三陸イカメタル最前線
「ヤリイカ」の繊細なアタリをとらえるメソッドとは?

岩手県を中心とした三陸沿岸の冬の釣りで、一番人気は「ヤリイカ釣り」です。近年はイカメタルでの釣りが主流となっています。
イカメタルといえばケンサキイカのイメージが強いですが、ヤリイカのイカメタルは、ケンサキイカねらいとは異なる面がいくつかあります。なかでも特徴的なのはアタリの出方です。繊細で小さなヤリイカのアタリは見逃しやすく、そのために船中での釣果に大きな差が出ることもあります。今回は、そんなヤリイカをターゲットとしたイカメタルにおいて、竿先に出ないアタリを取るためのコツやステップを解説します。

三陸イカメタルで「ヤリイカ」をねらう難しさ…

01_ ヤリイカ
大型のヤリイカ、ゲソや触腕は細く貧弱なのが特徴

ヤリイカをねらうイカメタルの難しさは、何といっても「アタリが小さい」という点です。
活性が高くイカの群れも大きい場合は、スッテの奪い合いになってアタリは大きくハッキリと出ますので難しくありません。しかし問題なのは、ヤリイカは居るのに、低活性でアタらない、掛からない場面です。こうした局面でも、エキスパートアングラーはしっかりと掛けて数を伸ばしていきます。

低活性時にアタリが小さいのは、ヤリイカの「居食い」が原因です。ケンサキイカと比べて、レンジの浮き沈みが少ないヤリイカはボトム付近に定位します。ねらう範囲が狭まることでレンジを絞りやすい反面、動きが少ない低活性時は居食いが多くなり、釣りにくくなります。さらにヤリイカは触腕もゲソも貧弱で弱々しいため、アタリが比較的微小で、より釣りを難しくしています。

誘って止めない!
分かりづらい「居食い」のアタリを取る!?

一筋縄ではいかない食い渋ったヤリイカを攻略するにはどうすればよいのか? それには、ロッドティップに出にくい居食いのアタリをとらえることが第一歩です。

02_ ヤリイカ釣果
アタリをとらえ、掛けたときの重量感。その瞬間がたまらない

イカメタルではロッドを動かし誘ったのちに、ロッドを静止してアタリを待つのが一般的ですが、「居食い」するヤリイカのアタリは、静止させたロッドティップではなかなかとらえることができません。「居食い」のアタリをロッドティップでとらえるには、ティップを止めずに動かし続けることです。

そもそもロッドティップに出るアタリは、イカがスッテに飛びつくことでその振動がロッドティップに伝わり、アタリとなって表れます。居食いの場合、ヤリイカがスッテに触れたときの動きが少ないために、ロッドティップにアタリが出ません。このティップに表れないアタリを目で見て分かるアタリに変換するために、ティップの動きを止めない釣り方が有効になるのです。
ロッドティップをアングラーが意図的に動かすことで、ヤリイカがスッテにタッチした瞬間が察知できるようになる、といったわけです。

これは、いわゆる「誘い下げ」「誘い上げ」といった動きですが、動きの少ないヤリイカの小さなアタリをより大きく、ティップの変化として表れるように操作することで、アタリの有無を確認できるようになります。
しかしそれ以前に、アタリの感度を上げる工夫や、アタリの回数を増やす誘いのテクニックも重要なのは言うまでもありません。

リグは感度重視で

03_ イカメタルリーダー
自作したイカメタルリーダー。ドロッパーのハリスは長めに作っておき、現場で結び直して長さを調整すると便利

ヤリイカの微妙なアタリをよりとらえやすくするためには、ドロッパーのハリスの長さも重要です。ウネリが高い場合などを除けば、ハリスの長さは2cm程度にすることで、より小さなアタリを早くとらえることができるようになります。アワセるまでのタイムラグもなくなり即掛けしやすくなるのです。
しかし、そんな大きなメリットがある反面、スッテが動き過ぎることでイカが乗りにくくなることもあります。誘い下げする場合は、できるだけスッテの揺れを少なくするようなロッド操作が大切です。

04_ ヤリイカ2
ドロッパーは1~2本。ハリス長は状況に合わせて長さを変えるとよい

イカを惹きつける、効果的な誘い

ヤリイカのイカメタルでの誘いはケンサキイカのイカメタルと大きく違いません。リグを下げるフォール系の釣り方が基本ですが、リグを上げる誘いが単調になってはフォールでの誘いでアタリが出なくなります。スッテを大きく上げる動作、2段でシャクリ上げる動作、シャクリ上げながらロッドティップをシェイク、シャクリ下げながらシェイク…など、誘いに変化を付けることでヤリイカを焦らし、誘い下げ時のアタリをより出やすくすることが大切です。
とくにスッテシェイクはヤリイカにはとても有効です。ハリスを短く設定することでより細かくスッテが動き、ヤリイカを強く惹きつけます。

