INDEX
古来から日本の食文化を支えるだけでなく、“おめでたい”ものとして宴席を賑わし続けてきた魚といえば、マダイをおいてほかにない。そんな魚の王様を「ルアーで攻略する手段」として生み出されたタイラバは、まだまだ歴史が浅いものの、すっかり人気ジャンルの釣りとして定着した。
タイラバといえば、元来は金属製のヘッドにラバースカートを組み合わせるだけのシンプルな構造だったが、いまやネクタイといったパーツやトレーラーと呼ばれるソフトベイトなどのカスタムパーツが充実。こだわりの詰まった“自分だけのオリジナルタイラバ”で釣りができる点も、愛好家を惹きつける大きな魅力といえるだろう。
そしてこの春、ハヤブサから入魂の新製品「フリースライド カスタムシリコンネクタイ バルキーカーリー」が登場する。1年半もの開発期間を経てリリースに至ったというこのネクタイは、いったいなにがスゴいのか? 開発者の市橋氏に話を聞いた。
2倍の厚みで水押し強化
大ダイを釣り分けるハイアピールネクタイ
2022年、ハヤブサのタイラバブランド「フリースライド」に新たに仲間入りする「カスタムネクタイ バルキーカーリー」。ネクタイだけに、TPOに応じてセレクトできる2種のバリエーション(ダブル・シングル)がラインナップされているが、それぞれの詳細は当記事の後半で紹介するとして、まずは「バルキーカーリーとはなんぞや?」という部分について話をしていこう。
市橋さん曰く「とにかく高活性で、やる気のある魚を効率よく釣っていくためのネクタイを目指して開発しました」とのこと。潮の流れやベイトの群れの中など、タイラバの存在感が薄まってしまう状況下でも、確実に見つけさせ、惹きつけ、追わせるだけのアピール力を備えている、ズバリ「パイロットルアー的なネクタイ」という認識でOK。そしてそのアピール力を支えるのが、商品名にある通り“バルキー”なシリコンシートだ。
「通常の約2倍にあたる0.6mmの極厚シリコンシートが採用されているのが、ほかにない最大の特長です。これが水を力強くグリップし、バタバタとはためくことで強烈な水押しを発生させます」とのことで、こうして生み出される“強波動アクション”が大ダイを選んで釣るのに効果てきめんらしい。
論より証拠! という人は、YouTube公式チャンネルに最新の動画がアップされているので観てほしい。
【タイラバ】ロクマル連発‼ノッコミには厚みが効く?鹿児島・錦江湾ノッコミタイラバ
Youtube「HAYABUSA公式チャンネル」
張りがハリがらみを軽減!?
極厚シートの思わぬ恩恵
バルキーなシートがもたらす恩恵はアピール力だけではない。厚みによって生じる独自の張りが、ハリ絡みを劇的に改善することにも注目だ。
どういうことかというと、タイラバは構造上、またフォールと巻き上げを繰り返すという釣りの性格上、ハリとそのほかのパーツが絡んでしまいやすい。しかも、絡んだところで巻き感にほとんど変化がないため、そうとは気づかず回収してガッカリすることもしばしば。得意げにネクタイやワームで武装してみても、動いていなければまったく意味がないのだ。
「バルキーカーリーならハリ絡みの不安が少ない分、釣りに集中できます。一定のリズムで巻き上げることや、小さなアタリを見逃さないことがキモとなる釣りでは、このメリットは計り知れません」と市橋さん。ひと流しを決して無駄にできないディープタイラバでは、この恩恵をなおさら大きく感じることだろう。このトラブルレスな性能は、「初心者からベテランまで問題なく信頼して使えるものにしたい」という市橋さんの思いがもっとも色濃く現れている部分かもしれない。
分厚いのにハイレスポンス
デッドスロー対応でシチュエーションを選ばない
ところで「シートが厚くなるにつれてレスポンスが悪くなるのでは?」と思った人がいるかもしれない。市橋さんによると、「くびれなどの形状を工夫し、分厚いながらも従来通りのアクションレスポンスを実現しました」とのこと。「形状によってはまったく動かないものもあり苦戦しましたが、実に1年半に及ぶ試行錯誤の末、初期プロトとはまったく異なる現在の姿に落ち着きました(笑)」というのだから、肝煎り(きもいり)具合が半端ではない。
2種の波動で寄せて食わせるダブルカーリーモデル
冒頭で触れた通り、バルキーカーリーにはTPOに応じて選べる2種のバリエーションがラインナップされている。そう、ネクタイだけにTPOが肝心なのだ。
ひとつ目はパイロットルアーとしての資質を最大限に引き出した「バルキーカーリーダブル」。読んで字のごとく2本のテールが強烈にアピールするわけだが、キモとなるのはそれぞれ大小異なる波動を発生させるということ。言うなれば「寄せる波動」と「食わせの波動」の同時放射で、「遠くからカッ飛んできたタイがそのままうっかり食ってしまう」というストーリーを体現している。釣り場に着いてまず1投目に選ぶならこのネクタイ。バルキーカーリーダブルで1日の運勢を占ってみよう。
アピール据え置きでボリュームダウン
堅実にねらうならシングルカーリーモデル
そしてふたつ目は、ダブルカーリーモデルにも遜色ない集魚力をもちつつ、約半分のボリュームで警戒心を掻い潜る(かいくぐる)ことが可能な「バルキーカーリーシングル」だ。
「活性が落ちてきたかな? と感じたら、バルキーカーリーシングルの出番です」と市橋さん。また「トラブルレスな性能やアクションの破綻しにくさにも磨きがかかっているので、より常用しやすいアイテムです」とのこと。道具をそろえている最中の初心者にもってこいのバーサタイルな一品だ。
ちなみにいずれのモデルもカラーバリエーションは5色のみと、従来のものとは比較にならないほど少ない。これには「全国のフィールドで釣れる色を徹底的にリサーチし、これさえ持っておけばOKという選びやすい5色に絞りました」と市橋さん。ついついあれこれ買いすぎてしまうユーザーにとっては、とても嬉しい計らいといえる。
誰にでもエントリーしやすく、極めようと思えばとんでもなく奥が深い釣りとして人気のタイラバ。釣り人にとって、魚の王様が今日こんなにも身近に感じられるのは、この釣りへの理解度と道具の進化のおかげと言っていいだろう。
今回発売された「フリースライド カスタムネクタイ バルキーカーリー」は、初心者にとっては「コレさえあればひとまずOK」という安心感を、また竿頭を目指すベテランにとっては、状況に対応する新たな選択を与えてくれること間違いなしだ。ぜひ一度手に取り、夢の大ダイに挑んでほしい。