

釣りを楽しむためには、釣りに最適な場所についての知識を持つことも重要ですよね。海や河原でも場所が違えば、釣れる魚や必要な道具も変わってきます。釣り場の特性を理解すればねらえる魚の種類も増え、釣りの楽しみ方が広がるでしょう。
そこで今回ご紹介したいのが、海でも川でもない「汽水域」。この汽水域には魚が集まりやすく、釣りを楽しめる要素がたくさん詰まっています。釣りやすい魚や注意すべき点など、汽水域の特徴を詳しく見ていきたいと思います。
海水と淡水の中間
「汽水域」は生命の進化において重要な存在

まず「汽水域」とは、海水と淡水が混じり合った水域のことを指します。水に含まれる塩分濃度で海水・淡水とは区別されますが、汽水域は海水よりも塩分濃度が低く、淡水と比べると塩分が含まれている中間の水域です。
生命の起源は海からといわれていますが、幾度とない進化の過程で、海から陸へと生活の場を移していった生物も現れました。陸上で生活するには基本的に淡水が必要なので、海水から淡水に順応させていく期間が必要だったことでしょう。その過程で、海水の塩分濃度を徐々に薄める役割を果たしたのが「汽水域」です。汽水域は、生物が新たな環境に適応していくうえで重要な役割を担ってきました。

汽水域の塩分濃度に関しては場所によってさまざまで、潮の満ち引きなどで変動することもあります。淡水よりも海水の方が比重が重く、満潮のとき、海水は川底を這うようにして川の中に入り込みます。この段階では海水と淡水は混ざり合わず、二層に分離した状態の「塩分成層」という状態を作り出します。しかし、天候や潮流などの要因で水が掻き回されると、徐々に混ざり合って塩分濃度が変化していきます。
このようにして海水と淡水が混ざり合った「汽水域」には、淡水からの栄養と海水からの栄養が供給されるため、プランクトンや底生藻類、コアマモなどの海藻が繁殖しやすくなっています。それらの栄養源を食べる甲殻類や小魚が集まることで、さらにそれをエサにする魚が集まってきやすい場所となるのです。

生物の密度が高い最適な釣り場
栄養満点な汽水域では、エサを捕まえる能力が育っていない稚魚にとっても最適な環境ですが、一生のうちに海と川を行き来する「両側回遊」の魚も集まりやすくなっています。
たとえば、アユやサケ、ボラ、ハゼ、ヒラメなど、多様な魚が捕食のために集まる傾向が高くなります。いわば、大海原よりも狭い空間に種類豊富な魚たちがギュッと集まっているので、釣れやすい環境が整っている状態なわけです。

季節によって釣れる魚も様変わりしていくので、いつの時期に行くのか考えるのも汽水域釣りの醍醐味といえるでしょう。スズキやクロダイ、ウナギなどの高級魚が比較的釣りやすいという点も嬉しいポイントです。
さらに、魚のほかにおすすめしたいのがテナガエビ。テナガエビは汽水域を好む甲殻類の一種で、梅雨から夏の時期にウキ釣りで釣ることができます。泥抜きをしたあとシンプルに素揚げや素焼きにすると、エビならではの風味とコク深さをダイレクトに味わえて、美味しく食べることができますよ。


人々の生活にも重要な「汽水湖」

海水と淡水が混ざり合う区域を「汽水域」といいますが、もうひとつ見逃せないのが海と湖がつながった「汽水湖」。日本では北海道のサロマ湖や静岡県の浜名湖、島根県の宍道湖などが有名です。日本の面積4平方km以上の53湖沼中、つまり約1/3にあたる18湖沼が汽水湖に分類されています。

汽水湖もまた、水産の生産力が高い特性があり、重要な水域になっているものが多いです。しかし水質の悪化などさまざまな要因が相まって、汽水湖の主産業のひとつであるシジミの漁獲量は減少傾向にあり、重要な課題となっています。
人口が集中する平野部にあることが多い「汽水湖」。人々の生活と共存していくために、環境への影響を低減する必要があるといえるでしょう。
釣り場にぴったりな汽水域!ただし水位には注意

汽水域ではたくさんの魚が集まりやすく、絶好の釣り場であることが分かりました。さらに汽水域は護岸整備された場所が多く、足場がいいので手軽に釣りを楽しめる点も魅力的です。釣りに行く前に航空写真などで確認して、足場のよさそうな場所をいくつかリサーチしておくとよいでしょう。
しかし、汽水域で釣りをおこなう際は、河口付近は海の潮位と連動するので水位に注意が必要です。事前に潮位情報を調べておき、ライフジャケットを忘れないようにして、万全な状態で釣りを楽しんでくださいね。
