そして迎えるフィッシングショー当日。
インテックス大阪へは当社が近い事もあり、社用車で出かけていくのだが、パシフィコ横浜へは新幹線を乗り継いでの旅。昔は、本社からバンに荷物を満載して東名高速を東へ東へ走っていた事もあった。
夜中から出発して到着するのはお昼頃(約11時間のドライブ)。寒空の下、明けてくる朝日を拝みながらひた走るのだが、途中から見えてくる富士山の姿にはいつも感動していた。(この時期雲に隠れて見えなかったことは無い) 始めは遠くに薄っすらとその頂が見えるだけなのだが、次第にぐんぐんと大きくなり、車窓一杯に広がる富士山の雄雄しい姿は偉大であった。
毎回「富士川SA」に立ち寄り、数人のメンバーと富士山をバックに記念撮影。そして名物のB級グルメ「富士宮やきそば」を食べるというのが(私の勝手な)定番だった。(しかし、会期終了後の復路は、疲れて早く帰宅したいという思いとは裏腹に、いつまでたっても視界から消えてくれない富士山の姿にうんざりするのだが・・・(笑))
こうして会場へ到着すると、「いよいよ」という緊張感と「ブースは無事に立ち上がっているのか?」という不安感に包まれ会場入りする。大抵、施工業者様の頑張りもあり無事に立ち上がっているのだが、稀に進行が遅れて展示面に何も取り付けられておらず、「大丈夫だろうか。。。」とヒヤヒヤしながら、予定の搬入時間を過ぎてまで、業者様と製品の取り付けを行う事もあった。また別の年は、シンボルとして準備した大型のメインアーチを少し傾けて立ち上げるという企画を採用したことがあったが、実はこれが施工技術的には非常に難しい作業だったらしく、大掛かりな重機と慎重な作業でかなり苦労した様だ。他のブースを手がけている他社業者様も、その難しさを見て取ったらしく、アーチが立ち上がるまでの作業を、自分たちの手を止めて見守っていた。当社のブースの周りに近隣の業者さんが集まり、缶コーヒー片手にその作業の行く末を見つめているという、一風変わった光景が印象的だった。
そしていよいよ、お客様を迎え入れての本番がスタートすれば、後はゴールに向かって無心で突き進むだけ。
社員の朝礼で一通りの段取りと注意事項を連絡し、当社社長からの有り難いお言葉とねぎらいで幕を開ける。開場と共に押し寄せる大波が如く、全力疾走で走りこんで来るお客様の勢いに圧倒されまいと、腹式呼吸で声を張り、当社自慢の新製品を各担当が熱心に説明するのだ。基本的には、受付ではカタログ販売やブース内のご案内、コーナー担当がお客様に製品を説明し、コミュニケーションを図らせて頂く。そして、イベントステージではプロスタッフによるトークショーを開催し、その運営に皆テンヤワンヤするといった具合。しかし、見えないところでは、営業員が小売店バイヤー様にこれからの新製品を必死にセールスしたり、裏方としてカタログをバックヤードから運んだり、イベントでのノベルティ(≒景品)を準備したり、お弁当を買出しに行ったりと皆様々。私も広告・広報担当として、各釣り雑誌の編集部さんに「今年の売りは○○シリーズですよ~。」とか「こちらが今年一押しの新製品ですっ!」といった具合に、少しでも取り上げて頂けるように声を張る。
お陰で会期が終了する頃には喉はガラガラに枯れ、持病の腰痛で何度も唸る羽目になるのだ。 ある年は、流行のウィルスを貰ってしまったり、(私は平気だったが)自宅に腹痛をもよおす菌を持って帰ったりしてしまったこともあった。
しかし、大変かつ悪い事だけでもない。フィッシングショーの担当に成り立ての頃、会期を終え、一人会場からスーツケースに重い荷物と疲労をたっぷりと乗せ、駅へと向かう途中、ふと前を行く背中を見上げると、当社FINAプロスタッフとしてお世話になっている並木プロが歩いていた。私は元々バスマンとして釣りを楽しんでいたことがきっかけで業界に入ったのだが、入社前は並木プロのVHSビデオを擦り切れるほど観て、並木プロが得意とされる「マシンガンキャスト」の華麗で洗練された技に、大いなる憧れを抱いていた。そんな当社プロスタッフでありながら、私にとっては雲の上の存在であった並木プロを見つけ、一瞬にして鼓動が高まり「どうしようか…」と迷ったが、折角の機会だと勇気を持って声を掛けさせて頂いた。その結果、有り難いことに並木プロは途中別れる駅までの道中、電車の私の横に一緒に並んで座って下さり、気さくにあれこれと当社ブランドについてアドバイスを下さった。役得とも言える非常に貴重で嬉しい出来事であった。。。しかし残念ながら、交わした話の内容は緊張のあまり今ではほとんど覚えていないのだが。(笑)
こうして、フィッシングショーは怒涛の如く過ぎ去って行く・・・。我々出展メーカーにとっては大変と言えば大変な行事ではあるが、それでも、出展し続ける事に意味のある大切な一大イベント。何より、普段お会いすることの無い釣り人のお客様やプロスタッフに直接お会いし、お話が出来、業界や市場の行く末や活気を肌で感じることの出来る場なのである。様々な諸事情があり、出展社数や出展する小間数が伸び悩むフィッシングショーではあるが、ひと度会場に足を踏み入れ、雰囲気を味わうと、「いやいや十分に釣り人の皆さんは活気があって嬉しいなぁ。」と毎年の様に感じる次第である。
景気に左右されるお財布事情や、業界が受けている逆風はあるものの、まだまだ釣り業界も捨てたもんでは無い。我々メーカーと問屋・小売店様、媒体様、そして、釣り人の皆さんと手を取り、良き家族として、今後の業界の夢を見たいものである。是非、来年もフィッシングショー会場で、そして、当社ブースでお待ちしておりまーす。
※本文は都合により脚色を交えております。ご了承下さい。