釣り道具において「仕掛」は、ロッドやリール、ルアーほど脚光を浴びるわけではないが、魚に直接触れるアイテムとして、また、仕掛の良し悪しによって釣果が左右されるなど重要なアイテムだ。そんな仕掛を扱うメーカーならではのプチ知識を、開発担当者に聞いてみる当企画。「これ知ってたらお得」「釣果アップにつながる」「釣りが快適になる」…といったアイデアを紹介しよう。
今回「やってはいけない仕掛の取り扱い」について教えてくれたのは、エギングやショアジギ、ライトゲームからスノーボードまで(?)、幅広く外遊びを楽しむ小南さんだ。
1サイズだけ持っていくのはNG!
突然だが、みなさんは仕掛を正しく丁寧に使えているだろうか?
アジやイワシを疑似餌でねらう「サビキ仕掛」や、堤防の足下を探る「胴突仕掛」、チョイ投げで使用する「投げ仕掛」など、ハリと釣り糸をあらかじめ組んである「仕掛」は、釣りの定番アイテムだ(もちろん船釣りでも仕掛は数多くの種類がある)。消耗品ではあるものの、魚が直接触れるアイテムだけに、ぜひ正しく扱って好釣果に結び付けてほしいところだ。
小南さん曰く、「よく、釣れている仕掛サイズを聞いて、その1サイズだけを持っていく方がいますが、できれば仕掛のサイズやタイプは複数枚用意しておいた方がイイですね」とのこと。
事前の釣果情報はあくまで“情報”であって、釣行当日のアタリ仕掛は分からないからだそうだ。
確かに、現場でねらう魚のサイズが合わないこともあるだろうし、何かのトラブルで仕掛が切れたりすれば、その瞬間「釣り終了……」となってしまう。自然相手の釣りだけに、仕掛を1サイズだけ持っていくのではなく、予備も含めて複数枚持っておくのがよいだろう。
「具体的には、『5号で釣れてますよ』という情報を得たとすれば、前後の4号と6号も用意。そして、『○○カラー(タイプ)で釣れてますよ』ということであれば、該当のものと違うタイプのものも用意しておくとイイですね。4・5・6号の3サイズと色違い(タイプ違い)を1つずつ用意するとなると、最低でも6枚(各サイズ2枚のうち1枚をカラー違いにする)の仕掛を用意しておけば安心です」と小南さん。
それぞれのサイズやタイプに予備も持っておけば、少々仕掛枚数はかさばるかもしれないが、より安心で外す(=貧果に終わる)心配もないだろう。
慌てるのはNG!仕掛の引き抜きは慎重に
釣り場に到着して、「既に隣で釣れている!」「時合が始まっている!」という場面に出くわし、タックルや仕掛の準備に焦ったことはないだろうか? そんなときに限って、何かしら小さなミスやトラブルは起きやすいもの…。
仕掛の準備に際しても同様で、慌てるのはNG! パッケージから仕掛を引き抜く(取り外す)ときには注意が必要だ。
「仕掛をパッケージから引き抜く際は、ぜひ丁寧に行ってください。慌てて力強く引っ張ったり雑に取り外すと、糸が絡んだりハリが服や手に引っ掛かったりする危険があります。また、細糸はとくに切れたりしてもったいないことに…。気持ちは焦ってしまうかもしれませんが、落ち着いてゆっくりと確実に引き抜いてくださいね」と小南さん。
仕掛によっては、その長さや特徴から「引き抜く」タイプと「取り外す」タイプがあるそう。少々分かりづらいかもしれないが、仕掛パッケージの表記をよく見て、それぞれに対処することが必要だ。いずれにしても力任せに引っ張り出すのではなく、トラブルや破損で余計に時間を食ってしまわないようにも、仕掛を準備する際は落ち着いて丁寧に行っていこう!
巻きグセが付いたまま使うのはNG!
さて、仕掛をパッケージから外し道糸に結んだら、スグに使えるかといえばそうではないらしい…。ここでひと手間掛けてあげるのがミソだとのこと??
「これは仕掛を、いろいろな理由から今の形(台紙に巻くスタイル)にパッケージングした弊社にも問題があり、やや心苦しい話なのですが…」と、少々言いづらそうな小南さん。どうした?
「仕掛は長期間台紙に巻いてあるので、どうしても取り出してすぐは糸グセが残ってしまうんです。もちろんそのままでも使えるのですが、できれば糸グセを取って使ってください。クセが残ったままだと糸絡みしやすかったり、ナチュラルに仕掛が動かない(漂わない)こともあり、もしかすると釣果に影響することがあるかもしれません」と申し訳なさそうに教えてくれた。
ナルホド。確かに糸グセが付いたままだと仕掛が不自然な動きであったり、トラブルの一因となりそうだ。企業努力で将来的には解決してほしいところだが、ひとまずそれはさて置き、仕掛の糸グセを直してあげよう。
方法としては、クセが付いた箇所を「指で軽くしごく」のがよいそうで、少しだけテンションをかけてあげればよい。ただし、釣り糸は熱を持つと強度が落ちるので、あまり何度も強くしごくのはNG。指を水で湿らせてやるのがよいとのこと。また、キズが付く可能性があるので爪でしごかないことや、無理やり強い力で引っ張らないというのもコツだそうだ。
ちなみに余談だが、太糸を使用している船の「落し込み仕掛」や「大物仕掛」に関しては、その糸の太さがゆえに結び目が緩みやすいことがあるそう。(商品に問題があるわけではないが)念のために道糸とエダスの結び目を締め込むのがオススメだそうだ。大物ねらいの方は覚えておくとよいだろう。
パッケージに掛け直すのはオススメしない…
最後に、これは「絶対ダメ」ということではないそうなのだが、仕掛が掛かっていたパッケージの台紙に掛け直すのはあまりオススメしないとのこと。
以前の記事でもお伝えしたのだが、台紙に仕掛を掛け直すのは、一般の釣り人には少々難しく絡まりやすいからというのがその理由だ。
「僕らは慣れているので、テスト釣行時やプライベートでも台紙に仕掛を掛け直すことはザラなんですが、やはり一般の方にはあまりオススメできませんね…。難しいだけなら慣れでカバーできるかもしれませんが、絡まりやすいうえに保管の面でもサビや劣化といった問題があります」とのこと。安全に、カンタンに仕掛を掛け直すには、やはり「仕掛巻き」を活用するのがベストなのだそうだ。
(保管する場合は、潮を真水で洗い流し乾燥させておくこともお忘れなく)
といったわけで「やってはいけない仕掛の取り扱い」はココまで。釣りに詳しいエキスパートなら「な~んだ」な知識、かもしれないが、釣りを快適に、スムーズに楽しむための知識としてお役に立てれば幸いだ。
仕掛のスペシャリストとして日々開発に携わるなかで、きっとアングラーのタメになるアイデアがいろいろとあるはず! そんな目から鱗なプチ知識を発掘し、引き続きお届けしていこう。