの条件がそろわないといけないからです。日が昇って水場に光が差し込んでくると、当然バスは深場や日陰に逃げ込んでしまいます。時間的な条件、およびバスが捕食しやすそうな条件をあわせて考えなくてはなりません。
またザリガニとして一番多く確認されるアメリカザリガニは赤、あるいは褐色がかった赤というイメージがあるかと思いますが、幼体時や脱皮の状態によっても色が変わります。エサ場となるポイントの状態なども考えルアーのカラーセレクトを行う必要があります。
個人的には「ハイプレッシャーに強いセレクト」を意識するという意味で、白、透明にスモークが入ったものや黒、茶褐色などのカラーが有効ではないかと考えていますが、緑や黒にラメが入ったものなども多く見かけるカラーです。水の透明度や水底の状態(水草か砂地か、あるいは岩場など)によって有効性の度合が変わることもありますので、総合的に見て「目立つか」「アピールできるか」などといった観点を考えるとよいでしょう。
意外にバラエティーに富んだ動き!?ザリガニの動作
一般的なザリガニのビジュアルイメージとしては、陸に上がった状態が多いかと思います。みなさんが想像するザリガニの姿の多くは、やはり丘の上でのそのそとゆっくり歩く印象ではないでしょうか。しかし意外や意外、ザリガニはわりに複雑な動きを見せます。
通常の姿勢
目の前に外敵を発見したときには両腕のハサミを広げ振り回し、威嚇姿勢を取ります。逆に外敵がいないと感じた場合は両腕を閉じて完全に伏せたような状態でその場にたたずんだり、ゆっくりと移動していたりするわけです。
通常の移動
ザリガニは水底を移動する生き物であり、前に進む場合は丘の上と同じように足を使ってゆっくり移動していきます。
外敵からの逃避行動
ザリガニは敵を察知した際に後方に逃げるのですが、その動作には特徴があり、エビのようにバックスライドして逃げます。陸上では見られない光景で、50cm程度の距離を瞬時にパッと移動したりするのです。
ちなみに私が行きつけの野池で減水時に見た光景ですが、岸辺に近い場所で木の枝などのオダが溜まっているようなところに、いるわいるわ…大勢集まっていました。そこにタン! と足を一歩踏み入れると、その足音だけで一斉にザザッ! と水辺に逃げていく姿はなかなかに不気味(笑)。
クローワーム自体の姿勢は、尻尾を下げ両腕を広げた、いわゆる「威嚇姿勢」がバスにアピールすると紹介されています。水中でバスに「ザリガニがいる」と知らせる場合、この姿勢は確かに重要です。ただし、水の透明度やバスの活性などによって「アピールが過ぎるな」と感じたときに、こうした平常時の姿勢を意識することもポイントとなり得るでしょう。
またクローワームの使用方法として水底のズル引きなどはよく紹介されていますが、そもそもフックに尻尾側から装着したクローワームを水底でズル引きするというのは、実際の生態からすると実は違和感のある動きだといえます。
ここで注意していただきたいのは、「それでバスが釣れるかどうか」は別であるということです。ただ、バス釣りのアプローチとして実際のザリガニを意識したい場合には、注意すべきポイントとなります。
たとえばザリガニの動きを意識して水底を引くとなると、ザリガニはそれほど頻繁にバックスライドを繰り返すわけではないので、ワームを引くタイミングを考え頻度をかなり低めにする必要があるでしょう。
バスから見れば、ザリガニが止まっている状態のときに食らいついてくるわけですから、移動時にバスに対して「エサがあるぞ!」ということをアピールし、そのあとしっかりと止めて、バスに食わせるタイミングを与えてあげることが重要となります。
これだけは注意!安易に考えてはいけないザリガニのこと
いかがでしょう? バス釣りはいかにルアー(ワーム)をブラックバスのエサに似せるか、そして食わせるかがキモとなる釣りです。リアルな演出のためには、エサとなるものの「生態を知る」ということが大きなアドバンテージになるのは間違いありません。
バスが小魚を追うほど活性が高くないとき、あるいはプレッシャーの高いフィールドでは、バスはエサをねらう視線が下に、また、シェードや物陰に身を潜めます。その意味で水底に生息するザリガニはベイトフィッシュになり得るわけです。これを踏まえ「バスはどのようにザリガニをねらうのか」を考えていくことはひじょうに有効といえるでしょう。
ただし、たとえば「行きつけのフィールドにはザリガニがいないけど、どうもプレッシャーが高くて、ザリガニがバスのエサになれば釣りやすくなりそうだ…」なんて安易に考えて、ザリガニを放流するなんてことは絶対にやめてください!!
日本で見られるザリガニのほとんどは、戦後にアメリカから輸入されたアメリカザリガニ。もちろん外来種です。とくに近年はその強い生命力、繁殖力で異常増加をたどるケースが多く報じられており、「特定外来種」に指定される可能性すら出ています。
生態の研究はあくまで実際にザリガニが住んでいる場所で。マナーを守って楽しい釣りを心がけましょう。
出典:
環境庁ホームページ『何が問題なの? 水草、全部切る!?』
https://www.env.go.jp/nature/amezari_mondai.html
レポーターREPORTER
40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。
広島、とくに実家の東広島はブラックバス釣りでは「野池天国」と呼ばれる場所。マナーを守って楽しめる釣りを、HEATの執筆を通して追究していきたいと考えている。