05_ スッテ
ヤリイカには小型のスッテも効果的です

攻略メソッド「誘い下げ」のステップとポイント解説

06_ ロッドとスッテのバランス
ロッドを静止してアタリを待つ状態。居食いのアタリを察知するには、この状態で意図的にロッドティップを上下させるとよい

上の写真を見てください。ロッドを止めてアタリを待っている場面を想定しています。スッテは静止した状態です。このとき、ロッドにはスッテの重さ分の力が下向きにかかっています。スッテが静止しているときは、スッテの重さで下向きに引っ張られる力と、ロッドの反発力との2つの力のバランスが取れている状態です。ここでイカがスッテに触ると、そのバランスが崩れてロッドティップが揺れるわけです。これがロッドティップに表れるイカのアタリです。

なぜアタリが分かる?
「誘い下げ」の仕組みとコツ

「居食い」の場合、イカがスッテに触れてもバランスの変化が小さく、ロッドティップに表れにくい(変化が少ない)のです。この居食いの小さなアタリを素早く感知できれば、釣果は格段に上がります。

「誘い下げ」メソッドは先の写真の状態から、ゆっくりとロッドティップを下げていきます。ポイントは不用意にロッドティップを揺らさないようにすること。慣性が働くので、ロッドの動かし始めは多少ティップが揺れてしまいますが、そのあとは等速でゆっくりと操作し、できるだけ揺れないようにロッドを下げていきます。すると海中では、スッテのスローな動きにつられてヤリイカが抱きついてきます。このとき、ロッドにかかっているバランスが崩れてティップにアタリが出るのです。これが誘い下げメソッドのアタリが出る仕組みです。

07_ 釣りシーン
ヤリイカの繊細なアタリを察知するにはロッドの調子も大切です。理想は「穂持ち」部分(=ティップよりもややロッドの胴側の部分)でスッテの重さを支え、ティップはニュートラルに船の揺れやアタリといった動きに追随する調子がよいでしょう

コツは、ロッドを操作するスピードをできるだけ一定にしてティップを揺らさないことと、ウネリなどでラインテンションが変化しないようにコントロールすることです。誘い下げのスピードは、イカの活性次第でアタリの出やすいスピードが変わってきます。活性が低ければスローに、高い場合は速めでもアタリは出ます。
アタリが出るタイミングは、スッテが潮に馴染んで静止したのち、ゆっくりと誘い下げを開始して数秒の間に出ることがほとんどです。

ティップの変化には即アワセ!
その一瞬を逃さないのがポイント!!

ティップの変化には即アワセで対応してください。「これがヤリイカのアタリ」といわれても、目が慣れないアングラーには、そのロッドティップの変化をアタリと認識するのは難しいかもしれません。それほどヤリイカのアタリは、目に見える変化としてティップに表れないことが多いものなのです。だからこそ難しく、掛けたときの喜びは大きくなります。
慣れれば、誰でも次第にコツをつかむことができます。ロッドティップのわずかな変化をアタリと認識できるようになれば、より釣り上げたときの充実感も高まるはずです。とはいえ、アタリが出るということはイカにも違和感が伝わっているということですので、そのままにしておけば直ぐにスッテを離してしまいます。間髪を入れずアワセる必要があります。しっかりと集中して、「その一瞬」に神経を研ぎ澄ましてください。

08_ ヤリイカ釣果2
釣れない時間帯でも船下にはたくさんのヤリイカがいます。この難しい時間帯を攻略できれば釣果が伸びます

「誘い下げ」メソッドはヤリイカを誘いながら、アタリをより分かりやすくすることができます。わずかなティップの変化に対応するのは経験も必要になってきますが、半信半疑でもティップの変化にアワセを入れていくことで、「ただのティップの揺れか」「イカのアタリか」次第に判別できるようになります。
ティップに掛かるテンションの変化でアタリを察知できるようになれば、スキルアップです。


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レポーターREPORTER

堀籠 賢志
プロフィール:堀籠 賢志
フライフィッシング、バス、シーバス、ロックフィッシュ、フラットフィッシュ、エギング、鮎釣りまで、さまざまなジャンルを釣りこなすマルチアングラー。現在はスーパーライトからヘビークラスまでジギング全般と、メタルスッテを中心としたイカ釣りに取り組む。
東北エリアの面白い釣りを発信することで、震災復興に繋げていきたいという熱い想いのもと活動中。
GOMEXUS社フィールドテスター /tamaTV社フィールドモニター /キーストン社フィールドサポーター などを務める。
ブログ:Anglershighごめのブログ