サラリーマン必見??
都市型の釣り=アーバンフィッシングのススメ
No.6 ストリートフィッシングの本場ヨーロッパで狙うアーバンモンスター “パイク”

都市型の釣り=アーバンフィッシングと題して、これまで都市部のフィールドを気ままに釣らせていただきましたが、そもそもなぜ僕がこんなにもこの釣りにこだわるのか? を説明していませんでした…。
今回は自分の今の原点ともいえるアーバンフィッシング、またの名をストリートフィッシングについて書かせていただきたいと思います。

アーバン=ストリート、どこでも楽しめる都市型の釣り

僕にとってのアーバンフィッシングの始まりはイギリスはロンドンを流れる運河での釣り、もう10年以上前に遡ります。後にフランスの友人に「ショータ! それはわれわれと同じストリートフィッシングってやつだ!」と言われたスタイルで、ターゲットはヨーロッパの水辺の暴君として知られるノーザン・パイク。この魚との出会いがアーバンフィッシングとの出会いでした。そしてこのときに見たものや得た経験が、そのまま今の釣りにも繋がっているといっても過言ではないでしょう。

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ロンドンの街中でキャッチした90アップ

モンゴルやタイ王国など、ときどき海外の釣りに関する記事も書かせていただいていますが、ロンドンのパイクフィッシングはぜひともアーバンフィッシングとしてご紹介させて欲しかった。何故なら、ある意味サラリーマンフィッシングの最高峰(?)だと思うからです。ピンポイントでイギリスとはいかなくても、きっとHEATの読者様のなかに一人ぐらいはヨーロッパにときどき出張に行っているなんて方がいるはず! ちょっと人目が気になってキャストが決まらないぐらいの街中の水辺にも彼らは潜んでいます。いつもの出張がちょっとした冒険になってしまうような出会いが待っていたりして。

都会に暮らし、すっかり鈍ったあの感覚を呼び起こしてくれた釣り

僕がイギリスで釣りを始めたころは、ロンドンの街中でルアー釣りをする人なんてほとんどいませんでした。もちろん情報も少なくて、唯一見つけたのは僕が師匠と呼んでいるElectric Eel Shockというバンドのボーカリスト、森本さんのブログ記事。日本に住む幼じみがちょうど釣具も扱うアウトドアショップで働き始めたこともあり、実家にあった道具とパイク向きなルアーを適当にチョイスしてもらい、ロンドンに送ってもらったのがスタート。イギリスはフライフィッシングが盛んなこともあってか、街の釣具屋で買えるルアーは正直心もとないものばかりでした。

じきにツアーでヨーロッパを訪れた森本さんとも釣りに行くようになり、日を追うごとに道具もそろってきて、とにかく新しい魚と新しい釣りにのめり込んでいく生活。仕事へ行く前に乗り捨て式のレンタルサイクルで運河へと釣りに行き、竿を片手に職場へ。そして仕事が終わると、そのまま22時ぐらいまで薄明るいロンドンの水辺を開拓する日々でした。今思い出しても、あんなに釣りに没頭したのはきっと小学生~中学生のとき以来ではないかと感じます。毎日のように繰り返すトライ&エラー、そして新しいエリアをどんどん開拓することでしか得られない経験を積み重ねているうちにスタイルが固まっていきました。それがまさに今のアーバンフィッシングだと思うのです。

02_EES森本
EES森本さん。最後に一緒にイギリスで釣りをした2014年に釣り上げた、メーターまで後1歩だった素晴らしいパイク

正直あんな水路に魚はいないと、ありふれた都会人みたいなことを言っていた自分が恥ずかしくなるぐらいに、決して釣るのも難しくなければ、いわゆる「怪物魚」と呼ばれるなかでは控えめなぐらいのパイクという魚にすっかりとらわれてしまったのでした。

パイクという魚

そもそもパイクってどんな魚なのでしょう。和名をカワカマスといい、海で釣れるカマスとは近縁の魚ではありませんが、見た目がよく似ていることからそう名付けられたのでしょう。この話をするたびになぜか、どうして「カワムツ」っていうのに「ウミムツ」って呼ばないんだろう? ウミタナゴとタナゴもそうだ、などと全く関係のないことを思い出します。

