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「釣りはフナに始まりフナに終わる」といわれ、唱歌『ふるさと』でも「小鮒釣りしかの川」と歌われるほど古くから日本人に親しまれてきたマブナ。しかし近年では環境の変化や釣りの多様化もあり、話題に上ることも少なくなった感があります。果たしていまも身近な川に小ブナはいるのでしょうか?
そんな思いを胸に近所の水路を探索してみました。
40年ぶりのマブナ釣りへ!
まずは釣り場探しから
ことの発端は、とあるプロフィッシャーマンの方から「フナの釣れる場所が減りつつある」という話をお聞きしたこと。子どものころは私もよく釣っていたマブナですが、言われてみれば、もう40年ほど(あるいはそれ以上)フナ釣りをやっていません。ほかの魚を釣る過程でゲストとしてハリに掛かることは何度かありましたが、ちゃんとねらって釣れる場所はいまでもあるのだろうか。そんな興味がわいてきたのです。
さっそく家の周りから探索をはじめ、徐々に範囲を広げてみたものの、子どものころに通ったような釣り場にはなかなかたどり着けません…。
フナがいる川や水路はあるのですが、大半はコンクリートの三面護岸となっていたり、金網に囲まれて川岸まで降りることができなかったり。いまはフナを釣る人も少ないせいか、釣具屋さんで話を聞いてもめぼしい情報は得られませんでした。
そんななかでも、あちこち歩き回るうちに川幅2m~3mでマブナがいそうな水路を何ヵ所か発見できたので、竿を出してみることにしました。
短竿にウキ釣り仕掛。タナゴやテナガエビ仕掛も使用
今回使用した竿は、2.1mから2.7mまで3段階にズーム可能な小継ぎののべ竿。マブナやクチボソ、テナガエビといった小物釣りに適した竿です。私はこれを、主に2.1mの長さで使用しました。
仕掛は市販のウキ釣り仕掛でスタート。1号の道糸に0.6号のハリス、袖バリ3号という仕様です。私自身久しぶりのマブナ釣りなので偉そうなことは言えませんが、子どものころもこんな仕掛で釣っていた記憶があります。
そして食い渋り時の対策として、テナガエビ用の仕掛とタナゴ用の仕掛も持参。どちらも糸やハリのサイズが一回り小さく、感度のよい小型のウキが付いているのが特徴です。仕掛をまるごと変えなくとも、上記のウキ釣り仕掛のまま、ウキやハリだけを交換してもよいかもしれません。
エサは現地でミミズを調達
エサはミミズ。せっかくなので、幼少のころを思い出して現地で掘ってみることにしました。幸い釣り場の周囲にはミミズのいそうな場所がたくさんあり、シャベルや木切れを使ってかんたんに捕獲することができました。ミミズがいるのは柔らかい土の上に落ち葉や枯れ葉が堆積したところ。土を掘るというより、落ち葉をどけるような感じでOKです。
ミミズはハサミで1.5~2cmサイズに切って使うので、数匹取れれば十分。3匹もあれば2~3時間の釣りを楽しむことができますし、足りなくなってもすぐに補充できます。ミミズが取れないときや、ミミズでは食いが悪いときのためにチューブ状の練りエサも準備しておけばなお安心ですね。
いきなりオイカワの連打!フナは底ギリギリでヒット
こんなタックルでいよいよ第1投。狭い水路に自分の影を落とさないように気を付けながら、そっと仕掛を振り込みます。
警戒心からか最初はなかなか食い付いてくれませんでしたが、少し経つとエサに興味を見せ始め、何回目かのトライでようやくヒット。ウキを勢いよく消し込み、キュンキュンと小気味よい引きを見せて上がってきたのは良型のオイカワでした。この魚も私の子ども時代のよき釣り相手でしたが、ちゃんと釣ったのは久しぶり。嬉しい出会いです。
オイカワはしばらく釣れ続きましたが、肝心のフナはまったく食ってきません。もしかしてウキ下が浅すぎるかな? そこで少しウキ下を深くして底を探ることに。しかし今度は深すぎたのか川底を引きずってしまい、藻や落ち葉がひんぱんに掛かってきます。この状態で釣れるのはマハゼ、チチブ、ヨシノボリなどのハゼ系ばかりでした。
そこでさらにウキ下の微調整を繰り返して川底につくか、つかないかのギリギリを流すと、モゾモゾというアタリのあとにウキが大きく沈んで待望のマブナをゲット。丸々と太った可愛いマブナに、思わずニッコリしてしまいます。
続けて仕掛を投入すると、今度はウキが横にスーッと動きました。「そうそう、このアタリ!」いかにもマブナらしいアタリを喜びつつアワセると、先ほどとは違う重量感が伝わり、10cm近いマブナが上がってきました。
この日はミミズに軍配
これでマブナの釣り方はなんとなくつかめたので、そのあとは同じウキ下で底スレスレを流して8尾のマブナをゲット。小さい魚はその場でリリースしつつも、バケツにはどんどん魚がたまっていきます。
ちなみに予備エサとして持参したチューブ練りエサも試しましたが、オイカワとヨシノボリが数尾釣れたのみ。この日はミミズに軍配が上がりました。現地で取れるエサが一番強いというのは、今も昔も変わらないのかもしれませんね。
こうしてひょんなことから始まった40年ぶりのマブナ釣り。「フナに始まりフナに終わる」という通り、かんたんでありながらもちょっとしたエサの違いや流すコース、微妙なウキ下の違いが如実に釣果に表れ、思わず夢中になってしまいました。
大物釣りのスリルとは無縁の世界ですが、お金も掛けずに子どもから大人まで誰もが楽しめて奥が深い小物釣り。今後も四季を通じて楽しんでいきたいと思います。もしも身近にこんな釣り場があったら、みなさんもぜひ竿を出してみてください。
レポーターREPORTER
1960年東京都出身。釣り媒体の編集・ライティングを経て現在はフリーランスで活動するライター。得意な釣りは、淡水・海水のルアーゲームをはじめとした身近なライトゲーム全般。間口が広く奥の深い釣りがとくに好き。「釣りは釣れなくても楽しい」がモットー。