野池攻略の重要なファクター「インレット」を意識して
ポイントを探るヒントを得よう!

たとえば初めて訪れた野池でバス釣りをするとき、みなさんはどのような観点でポイントを選んでいきますか? よくフィールドで釣り人を見かけた際に思うのは、「この人はどんな思いで、そのポイントを攻めているだろうか?」ということ。

初めての場所は自分にとって情報が少なく実績もないので、「誰かが釣ったと思われる形跡があるから、自分もそこに立ってルアーをキャストしてみた」といったことがあると思います。また、取り敢えず目についたルアーをチョイスしてみたり、何となく手に取ったルアーを投げたりしていませんか?
奥が深く、釣果を上げるにはそれなりの戦略も必要であるバス釣り。「なぜそのポイントで、そのルアーで釣るのか?」といった根拠が曖昧なまま釣りをしている方は、実は多いのではないかと思われます。

私の経験上、まず考えるべきは「インレット」の場所を知るということが重要なポイントではないかと感じます。釣りのノウハウとしては方々で同様の意見が述べられていますが、そもそも「インレット」とは? そして「なぜここに魚があつまると考えられるのか?」といったことは、ポイントを探すうえで大切な要因ではないでしょうか?
今回はバス釣りのポイントを探るヒントを、「インレット」というキーワードから考えてみたいと思います。

「インレット」と魚の居場所の関係

01_ 写真(2)

「インレット」とは「水の流れ込み」のことをいいます。野池には大抵「インレット」と「アウトレット」(流れ出し)があります。なぜこれらがあるのか? それは日本の野池の大半が農地と関連して存在していることに理由があります。

ほとんどの野池は農地より高さが高いところに位置し、農業に必要な水を溜め、必要に応じて農地に水を供給するようにできています。そのため、野池には池に新たな水を流れ込ませる「インレット」、そして水を外に出す「アウトレット」を設けているわけです。また、わりと平地にある野池は、どちらかというと水はけが悪く水が溜まりやすいため、水が流れやすい水路を作って川などの水場に逃がすような仕組みとなっているわけです。

さてこの「インレット」とバスの居場所には、どのような関係があるのでしょうか?
「インレット」は基本的に野池のなかでも一番新鮮な水が流れ込んでくる場所です。また流れ込んでくるという「水の動き」があるため、水温が安定しやすい場所でもあります。さらに、バス以外の魚や生き物もこの場所に好んであつまる傾向があるため、バスもエサを求めて水の動きのある場所にあつまります。
こうした傾向から、バスの居場所を探るポイントとして「インレット」はかなり有力な手掛かりであるといえるわけです。

こんなふうに存在する「インレット」

次にこの「インレット」、野池ではどのような場所なのかを見ていきましょう。これは野池の立地条件によって異なります。

まず人工的に作られた野池は、比較的平地に近い場所のなかにポンと存在するケースが多いように見受けられます。
田畑などに向けて水を供給するような貯水池であったり、水害対策のためのものであったりするようです。そのため、意図した流れで川や田畑に水を流すという構造となっているものがほとんどです。その意味で「インレット」「アウトレット」ともに、意図したところに水を流すようコンクリートの水路が設置されていたり、土管が埋められていたりという感じで、明確にその場所を確認することができます。

02_ 写真(3)人工的に作られた「インレット」
わりと平地にある野池では水が流入する箇所が意図的に設けられています。写真のような土管タイプやコンクリートのU字水路型などがあります。水はこの水路を通って池にピンポイントで水が流れ込んできます。そのため水の落下地点に当たる水底はほかの底面と違ってえぐられた格好となっています

一方、自然にできた野池における「インレット」は若干わかりにくいところにあります。
自然に野池ができるということは、水の流れも天然のものです。平地で安定して水が流れ込む場所ができることはあまりなく、基本的には山の起伏の途中、あるいはふもとに存在し、「山の上から水が流れ落ちるところで、たまたま水が溜まりやすいところに野池ができた」というのがほとんどでしょう。つまり、天然の野池における「インレット」は、山側から水が流れ込む部分が該当するわけです。
山間部や起伏のある場所にある野池の「インレット」は、ちょうど川の流れのように多くの水が池に流入し、それだけ逆に多くの水が「アウトレット」より流れ出します。

03_ 写真(4) 自然にできた「インレット」
見た目にはっきりと「ここから水が流れている」という位置がわかりませんが、葦の近辺は水が流れ込む自然の「インレット」になっています。実際このあたりを歩いてみると地面がぬかるんでおり、近辺から池に水が流入していることがわかります

そう考えると、地形にもよりますが大体のケースにおいて野池の岸際の標高が高い側に「インレット」、その対岸近辺に「アウトレット」が存在するといえるわけです。
ふもと付近の野池では、標高が高い場所にある野池とは異なり水の流れが少ないため、チョロチョロと水が流れ込んでいるところに葦が生えたような場所があり、周辺はジメジメして地面がぬかるんでいたりすることもあります。

04_ 写真(5)「アウトレット」
インレットの対岸にある「アウトレット」。最近は雨などで岸が崩れないようにコンクリートで護岸されているところも多くあります

こうした位置関係にある場合、バスの居場所は明確に違いが出ると考えてよいでしょう。実際、護岸されている「アウトレット」側は、堅いコンクリート質でバスも好んで集まりやすいのですが、「インレット」ほどの活性を望めません。そのうえ、釣り場としても足下がよい分さまざまなアングラーが釣りをおこなっている可能性も高く、プレッシャーが高い傾向にあります。
このような「アウトレット」側で「釣れねぇなぁ…」とぼやいている様子の釣り人を尻目に、対岸の「インレット」側で爆釣! なんて話もよく聞きます…(笑)。

「インレット」をどう攻めるか?