03_パイク解説

ヨーロッパで一般的にパイクと呼ばれているのはノーザン・パイクという種類で、ユーラシア大陸から北米までかなり幅広く分布している肉食魚です。最大で1mを悠に超え、アヒルの子供を食べたなんて話はヨーロッパ各地で聞こえてくるため、逸話なんて呼ぶ珍しい話でもないぐらい。ルアーへの反応もよく、狭い水路に驚くほどのサイズが潜んでいることもしばしば。ロンドン市内でメーターオーバーを釣るというのが僕と師匠共通の目標ですが、いまだに達成できておらず、何度でも足を運ぶよい言い訳になっています。冷たい水を好むため、ロシアやカナダではアイスフィッシング(氷上に穴を空けて釣りをする釣法)の好ターゲットでもあります。

初めての出会いから今も変わらないBIGFISH

今思えばタックルのバランスもきっとバラバラで、毎日水辺に繰り出すもなかなか魚に出会えない日が続きました。そしてようやく掛けたものの、鋭い歯が並ぶパイクのランディングの上手な方法が分からず、おどおどしているうちに泥煙の中に消えていったあの魚は今も脳裏に焼き付いて離れません。まさにコレが『BIGFISH(逃した魚)』ってやつです。

05_初パイク
地味な写真だけど、いつ見てもあの日を思い出せるなぁ

それから数日して無事にパイクを手にしたときは膝はガクガクと震え、持ち方も不慣れでしたが、運河の脇の遊歩道を通勤や散歩で行き交うロンドナー達に祝福されたのは本当に忘れられない思い出。パイクを釣り上げたスピナーベイトはぐにゃりとひしゃげて、手に付いた匂いは当時しばらくごぶさただったブラックバスのそれに似ていたような気がします。(今思えばあんまり匂いは似ていない(笑))

僕が最後にパイクに会ったのは一昨年新婚旅行で訪れたイギリスで。
お世話になった人に顔を出しつつ、時間を見つけては懐かしい水辺で竿を振る。現地の友人曰くここ数年ロンドンでパイク釣りを楽しむ人が増えたらしく、確かに昔に比べたら随分と「スレた」ような気もしたけど、大都会のアーバンモンスターは健在でした。目標にしているサイズには遠く及ばないけれど、いつだって懐かしい顔に会えるのは嬉しい。人も魚も、なんて考えてしまう自分はかなり釣りという病に侵されてしまっている。

06_最後のパイク

道具はシンプルかつ身軽に

さて、なかなかヨーロッパまで足を運ぶ機会は多くないかもしれませんが、ある国(確かオランダ)のことわざでは、水溜りにすらパイクはいると揶揄されるぐらい本当にどこにでもいる魚。出張や旅行中の短い時間でも出会える可能性は十分にあります。

07_ロッド

街中のパイクを釣る道具はできるだけシンプルに、そしてなるべく身軽になり、とにかく足で稼ぐのがコツ。基本的には待ち伏せ型の彼らは、分かりやすい障害物、壁際などに定位しています。湖などの広い止水域でない限り、あまり広く回遊する魚ではありません。オカッパリのブラックバスと同様に、歩いてはポイントを撃っていくラン&ガン、または「てくトロ(=てくてくトローリング。ゆっくり歩きながら足元の岸際でルアーを泳がせる)」で広くエリアを探っていきましょう。

08_朝ごはん
ボリューム満点のイングリッシュ・ブレックファーストとエスフラット

オススメのルアーはスピナーベイトビッグベイト。普段からバス釣りを楽しむ人ならきっと驚くほどアッサリとパイクに出会えるかもしれません。何が沈んでいるか分からない場所では先ずスピナーベイト、分かりやすいストラクチャーや面の釣りでアピールを重視するときはビッグベイトのイメージで使い分けてみてください。ちなみに釣れ過ぎるので禁じ手にしているはエバーグリーンのエスフラット。小型から大型まで食って来てしまい釣れ過ぎるので使うのをやめたほどです(笑)。もしもトライする方がいたら、騙されたと思って一つはボックスに忍ばせてくださいね。

絶対に必要なモノ

ズバリ、ワイヤーリーダーです。パイクの歯はぎっしりと生えているというよりも、ガラスの破片のように硬く鋭い歯です。太いフロロカーボンも重みが乗るといとも簡単に切られてしまいます。日本でナマズ用やサワラ用に売られているようなモノでもいいので、必ずワイヤーリーダーを用意します。それとランディング時にギリングといってエラ蓋を掴む方法もありますが、不慣れな場合はフィッシュグリップの使用をオススメしています。フィッシュグリップは使い方によって魚に余計なダメージを残すなど、ヨーロッパでも賛否両論ですが、先ずは安全に楽しむのが第一ですし、魚を縦に吊り下げたりせずお腹を支えるなど、自重のある魚への配慮を忘れなければ魚は元気に帰っていきます。余談ですが、イギリスの運河の生き物はエリザベス女王のモノという扱いでキャッチ&リリースが義務付けられていますので、持ち帰ったりはできません。なんか、理由がカッコイイ(笑)!

