長年「釣り」といえば、ほぼ取材釣行となっていた私スタッフD。今年は部署も異動となり、これまでのように取材現場のディレクションに明け暮れるということが少なくなってきた。手がけている当HEATの取材はありつつも、ガッツリ商品プロモーション全開! というわけではなく、ユーザー様目線で「楽しい、興味がもてる」内容にすべく、チョット「ゆる~く」現場を回しているといった具合だ。
(不真面目にやっているわけではありませんので、悪しからず…)
以前から、裏方さんを担当させていただくなかで、ささやかな夢があった。それは、「現場で釣りを楽しむこと!!」だ。裏方をしていると、「釣らなければ(釣っていただかなくては)ならない」「商品を宣伝しなくてはならない」「写真素材を集めなくてはならない」など、釣り人さんの心情や現場の雰囲気を察しつつ、カメラ片手にそばで待ち構えている。そのため、竿を出してはいるものの、実質的に釣りに集中することはできない。そのような状況であるから、ほんのささいな夢ではあるが、「釣りを楽しむ」ということを現場でやってみたかったのだ。
機会に恵まれ、限りなくプライベートな釣行へ
つい先日、これまで随分とお世話になっている、人生の先輩であり友人であるアングラー川畑プロと、限りなくプライベートな形で釣りをご一緒させていただく機会があった。
何やら梅雨から初夏にかけて、時期になるとタイラバでマダイが爆釣する(かもしれない…)エリアに釣りに行くという。最近あまり船に乗る機会がなかった私は、せっかくなので便乗させていただくことにし、自宅から2時間半ほどの距離である川畑プロのもとを目指し、出かけて行った。
釣り当日の朝。漁港までの道のりを、贅沢にも川畑プロとご友人(釣り仲間)の車に一緒に乗せていただき、ラクラク現場入り。現場に到着すると、同船される他のご友人のみなさんも既にお待ちかね。川畑プロを含む8名の釣り仲間さんに、私1名をプラスした総勢9名での釣行となった。
さて準備。
あれれ? 手にはいつものアレが…
私は予定していた通り、タイラバでの挑戦。ベイトとなるイワシが回っていれば、私の腕でもイージーに釣れる。そんな淡い期待を胸に、「の~んびり楽しんじゃえっ!」の精神で、釣りに専念させていただこうとひそかに誓って出船した。ポイントに着くまでの道中、ご一緒させていただくみなさんと自己紹介を兼ね雑談を交わし、いつもとは違うゆったりとした時間が流れる。釣れる釣れないの不安はあるものの、昇ってきた朝日と青空を眺めつつ、なんだかイイ時間。一応カメラは持参していたが、「ひょっとしたら写真なんて、釣ったときの記念撮影くらいかな~?」とボンヤリ考えていた。
しばらくしてポイントに到着。みなさん一斉にタックルの準備に取り掛かる。道中の話では、カツオも回っているということで、タイラバだけでなく、エサ釣りやサビキ、ジギングなんかでも釣れるかもしれないという。私も早速準備しようかと思ったが、先のような状況から何が釣れるか分からない朝一。「とりあえず、みなさんの状況を見つつ、ゆっくり準備しようかな~。慌てない慌てない…」と、何の気なしにカメラに手を伸ばし構えてしまった。「はっ! イカン(汗)」と一瞬思ったものの、「まぁまぁ、せっかくだから写真素材も押さえとかないとね」と自分を制す。なんだか普段の感覚が抜けないようだ…。
タックル準備のシーンや、船から見える波間の風景、釣りシーンなどなど、気が付けばいつも通りに写真撮影。思いのほか朝一の釣果が振るわなかったこともあり、なおさら長い間、カメラをにぎりしめていたのだった(笑)。
順調に釣れています! みなさん楽しそうです!!