では、「ここが『インレット』だ!」という場所を特定できたら、次にどのようなアプローチでバスをねらっていくかを考えてみましょう。

人工「インレット」は常に決まったところに水が落ちていくため、水が落ちた真下の水底は普通の地形とは違った格好となります。具体的には若干底面が掘られ深くなっていたり、水草の生え方も少々変わっていたりします。その意味で、ここに魚があつまる要因の一つとして「水底の地形」が挙げられます(そのほか、水温や酸素量、エサといった複合的な要素もありますが)。つまり、水底を意識した釣りが攻め方の一つというわけです。
底に沈むワーム、とくにストレートワームやクロー・シュリンプ系などが有効でしょう。これらを使用した控えめのアクションで誘うといった具合です。

一方、自然の「インレット」の場合、基本的に水が流れ込む部分はシャロー(浅瀬)になっています。ある程度このシャローエリアが広い場合には、広範囲をねらえるミノー、スピナーベイトが有効でしょう。また、このような場所では水もきれいなので、それほどアピールの強くないナチュラル系カラーのルアーが有効であると思われます。

さらに、オダや葦(アシ)などのストラクチャーがあるのであれば、ピンポイントでねらえるワームやラバージグなどもバスを誘い出すのに向いています。とくに流れ込み部分に葦が生えているようなエリアでは、葦際の「ジグ落とし」はぜひやっておきたい攻めの一つです。

05_ 写真(6)「インレット」で使えるルアー
シャローの広いエリアではクランクベイト、ミノー、スピナーベイトなどの広く探れるハードルアーが効果的です。一方、葦際や日陰などにピンポイントで落とす場合にはワームを活用するのがよいでしょう。とくにアピール度の高いラバージグ、スモラバと組み合わせて使用するのをおススメします

「インレット」攻略の注意

ここまで、ねらうべき重要なポイントとして「インレット」について語ってきましたが、もちろんいつもここにバスがいるとは限りません。バスは淡水魚としてはひじょうに泳ぐスピードが速く、また回遊範囲が広いので、条件によってはいないこともあります。当然「このインレット、この前は爆釣だった」というポイントでまさかのボウズ……という可能性は大いにあるのです。
また、さすがに「インレット」近くのポイントといえど、日中に完全に直射日光にさらされるような場所では、まずバスの姿を見つけることは難しいでしょう。ポイントの近くに日陰があれば、そちらの周辺をピンポイントでねらってみるというのも一つの手です。

時間の経過で変わる、フィールドの状況に影響を受ける部分もあるかと思います。釣りをしながらも「今何時ごろ?」「気温は随分上がっているかな? 水温は?」「太陽があのへんだと、ここまで影がなくなるのか…」などと周辺の状況を意識しながら、ねらうポイントを選択するのがよいでしょう。

06_ 写真(7)「インレット」近辺 葦周辺の様子
少しわかりにくいかもしれませんが、水面に黒い点のようなものが見られます。これらは全部魚です。ブルーギルやブラックバスの稚魚は晴れ間で日が差すときでもわりにこういった場所をウロウロしていますが、良型の姿は見えません。ちなみに写真手前は日陰になっており、エサがあれば(=ベイトがいれば)大きめのバスがビュッ! と飛ぶように泳いで現れ、さらっていきます

一方、護岸されている「アウトレット」側に対し、自然の「インレット」周辺は工事をされていない場合が多くあります。こういった場所はかなり足場が悪く、年中地面がぬかるんでいるので長靴は必須といえるでしょう。場所によっては足が抜けなくなるほどぬかるんでいるところもあります。
また足場が狭くバランスが悪いところも多いので、危険な場所には絶対に立ち入らないよう十分注意しましょう。
(もちろん、そもそも釣り禁止の場所での釣りはダメですよ)

とくに初めて入るフィールドは、たくさんのストラクチャーがあったり、イイ感じの日陰があったり、護岸があったり…と、さまざまなポイントに目移りしてしまいがちです。野池に訪れた際に「ねらうポイント」の優先順位を決めて探っていくことは上達の秘訣。そしてこの順序に「インレット」を含めるのは重要なポイントです。
インレットを意識しねらうポイントを探していくことは、釣りのレベルアップを果たす大きな一歩となることでしょう。

07_ 写真(8)

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レポーターREPORTER

黒野 でみを
プロフィール:黒野 でみを
40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。
広島、とくに実家の東広島はブラックバス釣りでは「野池天国」と呼ばれる場所。マナーを守って楽しめる釣りを、HEATの執筆を通して追究していきたいと考えている。