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2019年の晩秋、IKEことマイク・アイコネリとアメリカで釣りをしたときの記事をHEATでも書かせてもらったのだが、バスフィッシングにはあまり触れなかった。バスという魚を取り巻く環境があまりに違うことや、自分のなかで思うこともあったからなのだが、やっぱりバスフィッシングはかっこよくて面白い。というわけで、本場でのバスフィッシングの体験と、感じたことをレポートしたい。
(今年はコロナの影響もあり海外遠征も今のところほぼ全て延期となっているため、過去の釣行記であることはご了承いただきたい)
待ちに待ったアメリカのバスフィッシング
サスケハナリバーはアメリカ北東部を流れるひじょうに長い川で、その全長は715kmにも及び、全米で16番目に長い川だそうだ。千葉出身の僕にとって幼いころから知っている大河川といえば利根川だが、日本三大河川に数えられる利根川でさえ全長は322km。しかも715kmもあるサスケハナが16番目と言われてしまうと、改めてアメリカの雄大過ぎる国土に圧倒される。
前日は移動中も皆が釣りをしている間も車で寝込み、ホテルでも一度も目を覚ますことなく寝ていられるほど体調を崩していたが、この日はようやく朝のひんやりとした風が気持ちよく感じられるぐらいには回復していた。本場アメリカでブラックバスを釣れること。しかもそれをアイコネリと一緒に楽しむことができるなんてこんな贅沢なことはない。前日のストライパーフィッシングを棒に振った価値が十分にあるはずである(もともと船酔いに弱いので乗り気ではなかったのだ…)。
バスはバスでも、サスケハナでねらうのはスモールマウスバス。日本では野尻湖・桧原湖の釣り以外メディアに出ることのない釣りだが、時に渓流域に近い流れのある川にも生息する彼らをサスケハナのような美しい大河川でねらうことができるチャンス。アメリカのアングラーはどんな風に “ 川スモール “ を釣っているのかにもひじょうに興味があった。合流したガイド曰く、ここのところ午後の方が調子がいいとのことで、ゆっくりとブランチを取った後にいざ出船。
とてもテクニカルなネイティブスモール
サスケハナの景色は美しかった。そして川の流れはとても速く強い。序盤、自分もマイクもジャークベイトやトップなどの強気な釣りで攻めてみるも反応はなし。「この季節はとくに水もクリアで、その手の釣りは難しいよ」そう言いながらガイドのマイク(彼の名前もアイコネリと同じマイクだった!)はあっさりと40cmほどのスモールを釣って見せた。魚の口元にぶら下がるワームとその形を見て、妙に納得というか、やはりスモールという魚の本能を刺激するひとつの要素にナチュラルドリフトは欠かせないようだ。
普段マイク(アイコネリ)は流れにワームを乗せるような釣りをあまりしないらしく興味津々。最初の1投目こそ腑に落ちない顔をしていたがさすがMLFトッププロ、すぐにコツを掴み連発劇が始まった。フックサイズやカラーチェンジのペースも早い。ちょっとまだ本調子じゃない僕に、魚を釣る度に「Shota—-!!!! Yeahhhhhh!!!!!」なテンションのマイク。いろんな意味で歯が立たない(笑)。
最初におチビちゃんを1匹釣り上げてから反応のない僕。実はその理由はなんとなくわかっていて、普段から国内外を問わずPEラインを多用することが多くこの日もPEの0.6lbでフロロのリーダーは50cmぐらいを使用していたからだった。摩擦の多いPEラインでは、押しの強い流れの中でどんどん引っ張られてしまいワームをうまく流せていないのだ。そんなときマイクがライントラブルで結構な量のラインをリールから引っ張ってまとめているので、すかさず「それ何lb? リーダーに使いたいからちょうだい!」と言ってロングリーダーを組み直すと途端に反応が変わった!
