釣魚御用達!「釣り餌レストラン」 All About Fishing Bait 【第11回のお品書き】甲殻類系のエサ その5
グレもイシダイもガシラも大好物
見た目最悪? 味は抜群! 絶品フナムシ【閲覧注意!】

グレもイシダイもガシラも大好物 見た目最悪? 味は抜群! 絶品フナムシ【閲覧注意!】

「釣り餌レストラン」第11回のメニューはフナムシだ。海にいるゴキブリみたい!? いえいえ、見た目はよろしくないが実は魚たちにとっては超グルメ! メチャ旨のごちそうなので、特に磯の魚たち、グレやイシダイの大好物である。釣りエサとして手にするには抵抗がある人も多いと思うが慣れてしまえば、どうってことない!?
※本文にはフナムシのアップ画像があります。苦手な方はご注意ください。

エサ持ち抜群! ガシラがロケットになる魔味

南紀のとある渡船店の待合所。そこに数尾のガシラが飼育された水槽があった。釣りを終えて帰ってきたら、ちょうどガシラのお食事タイム。手を握りしめて水槽の前にやってきた船長が、水槽の上でパッと手を開くと底にへばり付いていたガシラたちが一斉に急上昇、まるでロケット打ち上げのように、その物体をわれ先にと奪取する。そのエサがフナムシだったのだ。
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フナムシ
フナムシカゴ
フナムシ返し
紀州では古くからポピュラーなフナムシ。独特のフナムシカゴで釣り場に持ち込む。カゴの開口部内側にはフナムシが逃げ出せないようにフナムシ返しが付いている

紀州、すなわち和歌山県では古くから磯釣り、フカセ釣りのエサとして人気がある。特に夏から秋、磯の周辺にエサ取りが多く、エビ類やオキアミのエサでは釣りにならないときに重宝されるのだ。同じ甲殻類でもカニのように甲羅が硬くないフナムシだがオキアミにくらべると、かなりエサ持ちがよい。さらに水槽のガシラの例でも分かるように、フナムシはエサ持ちがよいだけでなく、いろいろな魚たちが狂喜する魔味を備えているのだ。

元気なまま撒くと海面を泳いで戻ってきてしまう……

紀州でフナムシを用いて主に狙うのはグレとイシダイだ。
フナムシで釣れるグレは良型、イシダイもサンバソウクラスから底物タックルでねらうような立派なサイズまで、フカセ釣り仕掛をひったくる。水温が高い時期、グレもイシダイも元気いっぱい、磯竿が根元からひん曲がる。たまらない磯釣りのだいご味だ。

フナムシでのフカセ釣りはマキエが欠かせない。独特のフナムシカゴに2kg、3kgと大量入れたフナムシを磯に持ち込んで、数匹ずつを軽く握って気絶させては磯際に撒き続ける。元気なままフナムシを海面に投入すると、奴らは泳いで磯の上に戻ってきてしまう。

フナムシ
フナムシ
フナムシ
フナムシをマキエにする場合は数尾を軽く握って気絶させてから。ハリにはオキアミやエビを刺す場合と同様、通し刺しにする。甲羅部分を外側にするとエサ持ちがよい

このようにマキエを続けているとグレにしてもイシダイにしても、徐々に良型が姿を現すようになる。ある夏、和歌山県南部(みなべ)の沖磯でフナムシを撒き続けていると、磯際ギリギリ、下のほうにイシダイの姿が確認できた。かなりの大型のようである。ハリにフナムシを刺して静かに投入すると、仕掛がなじんだ瞬間、一気に竿までひったくる激しいアタリ。必死で竿を立て、その引きに数秒は耐えただろうか? しかし、無念のハリス切れ。このイシダイ、デカかったなあ……。

グレ
尾長グレ
グレはフナムシが大好き! 水温が高い季節は特に尾長グレが元気に食ってくる
イシダイ
フナムシはイシダイにも有効。フナムシを撒くとイシダイが狂ったように浮いてくる。写真のようなサンバソウクラスはもちろん、縞の消えかかった良型まで!

オキアミをエサに普通にフカセ釣りをしているときでも、エサ取りに手を焼いて釣果がないときは、サシエだけでもかまわない。磯の上を這っているフナムシを見つけたら、何とか捕獲してハリに刺す。それまでエサを取られるばかりだったのが、フナムシを刺したとたんにグレがハリ掛かり! 30cm足りずの尾長だったが嬉しかったなあ……。

大量購入が難しい近年はサシエだけの使用を考えよう

昔、和歌山市あたりの釣具店でフナムシは大量に手に入った。1kg数千円と高価だったがマキエ用を充分に確保することができた。しかし近年、サシエに使用する分程度なら大丈夫だが、常時、大量に入荷されることはまれ。

とにかくサシエだけでもよいので試してみてほしい。フカセのグレやイシダイだけでなく、紀州釣りや落とし込みのチヌ、穴釣りのガシラなどにも有効だ。釣り場にはハエたたき1本持参すれば採取も楽。ペシッと軽く叩いて動きを
止めてからハリに刺そう!