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実は教えたくない…その2
「違う釣りへの応用」
さて、お次こそ仕掛メーカーとしては教えたくないことかもしれない「違う釣りへの応用」というお話。メーカー的には、釣りそれぞれに専用の仕掛を開発しているわけで、できれば、ねらう対象魚や釣り方によって「考え抜いた専用の仕掛」を買ってほしいところだろう。とはいえ、冒頭で田中さん自身も言っていたように、「ねらっている魚が釣れない。専用仕掛は持っていない…」なんてこともあるのが現実。
「ここでは『投げ仕掛』と、サビキを含む『胴突(タイプの)仕掛』の2つをご紹介しますが、仕掛は基本的に糸とハリで構成され、糸の長さやハリの種類・号数が異なるだけのものですから、工夫をすれば現場で応用が利きやすいんです。もちろん、ねらいの魚を専門に釣る場合は専用の仕掛を使っていただきたいのですが(笑)、荷物を減らす意味でも、とっさの状況に対応する意味でも、知っておいて損はありませんよ」と田中さん。
投げ仕掛を違う釣りに
まずは「投げ仕掛」からだが、投げ仕掛は「ウキ釣り仕掛」にも「胴突仕掛」にもなるそうだ。
田中さんによるとウキ釣りへの応用はシンプル! ウキとウキ釣り用のオモリがあることが前提だが、単に道糸に投げ仕掛を結ぶのみ。通常ウキ釣りは1本バリのことが多く、オモリの下にあるハリス部分は自ら長さを調整してお好みでセットしている場合が多い。
それに対して投げ仕掛を結んだ場合、ハリス部分は仕掛の全長となるので調整できないが(全長を短くして結び直せば別)、シンプルに代用できる。また、投げ仕掛は2本バリや3本バリの場合が多いのでハリ数が増えるが、こちらは適宜カットして使えばよいそう。「専用には劣りますが代用としては十分ですよ」とのことだ。
一方、胴突仕掛としての応用は少し加工が必要だ。投げ仕掛の下バリの上にチチワを作り道糸と結ぶ。そして、もともと道糸側にあったスナップにオモリを付ける。ちょうど投げ仕掛を上下逆さまに使用する形なのだが、上手く枝バリが出た胴突仕掛になるのだ。
仕掛を逆さに使うなんて、なんて斬新! 投げ釣りを楽しんでいる最中に、堤防の足下でカサゴやメバル、キュウセンなどの魚を見つけた際にはぜひ試してみたい。
胴突仕掛を違う釣りに
お次は「胴突仕掛」の応用方法。胴突仕掛は「投げ釣り仕掛」「ウキ釣り仕掛」「下カゴ仕掛」として応用が利くそうだ。
「投げ釣り仕掛」は胴突仕掛の幹糸を好きなところで切って使用する。2本バリにしたければ、道糸側から2本を残してその下をカット、3本バリにしたければ、同様に3本を残して下をカットするのみ。切って残った道糸を枝バリの根元に片結びすれば、枝バリが下向きにまっすぐになり、投げ仕掛の完成となる。
「ウキ釣り仕掛」も同様に、好きな本数を残してカットしてウキとオモリの下に結べば完成! 要領は投げ釣り仕掛の作り方と同じだ。
「要は胴突仕掛の下側(オモリ側)のスナップを取り、残った下バリが下を向いてくれればいいわけです。そんなに難しくはありませんよ」と田中さん。
そして「下カゴ仕掛」としての使い方は、「基本的に胴突仕掛のまま、オモリの代わりにエサカゴをセットしマキエを詰めて釣るだけです。空バリにはオキアミなどのエサを刺します。『マキエ胴突』などと呼ばれ、サビキで食いが悪いときに効果を発揮することがありますよ」と教えてくれた。こちらは応用というよりも、釣りの手立ての一つといったところだろうか。
サビキ仕掛を違う釣りに
最後は「サビキ仕掛」の応用。サビキ仕掛を「胴突仕掛」として使用する方法だが、なんと! 仕掛メーカーの売りであるサビキ(擬餌)を取り除くという荒技だ!?
「サビキを主とするメーカーとしてはご法度かもしれませんが(汗)、どうしてもサビキに食わないタイミングというのが稀にあります。サビキには反応しないのにエサには反応する…。残念ながら自然相手の釣りですので、サビキが万能ではないケースはあるものです。そんなときに、胴突仕掛があればイイのですが、仮に持っていたとしてもハリ種や号数が合わない場合もあります。セットしているサビキ仕掛のサビキを切除して空バリにし、そこにオキアミを刺して釣るといった具合です」。
「また、ねらう対象魚がアジやサバといったサビキの対象ではなく、コッパグレ(メジナの幼魚・若魚)やメバル、カサゴといった魚をねらう場合には、やはり胴突仕掛の方がよい場合があります。そんなときにもサビキ仕掛をカスタマイズするといった具合です」と田中さん。
専用の仕掛とはいえ、ねらう対象魚に対して常に万能ではないのは致し方ないところ…。それでも根気よく同じ仕掛でねらい続けるか、違う仕掛に換えて(カスタマイズして)試してみるか、釣り人の采配が問われる難しいトコロだが、正解を見つけるためにも試行錯誤してみるのはアリかもしれない。
といったわけで「仕掛屋さん的、現場で役立つ仕掛の改造方法」はココまで。釣りに詳しいエキスパートなら「な~んだ」な知識、かもしれないが、釣りを快適に、スムーズに楽しむための知識としてお役に立てれば幸いだ。
仕掛のスペシャリストとして日々開発に携わるなかで、きっとアングラーのタメになるアイデアがいろいろとあるはず! そんな目から鱗なプチ知識を発掘し、引き続きお届けしていこう。