今から知りたい!エギング STEP UP 季節によって成長と行動が変わる!?
アオリイカの生態を知って釣果アップ!

前回はアタリの取り方について解説しました。今回は、季節別のアオリイカの習性についてです。

01_ 泳ぐアオリイカ

今や年間を通じてねらうことが多くなったアオリイカ。各地でエギンガーからの好釣果を日々目にします。しかし、いつでもカンタンに釣れるわけではありません…。エキスパートたちは季節ごとに釣り方や戦略を変えて挑んでいるのです。
「アオリイカを釣りたければ、アオリイカのことを知れ!」というわけで、アオリイカの生態や習性をもっと知って、楽しく釣果を伸ばしていきましょう!

1.まずはアオリイカの生態について知ろう!!

ツツイカ目ヤリイカ科アオリイカ属に分類される「アオリイカ」は、一般的に北海道南部以南の各地に生息しているといわれており、国内の幅広い地域で釣りのターゲットとして人気です。

02_ 泳ぐアオリイカ(縦)

暖かい海を好む傾向があり、主に日本海側では海水温が上がり始める春から対馬海流(暖流)に乗って、産卵を繰り返しながら北上。そして、冬が近づき海水温が下がり始めると、徐々に南下するそうです。一方、主に太平洋側では比較的東西(や南北)の移動は大きくなく、沿岸の海水温が上がれば岸寄りに、海水温が下がると水温の安定する深場へと移動するそうです。その際の海水温の目安は15℃。(関西・太平洋側で釣りをする私)個人的には、16℃以上(諸説あります)になると岸近くの手が届く範囲(釣りができる範囲)に接岸してくると考えています。そして、活発に行動するのは20℃前後といわれているので、そのタイミングが最も釣りやすい時期といえます。
年によって、そして地域によって水温の変動があるので具体的なことは言えませんが、前の年やこれまでの経験や記憶、地元釣具店の情報などを頼りに釣り始めるのがよいでしょう。

アオリイカの寿命は1年~1年半程度です。その短い期間に「孵化→成長→産卵」といった時間が流れるので、アオリイカ自体の成長はかなり早いものといえます。好奇心が旺盛で捕食活動が盛んな生物です。

前置きが長くなりましたが、アオリイカの生態や習性を知ることで、季節ごとのアオリイカのねらい方が変わってきます。アオリイカのことを知り、季節に合わせて釣果アップを目指しましょう!

03_ タモですくわれるアオリイカ

2.季節ごとにアオリイカの活動は異なる!?

04_ 竿がしなる

一般的に1年を通してアオリイカをねらいやすい時期や季節は2回あります。
地域によって若干差がありますが、活性が高く好奇心旺盛な小イカが多く釣れる秋。そして、数は釣れないものの大型が釣れる春です。この2回のタイミングが比較的、岸から届く範囲で釣りができる(イカが接岸している)季節です。

しかしながら近年は、一般的にいわれる産卵時期の春だけではなく、初夏~初秋でも産卵をする個体もおり、小イカが混ざって釣れることもあるので、先述した時期はあくまで目安ととらえてください。

(1)春

05_ メスのイカ(左向き)

数は釣れないものの大型のサイズが釣れる春イカ(親イカ)は、産卵を控えている個体が多いのが特徴。性格的に神経質で気難しい時期と言えるでしょう。
エサを食べるよりも子孫を残すための行動(産卵)を意識しているので、釣りにくいとされているのはこのためです。

成長した春イカを攻略する基本は、底を中心に釣り続けること。
産卵を意識しているため浅場の藻の生い茂る場所を好み、どちらかというと、中層に浮遊しているというよりは底付近を回遊することが多いのです。
エギのシャクリも秋とは違い、大きくゆっくりとしたシャクリを数回(2~4回程度)行い底まで沈めたのち、ステイ(底で止める)してアタリを待つといったアクションを繰り返します。

(2)夏

06_ 夏イカ

最近では、夏に釣れるイカを「夏イカ」と呼んでおり、浅場(シャロー)で釣れることが多く引きが強いのが魅力的です。春に釣れる親イカの残りもいれば、秋に釣れるような小イカも混じるといった具合に、釣れるサイズがさまざまなのがこの時期の特徴です。

夏イカは春イカのように神経質な性格ではなく、浅場でエサを活発に追いかけている個体が多いので、エギをキャストして直ぐに反応することも珍しくありません。
また、高水温を好むアオリイカはこの時期が最も元気な時期で、小さな個体でも引きが強いのが魅力です。

(3)秋

秋はイカの個体数が最も多く、比較的かんたんに釣れるとされている季節。初心者の方が始めやすい時期です。生まれたイカは好奇心が旺盛で、成長するために活発にエサ(ベイト)を捕食します。

