From HEAT the WEB DIRECTOR Behind the stage
~開発に咲く華はあるのか?~ part.3

前回、我が開発担当の面々に協力を貰い、様々な開発エピソードを紹介させて頂いた。開発には様々な失敗と苦労がある反面、喜びや面白さがあると、改めて知ることが出来たのだが、今回、その「今となっては苦労も良き思い出」と言った、開発エピソードを「番外編」としてご紹介したい。

磯

取材釣行も含め、開発テスト釣行は大いなる大自然の中で粛々と行われる。ヒューマンである以前に動物である我々は、避けることの出来ない自然現象に時折悩まされる。。。
「超動餌木 乱舞AB」の開発テスト中、唐突に、そして予想外の強さの腹痛が襲ってきた。ココは磯の上、文明とは程遠いへき地。常識的な羞恥心とあぶら汗に見舞われながら、やむなく磯の影で用を足すことに。。。しかし、緊急のためペーパーも無く、ホッと腹を撫で下ろす一方、我がスーパーコンピューターの頭を巡らせた。「このままでは芳しい香りと決別する事も無く、皆に生涯いじめられるのでは・・・」。
その時、記憶の彼方から一筋の光がっ!唯一カバンに持っていたおやつのチップス「プ○ングル○」の存在を思い出した。カバンから「プ○ングル○」の筒を取り出し、紙でお肌を傷つけないよう十分に揉み解し、我がでん部を拭った。。。
長時間、誰もいないへき地で行うテスト釣行を繰り返す内に鍛えられました(笑)。

超動餌木乱舞AB

※写真はプロトタイプです

悪天候

常に開発実釣テストは、釣り人の皆さん同様天候に左右される。今となっては自然信仰の意識は失われつつある我々日本人だが、その自然の猛威と驚異には時折ひれ伏すばかりである。。。
福岡・玄海沖での「喰わせ釣り」テストに出かけたのだが、現場では生憎の暴風。まったくテストにならない上、安全第一であるため仕方なく福岡・玄海から、急遽、鹿児島・錦江湾へ大移動する事に。
約5時間の長距離移動の末、やっと辿り着いた錦江湾は比較的天気が持ちそうだ。ホッと一息付き、湾内でのテスト釣行を無事に開始した。しかし、「喰わせ釣り」テストをいざ始めてみると、みるみる天候は悪化していく。まるで我々の乗った小船をもてあそぶかの様に雨雲は広がり、湿った風も吹き始め、遠くではお腹に響く雷鳴が聞こえてくる。ついには、近すぎて強烈な爆音とピンク色に光る雷、そして大量の雨に襲われ恐怖のどん底に。。。「漁港の方向が分からない・・・」とまさかの船長が怖がるほど。必死に皆で「あっち~」と指差すが、視界がふさがれ一寸先も見えないような状況に。また、視界がややマシになったかと思えば、目の前を大型のフェリーが横切るなどあわやのニアミス。座礁や衝突の恐怖を感じながら命からがら帰港できたのでした。。。
いつもよく言われる話だが、自然の中では我々人間は取るに足らない小さな存在でしか無い。常に命の危険を意識しながら釣行し、安全対策は欠かせない。

トンネル

そしてまたまたエギングテスト釣行でのエピソード。欲深い我々は、ついつい深追いをしてしまう性(サガ)。恋に博打に昇進に釣果に・・・、何事もほどほどが一番です。。
和歌山・みなべから古座の間をランガンでエギングテスト釣行に出かけたときの話。早朝4時から実釣を開始したのだが、ランガンの道中、普段なら絶対に足を踏み入れない細いトンネルで40分も立ち往生。
そのトンネルは、昔ながらの手掘りのトンネルで、ごつごつとした岩肌が露出しており、道幅が一定の間隔では無い年季の入ったもの。気を抜けば、尖った岩肌に車体をこする恐れがある上、ともすればワインコルクの様に詰まって動けなくなってしまう危険もあり。運転に気が抜けないまま30cm、50cmと大よそ文明の利器(=自動車)とは思えないスピードで進んでいく。進むにつれ徐々に道幅も狭くなり、最終的には、車と壁の隙間はわずか2cm足らずの狭さにまで細くなり、しかもややカーブしている。「行っても地獄戻っても地獄」、同乗者は外に降り「もうちょっと右っ!!」「そのまま真っ直ぐっ!!」と叫びながらドライバーをガイドし続けた。。。

そもそも何故こんな所に迷い込んだのか? 早朝からのランガンにも関わらず目当てのアオリイカがノーフィッシュであったため、このまま結果が出ずには帰れない。そして、「この先を行けばまさかのパラダイスがあるのでは?」と藁をもすがる思いこそが引き起こした悲劇。。。悪路に突っ込み、竿抜けポイント探しに躍起になっていたのだ。その後、チームワークが幸いし、何とかトンネルと先に続く悪路を抜けることが出来た。道を抜けた途端、たまらずドライバーは車を降りて地べたにへたり込んだそうな。
結局、開発実釣テストはと言うと、釣果も出ず丸ボウズに終わる。何をしに行ったのか。。疲れを抱えたままそして重苦しい雰囲気のまま、皆無言のまま会社へ戻っていった。

様々な釣り、様々な場所、様々な状況を否応無しに体験することが出来る我々。これを苦労といえば苦労であるし、貴重な経験といえば貴重な経験だ。捉え方一つかもしれないが、今後も様々な経験を自らの財産とし、開発に結び付けていくことが求められているのかも知れない。
今日もどこかの海で、我が社の開発が淡々とテストを繰り返している。もし見かけたら、優しく声を掛けてあげて下さい。

※本文は都合により脚色を交えております。また、個人的な主観で執筆しております。ご了承下さい。