ボートもワームも自然に下流に流れていくなかで、ラインを張らず緩めずでドリフトさせていると「ピッ!」とラインが動く。時にはそのままラインが走ったりその場で引っかかったように動きが止まったりとアタリの種類はさまざまだったが、ボトムを転がるように流すことができればバイトは止むことはなかった。それまで水深が数10cmしかないシャローに船が差し掛かると無数のスモールが一斉に逃げたりするのを見て、マイクと「魚こんなにいるのになんで食わないかね?」と首を傾げていたのがかなり前にように感じる(笑)。ほぼ毎キャスト魚からの反応が出るようになり、その魚影の濃さを逃げる魚を見るだけでなく竿から感じることができた。
バスフィッシングとバス釣り
実はこれまで、自分がインタビュアーとして日本のバスプロの方からの話を聞くこともあれば、アメリカのバスプロのイベントの通訳やインタビューも経験してきた。それらを鑑みたときに、自分にとっての日本のバス釣りとアメリカのバスフィッシングのイメージはこんな感じだった。
アメリカ:広大なフィールドから魚を探すことが重要で、アプローチは日本ほど繊細ではなく大雑把
しかしマイクの釣りを観察していて思ったのは、釣りがとても丁寧なこと。いや、当然トッププロであるマイクが釣りが上手いのは当然だが、キャストひとつとっても大雑把なんてとんでもない! 繊細で正確なことに驚いた。それになんだか華があるのだ。ボートに寝そべりハンドランディングするのもいちいちカッコいいし、別に僕をガイドしている訳でもないのに常に気遣いやちょっとしたエンターテインを忘れない姿勢。それまでのアメリカのバスフィッシングやバスプロのイメージがまた少し変わり、やっぱりカッコいいし面白いなぁと再確認せずにはいられない。
これはこの日の夜マイクの家に行って改めてわかることなのだが、われわれの泊まったマイクの別宅はスタジオ兼事務所の役割も果たしていて、アイコネリという人物、いわばブランドを支えるたくさんのスタッフが揃いフルサポートしている。正直このスケールで成り立っている釣り人は日本ではいないのではないだろうか。産業としてのバスフィッシングの大きさだけでなく、彼の釣り人としての意識や思想の強さを目の当たりしたのだった。
釣り人は考え続け、水辺に立ち続ける
冒頭にも書いたが、日本のブラックバスの立ち位置やイメージはとても複雑だ。どこでも誰でも気軽にチャレンジできる親しみやすい一面とは対照的に、「外来魚」である彼らの扱いは時にひじょうにデリケートである。特別ブラックバスに精通もしていない僕のような釣り人が好き勝手に発信するのは無責任と思われてしまうかもしれないが、だからといって見て見ぬフリをしたり考えることをやめてしまっては、本来この魚たちを正しく扱い、守ってあげられるかもしれない機会をみすみす逃すことに繋がってしまうのではないか。
僕はもともと釣りを始めたきっかけがバスフィッシングではなく、近所の小川でフナやタナゴなどを捕まえることからスタートしているので、当然在来種と呼ばれる日本の淡水魚も大好きだ。しかし、物心ついたときにはなぜか憧れの釣りであったバスフィッシングは今も特別なのである。もちろんアメリカでも現地なりの外来種問題があり、釣りを取り巻くさまざまな課題がたくさんあるという話も聞いた。たくさんのダムを建設したことでバスの棲むリザーバーは増えたが、それと引き換えにアメリカは多くの在来トラウトを失っている。しかしそれでも、直面した問題と時間をかけて向き合った結果、今の盛り上がるフィッシングシーンがあり、経済的にも大きな役割を担う産業になっている。マイクや一緒に旅をした釣り人たちとそんな話を毎晩しながらビールを飲み、いつの間にか寝る(風邪で寝ているときもあったけど)。そんな、いろいろなことを考えさせられた旅だった。そして前回のアメリカ編でも触れたが、結局のところ行き着くのは、
「今自分たちが楽しむ釣りをこれからも残していく唯一の方法は、釣りに行くことと、子供を釣りに連れて行くこと。これしかない」
マイクのこの言葉だ。少し皮肉かもしれないが、日本での人気やバスフィッシングを楽しむ人口の多さを考えたとき、時に悪者扱いされてしまうこの魚とどうやって付き合っていくかに、大きな可能性を感じてならない。バスに限らず、フィールドや魚に一番寄り添えるのはきっと、水辺に立ち続ける釣り人なんじゃないかと思う。
レポーターREPORTER
栃木県在住。国内のトラウトフィッシングから海外の釣りまで、人生を豊かにするライフスタイルとしての釣りを日々模索し発信しているフィッシングピーターパン。PIKE STREET MARKETディレクター。ひと×コト×Sakana栃木PRアンバサダー。
サポートメーカー:Huerco、BIGFISH1983、Rマジックテスター。VARIVASフィールドモニター、Patagoniaプロセールスプログラム。
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