さて釣りの状況はというと、ポツリポツリではあるが、みなさん徐々に釣れ始めている。予想通りベイトはいるようで、おそらく群れに当たったときだろう、船中が一斉に賑やかとなる。そう、釣れるのは「カツオ」だ。決して群れは大きくないようだが、釣り仲間のみなさんは日頃から修練を積んでいる猛者たち。誰か1人が掛ければ、隣近所でも同様に掛けるという具合で、確実にカツオを仕留めている。当然、私の横にいる川畑プロも、臨機応変にタックルや釣り方を変え、楽しそうにカツオを釣りあげていた。
対して私はというと、一向に釣れない…。日頃のクセで写真撮影をしていたのは言い訳で、少し出遅れたものの竿は出している。ただ、やっているのがタイラバなだけ。はて何か問題でも…? 「まぁ、そのうち私にも順番が回ってくるでしょう」と、タイミングについてはあまり深く考えず、それよりも「どうやったらタイラバで狙いのマダイが釣れるのか?」「どのタナ(水深)にマダイがいるか?」「今日はどんな釣り方が効くのか?」を必死に考え、ない頭を振り絞って答え探しをしていた。そして相変わらず、誰かが釣れると、何となくカメラを片手に写真を撮らせていただいていた。
時間が経つにつれ、船中ではカツオがこれでもかというほど増えていき、時折、メジロ(ブリ)やヒラメ、マトウダイ、イサキ、アジ、マダイ、ガシラなど、多種多様に魚が追加されていく。みなさん本当にお上手! そしてそれぞれに楽しそう! 私も釣れないながらに、みなさんと一緒に釣りや雑談をそれなりに楽しみつつ、時間を過ごさせていただいた。
釣りをたのしむんじゃなかったの?
気づいたころには時すでに遅し…
「それなりに楽しみつつ…」はイコール、「心底には楽しめていない」ということ。そう、実は私スタッフDは、楽しそうなみなさんの姿を羨んだ目で眺めつつ、悩んでいたのである……。
随分と釣れない時間が続いた後に、あることに気が付いたのだ。それは、「仕事のクセが抜けない」ということだった。せっかく川畑プロからお誘いいただいたチャンスにもかかわらず、そして「釣りを楽しむ」を実践しようとしたにもかかわらず、気が付けば普段通りに写真撮影をしている自分がいたのだ。長いこと裏方担当をしていたせいか、「の~んびり」と時間を過ごすことができない身体になってしまっていた。せっかちなのか、挙動不審なのか、キョロキョロと周囲を気にしてカメラに手を伸ばしてしまうありさまだ。しかももう一つ、釣りにおいても気づいたことが…。
たまたまこの日はマダイの調子があまりよくなかったのだが、カツオの調子はよく、ジギングや喰わせサビキで釣果があがっていた。しかし私はこれまで、「タイラバならタイラバ」「エギングならエギング」「ショアジギならショアジギ」といった具合に、ある釣り方1本で商品をプロモーションするという根性取材を続けてきた。それがゆえ、その日の釣果や周囲の状況に柔軟に合わせることができなくなっていたのだ。この日は、「タイラバでマダイを釣ろう」という、(自分のなかでの勝手な)テーマから離れることができず、かたくなにタイラバをやり続けていた。その結果、カツオのタイミングを逃し、その他の魚をも狙うことすら頭に浮かばなかったのだ…。
(釣果に関して、私の釣りのウデが大したことないのは当然ながら)限りなくプライベートな釣りにもかかわらず、残念過ぎる結果。釣りの時間が3/4ほど過ぎようかというタイミングで、ようやくそのことに気づいた私スタッフDは、慌ててカメラをしまい、他の釣り方にも手を出してみたものの時すでに遅し…。かろうじてボウズはまぬがれたが、貧果に終わってしまった。
とはいえ、久し振りに川畑プロにお会いでき、いろいろと積もる話も聞いていただけた1日。そして、釣り仲間のみなさんと贅沢な時間を過ごさせていただいたことは、本当にありがたかった。めったに来れない場所で水平線を眺め、潮風を浴びてリフレッシュできたことには変わりない。
慣れやクセは恐ろしいもので、無意識に身体が反応してしまう。よい方向に作用すればいいのだが、いつもそうとは限らない。今回の気づきを踏まえ、次回機会があれば、今度こそ「現場で釣りを楽しむ!!」を実践したい。釣りは遊び、ぜったいに釣りを満喫してやる~!!
※本文は都合により脚色を交えております。ご了承下さい。