来年こそ源流のパラダイスへ!
自然を独り占めできる「源流泊」のススメ

渓流釣りをやったことがある人は「こんな綺麗な沢の中で泊まってみたい!」「日帰りではいけないようなもっと上流部まで攻めてみたい!」と思ったことがあるのではないでしょうか? それを叶えるのが「沢泊」「源流泊」です。

キャンプ場でのキャンプなどでも十分に自然を楽しむことはできますが、源流泊はより奥深く自然に入り込み、その自然の一部になったかのような没入感が得られます。
暮れゆく山の中で焚き火をして、日中釣った渓魚や山菜といった山の恵みを楽しむのも格別ですし、沢の音で目を覚まし、自分以外誰もいない沢を朝から独り占めできる特別感も源流泊ならではです。

一方で管理されているキャンプ場とは違い、大自然の中で泊まる源流泊はリスクが大きいのも事実。当記事では源流泊のやり方や、源流泊のリスクマネジメントの一部をご紹介します。
今年はもうすでに禁漁期になってしまっていますが、当記事を参考に、来シーズンはより深く大自然を満喫してみてはいかがでしょうか?

01_ 渓流釣り

どうやって源流に泊まるの?

テント泊

02_ テント泊

キャンプをしたことがある人にとってはテントを使った源流泊がもっともカンタンな方法かもしれません。また、テント泊は雨や虫に対する防御力が高いことや、少し肌寒い季節でも保温性が高いことがメリットといえます。

一方で、荷物を背負って沢を遡行しなければならない源流泊では、テントは登山用などの軽量なものを選ぶ必要がありますし、源流においてテントを張るための水平かつ岩などでゴツゴツしていないスペースは意外に見つかりにくいのが難点といえます。
源流部の多くの地面は岩や石ですので、マットはエアー式の5cm以上厚みのあるものがゴツゴツ感を緩和してくれておススメです。

ハンモック泊

03_ ハンモック泊

私が源流泊で一番おススメするのがハンモック泊です。

先にも述べた通り、源流においてテントを張れる場所はかなり限られますが、ハンモックなら適当な間隔の木が2本あれば斜面であろうが下が岩場であろうが快適に寝ることができます。さらにハンモックはテントに比べると圧倒的にコンパクトで軽量なのも魅力です。専用のロープと合わせても片手に乗るほどで、重量は500g程度です。

04_ 雨をしのぐ

ハンモックの値段はピンキリですが、私は無名ブランドの3000円ほどの、いわゆるパラシュートハンモック(パラシュートのような薄くて軽量な生地でできているハンモック)をメインで使用しています。設置はひじょうにかんたんで、専用のロープを木に1周してカラビナをかけて終了。実に3分もあれば終わります。
デメリットとしては当然屋根も壁もないので、雨や虫に対しては何も防御力もありません。ただし虫に関しては蚊帳付きのハンモックもありますし、ハンモックの上にビニールシートをかければ雨も防ぐことはできます。

さらに、テントとハンモックのいいとこ取りともいえるこんな商品もあります。

05_ ヘブンテント

こちらのヘブンテントという商品は屋根と蚊帳がセットになっており、独自の構造で、ハンモックでありながら完全にフラットな床面が設営できます。もし適当な木が見つからないときは自立させてテントとしても使えるというものです。
ただしこちらの商品は登山用のテントかそれ以上のお値段がすることと、テントよりもかさ張り、重いという欠点もあります。

源流泊のリスクマネジメント

気象情報の確認

06_ 山間部の積乱雲

源流泊で最も怖いのが増水です。とくに気をつけなければならないのが、鉄砲水などの急な増水。当然、増水に至るような降水が予報されているような状況では源流泊を避けるべきです。そして降水が長い時間予報されていないときでも気をつけなければならないのが「驟雨(しゅうう)」です。驟雨とはにわか雨のことですが、実は山間部のにわか雨は予報がひじょうに難しいのです。

私は夏場に渓流に入った際、急に源頭部に積乱雲が発達してにわか雨が降り始め、嫌な予感がして沢を出ようとした瞬間に鉄砲水に襲われたことがあります。あと数分撤退の判断が遅れたらひじょうに危険な状況でした。
鉄砲水は急に水が濁るなどの予兆があるといわれることもありますが、私が経験したケースでは全く予兆はありませんでした。そして当日の天気予報の降水確率は10%程度であり、一般の天気予報で驟雨のリスクを把握することは難しいと感じました。

驟雨発生のリスクを知るには、大気の安定度を把握する必要があります。大気が不安定であればあるほど山間部は急な積乱雲の発生のリスクが上がるのです。
大気の安定度は「SSI(シュワルター安定指数)」という指数で把握することができるのですが、SSIの値が高いほど大気は安定しており、逆に低い場合は大気が不安定なことを示します。そして、SSIの値が0からマイナスになるとにわか雨のリスクが上がるといわれています。

SSIは「GPV気象予報」というサイトで確認可能です。詳細モデルでは1時間ごとの予測を39時間後まで、広域モデルでは11日先までの予測を確認することができます。「モデル(詳細か広域か)」「エリア」を選択し、項目をSSIに設定することで予想モデルを表示できるので、事前に確認してみてください。
源流泊をする際はSSIを確認し、にわか雨のリスクがある場合は避けるようにしましょう。

07_  GPV
この例だと関東の北部などでSSIがゼロ以下になり、大気が不安定になることが予想されています
出典:GPV気象予報

参考:GPV気象予報 http://weather-gpv.info/

源流泊の場所の選定とエスケープルート

源流泊で重要なのが場所の選定です。万が一、急な増水が発生したとしても水が迫ってこないような高台に場所を設定するようにしましょう。川の中洲などは増水した際に身動きが取れなくなるので、絶対に避けるべきです。また、落石にも警戒する必要があります。背後が急峻な崖(斜面)などで、上から落ちてきたと思われる岩が転がっているような場所は避けましょう。

そして、エスケープルートの設定も大切です。急な増水などにあった際、沢から安全に離れることができるルートを確保できるような場所を選定しましょう。たとえばすぐに登山道や林道に出ることができる場所などが理想です。

いかがでしたか? 自然を最大限に満喫できて、スレていない渓魚が遊んでくれる確率も上がる源流泊。ぜひ、安全に気を付けてトライしてみてくださいね。

08_ トラウト

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レポーターREPORTER

SHUTO
プロフィール:SHUTO
本職はパイロット。仕事でもプライベートでも陸海空のフィールドを問わず駆け巡っている。人生でどれだけ地球を楽しめるかがモットー。とくに好きなフィールドは渓流とオフショア。