07_ 常夜灯

しかしながら、秋が深まるとその行動も徐々に変化していきます。
秋イカ(小イカ)は成長とともにサイズはよくなりますが、個体数が減っていきます。もちろん、いろいろと学習するため賢くなり、絶対数が少なくなると同時に警戒心も強くなったアオリイカは釣りにくくなるのです。
また、気温が下がり海の中の水温も下がってくる季節において、高水温を好むアオリイカは必然的に活動が鈍くなってきます。エサを追いかけるには体力がいりますが、活発に動けなくなりつつあるこの時期、夜行性(※諸説あります)の強いアオリイカにとっては日中にエサを追うのではなく、夕方から夜にかけて行動する傾向が強まり、また、漁港周辺の常夜灯などに集まるベイトを夜ねらった方が、効率よく捕食できるのです。日中はできるだけ体力を温存し底付近に隠れ、日暮れとともに浅瀬でエサを追いかけるというメリハリの利いた活動へと変わっていくのです。

08_ シャクリ(右向き)

一般的に「新子(しんこ)」と呼ばれる小型の秋イカを攻略する基本は、幅広く探ること。
なぜなら、秋イカは外敵(フィッシュイーター)から襲われることが多いため障害物付近に隠れていたり、エサを求めて水面近くを回遊したりと、いろいろな場所にいるからです。
エギのシャクリは細かく速いシャクリを複数回(4~6回程度)行ったり、大きなアクションでエギを跳ね上げさせたりと、イカの好奇心をくすぐる、さまざまなアクションに効果があります。また、小型が多い時期でも底付近には成長の早い、やや大きめのサイズがいることもあるので、底付近も丁寧に探りましょう。

(4)冬

09_ 冬の堤防(曇天)

アオリイカにとって最も厳しい季節が冬です。エサ(ベイト)を捕食するというよりは、自身の身を守るための行動をとります。
かんたんに説明すると、人間が冬場に寒空の下、半袖で行動するようなものです(笑)。高水温を好むアオリイカにとって、低水温の時期は死と隣り合わせになるため、少しでも水温の高く安定している場所へ移動し、春までじっと耐えることになります。

とはいえ、岸近くでも水温の高い場所や海水温の高い南国であれば、冬場でもエサ(ベイト)を追いかけているので、ねらうチャンスはあります。

3.季節だけじゃないアオリイカの習性
潮の動きも重要なポイント

10_ 吹き上がる潮

先述したように、アオリイカは好奇心旺盛で活発にエサを捕食する習性があります。しかしながら、人間と同じように空腹のタイミング(捕食タイム)と満腹のタイミング(反応しない)があります。

一般的に釣り人の間では「潮が動いていないと釣れない…」とよく言われます。確かに私自身、潮の動きが少ない場所や動かない場所では、なかなか釣果に結びつかないことが多い気がします。一方で、潮が動く場所にはアオリイカのエサとなる小魚(ベイト)などが多く集まるため、必然的にお腹を空かしたアオリイカが寄ってきやすいようです。「潮が動いているタイミング=エサを活発に捕食する(しやすい)タイミング」ととらえることができるので、潮の動きが釣果のカギとなるワケです。
ですので、釣行前には地図アプリなど地形を確認できる術(すべ)を活用し、事前に釣行場所を選定しておくことが大切です。基本的に、入江のような湾内では潮が動くことが少ないので、岬や堤防の先端など、潮の動きがありそうな場所を選ぶことで、アオリイカに出会う確率もアップします。

11_ 岬風景

そして、もし潮の動きが分かりづらい場合は、まず目で見て分かりやすい「潮目」を探しましょう。潮目とは、異なる流れがぶつかってできるヨレや潮の境目です。プランクトンが巻き上げられたり滞留するため魚が集まりやすく、また酸素も豊富。地形とは違った海中の変化といえます。潮目が出ている場所は、ほかと違って海面につるつるした筋ができていることが多いので、比較的発見しやすいですよ。

12_ 潮目

今回の重要ワンポイント

  • ●アオリイカを釣る前に生態について知ろう!
  • ●成長と水温で行動が異なる。季節を意識しよう!
  • ●潮の動きも大切! 釣行前は下調べ!

 

13_ アオリイカ釣果

6回目の今回は、季節別のアオリイカの習性について解説しました。
アオリイカの生態を理解することで、時期や場所に合わせたねらい方、攻め方をすることができます。また、釣行前の下調べをすることで見逃しがちだったポイントや、そこに潜むアオリイカに出会えるかもしれません。
釣り道具の準備だけでなく知識の面でもひと手間掛けて、釣果アップを目指してくださいね!!

次回は、「エギのカラー選択」について。ぜひ引き続き、「今から知りたい!エギング STEP UP」にお付き合いください!

 

出典:
富所潤著 (2017) 『イカ先生のアオリイカ学 これで釣りが100倍楽しくなる!』 成山堂書店.

 

レポーターREPORTER

小南 勇気
プロフィール:小南 勇気
3歳のころから父親に海釣りに連れていかれ、気が付けば釣りに夢中に。中学生になると、自らの足で近所の野池や海に行くようになった。好きな釣りはショアのソルトルアー(とくにエギングとライトゲーム)。また、釣り以外にもアウトドア好きで、冬はスノーボード、夏はキャンプと根っからのソトアソビスト。行動力とフットワークの軽さは社内一のはず?(笑)
現在は釣具メーカー・ハヤブサにて開発課メンバーとして勤務し、日夜商品開発に奮闘中。