セミにカエル、そしてコオロギやスズムシなど、夏から秋にかけて、小さな動物たちの鳴き声が季節を感じさせてくれますよね。実に風流です。ところで……鳴く魚がいるって知ってましたか? 実は魚も鳴くんです。しかもさまざまな部位や方法を使って。
今回は、ちょっと変わっていて面白い「鳴く魚たち」を紹介したいと思います。
「鳴く」といっても、鳴き方はさまざま
たとえばコオロギやスズムシは羽をこすり合わせて、その摩擦音で鳴きますよね。セミは羽の摩擦音に加え、お腹にも音を出す仕組みを持っています。また、カエルは柔らかな皮膚の膜を使って鳴いてます。鳥は気管にある「鳴管(めいかん)」でさえずりますし、哺乳類は声帯を使います。では魚たちはどのように鳴くのでしょうか?
実はひと口に「鳴く」といっても、その鳴き方はさまざまなんです。
浮き袋で鳴く
まず「鳴く魚」としてご紹介したいのはこちらです。
ホウボウですね。釣ったそばから大きな声で「ホー・ボー」と鳴きます(名前の由来も鳴き声にあるようですよ!)。「うん……うん……」と人間に相槌を打たれているような声はちょっとドキッとしますが、ホウボウは浮力調節に使う浮き袋を利用して鳴いています。
同様にイシモチも浮き袋を使って鳴く魚です。
イシモチは「グー・グー」と、ハラ減ってお腹が鳴ったような音で鳴きます。ちなみに関西では「グチ」と呼ばれていますが鳴き声が「愚痴」のように聞こえるからだとか……。ほかにもコトヒキ(琴を弾くような音が名の由来とか)やアジの仲間やヒイラギも浮き袋で鳴く魚です。
歯をこすり合わせて鳴く
次に、釣り人おなじみの鳴く魚、と言えば、こちらではないでしょうか?
フグです。エサ取りとしてよく釣れるのはクサフグやキタマクラですが、こいつらは、釣りあげると「ギィー・ギィー」と鳴きます。結構うるさいくらいに鳴きます。これは鋭い歯をこすり合わせている、言わば「歯ぎしり音」なんです。同様にカワハギもこの歯ぎしり音を出して鳴きます。いずれも咬まれると大変ですから、指を突っ込んだりはしないように。また、フグは胃の一部に水をためて膨らみますが、釣りあげたフグは水の代わりに空気を吸い込んで膨らみます。その際、空気を吸い込むときや空気が抜けるときに「キューッ」という音がします。これも鳴き声、と言えなくもない……かな。
ヒレをこすり合わせて鳴く
霞ケ浦などにいるアメリカナマズことチャネルキャットフィッシュも鳴きます。結構、大きな声で鳴くのでびっくりします。胸ビレの棘(きょく)を付け根の骨とこすりあわせることで鳴くようですが、ギギやギバチなど日本のナマズにも同じように鳴く仲間がいます。その音は「ギー・ギー」。ギギの名の由来がすぐにわかる鳴き声ですね(笑)。鳴いているときは胸ビレを動かしますので、チェックしてみてください。ちなみにこれらナマズの棘には鋭いトゲがありますので、気を付けてくださいね。
空気を吸い込んで鳴く
最後に、空気を吸い込んで鳴く魚を紹介しましょう。こちらです。
ドジョウです(写真はシマドジョウ)。ドジョウは腸で空気から酸素を取り込むことができるので、水面で口から空気を吸い込みます。この時に「チュッ」と鳴くのですが、捕まえて水から出したときに「キューッ」という大きく鳴くことがあります。ドジョウは口から取りこんだ空気をお尻から出しますので、この「キューッ」という音は、ゲップもしくはオナラ、なのかもしれません。