そしてフィッシングライセンス。イギリスでは郵便局やインターネットで購入が可能で、国によってルールが違うのでしっかり下調べしておきましょう。日本の遊漁券の感覚でいると、海外では驚くほど厳しい罰則が与えられますので要注意です。しかしこのようなルールがしっかりと、はっきりとしているからこそ環境は守られ、釣り人も市民権を得ているのも事実。いずれブラックバスや河川のシーバスなど、日本でもライセンス制度は適応した方が、長い目で見ると釣り人とフィールドを守ることができると思っています。

09_ライセンス
イギリスの年間ライセンス。シーズンによって魚種も変わりカッコイイので、お土産にもなりますよ

ロッドはやっぱり持ち運びの楽なパックロッドが便利です。しかも水辺にカフェやパブなんかあったときにはぜひ足を運んで欲しいのです。そんなときにタックルをよりコンパクトにできればフットワークも軽くなり、もっともっと旅自体を楽しむことに繋がります。そしてできれば…、フエルコの竿を選んでくれたら嬉しいですね(笑)。と、それは冗談ですが、最近は大手メーカーも含めさまざまなパックロッドがリリースされていて選択肢の幅が広がりました。パイクの釣りは特別繊細さも必要ありませんし、取り回しのよい6ft~7ftぐらいのロッドが1本あれば十分です。もしも余裕があれば、小さめのワームやプラグを扱えるスピニングも1本あると、パーチやチャブ、トラウトなども狙うことができますよ。

10_パーチ
11_トラウト

最後に……

かなりかんたんにではありますが、ヨーロッパのアーバンフィッシングを紹介させていただきました。本当はもっともっと書きたいことがあるのですが、「知らない場所を歩く楽しみ」のためには、全てを語ってしまってうのはナンセンスなのかなと。

特に今回はロンドンという慣れ親しんだ場所をメインに書かせていただきましたが、ヨーロッパの街は基本的には足場がよく、スニーカーや歩き疲れないブーツにジーンズ、キャップに偏光グラス、レインジャケットがあれば十分釣り歩けます。むしろその身軽なスタイルがまさにストリートフィッシングなんです。疲れたらカフェで休み、ときにはパブでビールを片手に釣る、なんてことだって可能。飲み過ぎには注意ですけどね。

12_フィッシュアンドチップス
やっぱり釣り人なら外せないフィッシュ&チップス

実は今僕がアンバサダーを勤めているBIGFISH1983というブランドとの出会いもストリートフィッシングでした。当時現地の日本人向けのフリーペーパーに、後にブランドを立ち上げるフランス人の友人が。日本の釣りを知りたいみたいなことを書き込んでいたのを見つけたのがきっかけ(笑)。

13_william
BIGFISH1983

 

釣りは自然が相手であり、自分と向き合う孤独な側面がありますが、誰かと繋がったり喜びをシェアできるのもまた大きな魅力だと思います。国境や人種を超えて、釣りがもたらしてくれた縁がずっと繋がって、自分にとっての今があると言えます。そしてその釣りは紛れもなくアーバンフィッシング。どうしてこのワードにこだわるのかには、そんな理由があるんですよね。「サラリーマン必見!」と言うには少し飛躍してしまっているかもしれませんが、現地の人ですら魚なんていないと思っている場所で、ヨーロッパの街並みを楽しみながら釣りをする。釣りのためだけの旅はどこか浮世離れしているように聞こえるけど、「ついでの釣り」ならそのハードルはガクンと下がるはず。

もしもそんな機会や縁に恵まれたら、ぜひともまだ見ぬアーバンモンスターを探して街歩きしてみてください。

14_トンネル

 

レポーターREPORTOR

ショータ・ジェンキンス
プロフィール:ショータ・ジェンキンス
パックロッドを中心に、ライフスタイルとしての釣りを提案するメーカーHuerco(フエルコ)に所属しながら、世界各地を釣り食べ歩く国際派。厳しい釣りを強いられても、持ち前のハッタリと語学力で切り抜ける「適当さ」が武器。BIGFISH1983ジャパンアンバサダー、Rマジック・TONEDTROUTプロスタッフ、Patagoniaプロセールスプログラム。
インスタグラム:
@shota_jenkins_konno (URL: https://www.instagram.com/shota_jenkins_konno/)