憧れの沖磯釣行へ!
…その前に知っておきたい渡船の流れと準備

01_ 釣りシーン

フカセ釣りは主に堤防や地磯、沖磯をフィールドに「グレ(メジナ)」や「チヌ(クロダイ)」、「マダイ」などをターゲットにしたエサ釣りです。なかでも渡船を利用して沖磯に渡る「磯フカセ釣り」は、陸地から離れ、魚が豊富で自然に恵まれた雄大な環境で釣りができるダイナミックさが魅力。沖磯には大物が潜んでいる場合も多く、大型魚をねらいに沖磯に通うフカセ釣り師も多いのです。
とはいえ、フカセ釣りに限らずルアー釣りであっても、沖磯釣行というと「少しハードルが高い…」と感じる方も多いのではないでしょうか。沖磯に行くには渡船を利用しますし、安全のための装備も必要になります。今回は「いつかは沖磯で大物をねらいたい!」という方に向けて、沖磯釣行の準備や段取り、装備についてご紹介します!

いざ沖磯へ!
渡船屋の予約と利用のお話

沖磯釣行に行くためには数日前から準備を進めなければなりません。いわゆる「釣行スケジュール」を決める必要があります。スケジュールといっても「いつ」「どこで」釣りをするかを事前に決めるだけです。
また、釣行時には前もって天気、風、波予報も確認しておきましょう。下調べの段階で釣行が難しいようであればスケジュールの変更も必要になります。「波は少し高いけど、これくらいなら行けるだろう…」と無理をすると思わぬ事故に繋がることも…。釣り場の本当の状況は現場でしか分からないことがほとんどですが、自分の中で「判断基準」を持っておけば無理なく釣行できますね!

02_ 沖磯風景
沖磯の風や波は読みづらく予報が外れることも。事前に下調べしておくことで思わぬ事故やトラブルを未然に防ぐこともできるかもしれません。安全に楽しむためにも意識づけしておきたいですね!

スケジュールが決まったら、都合に合わせて渡船屋を選びます。
「渡船屋」とは沖磯に渡礁するうえで欠かせない存在で、釣り専門の渡し船のことです。磯釣りが盛んなエリアには沢山の渡船屋さんがありますから迷うことも多いと思います。初めての場合には近隣の釣具屋さんで情報収集をするとよいでしょう。また、渡船屋さんが開設しているSNSなどで釣果を見て決めるのもアリだと思います!

利用する渡船屋さんが決まったら「予約」をしなければなりません。基本的に当日受付は難しく、少なくとも前日までには予約を済ませておきます。予約の際には「日時」と「人数」を伝え、空きがあるかを確認します。
磯割(その日に渡礁できる磯)は人数によって決まります。人数が多い場合にはそれなりにキャパシティのある磯になりますし、少ない場合には小さな磯に乗ることもあります。予約時には人数を確定させておくことが大切です。

03_ スマホ
電話をすると渡船屋の船長、またはスタッフが対応してくれます。最近ではホームページやSNSのメッセージなどでも予約できる渡船屋さんが増えています

予約が完了すると、必ず船長から「出船時間」と「集合場所」を伝えられます。出船時間はシーズンや海のコンディションにより異なりますが、現場では30分前には身支度を終えてスタンバイしておけば大丈夫です。また、集合場所については事前に下調べをし、駐車場の有無も確認しておきましょう。
また、出船時間と集合場所のほかに「渡礁したい磯はありますか?」と聞かれることもあります。希望した磯に乗れることもあるのでリクエストをしてみてもよいかもしれませんね! 沖磯釣行が初めての場合には「初心者です」と一言伝えておけば、渡礁が楽で釣りのしやすい磯に乗せてもらえることもあります。

さて、これで予約完了です! あとは釣行日に向けて準備を進めるだけですね。
ちなみに、万が一悪天候やトラブルなどで予約後に出船できなくなってしまった場合には、前日のうちに渡船屋さんから連絡があります(出船確認の電話を釣り人側から行う場合もあります)。前日は最終確認と思って、心の準備をしておきましょう。

これだけは外せない!
命を守るマストアイテム

04_ タックル一式

渡船屋の予約が完了したら磯釣りに必要な道具、装備の準備を進めていきます。釣竿・リール・ハリなど釣りをするうえで必要な釣り道具はもちろんですが、忘れてはならないアイテムがあります! 「ライフジャケット」「スパイクシューズ」です! この2つは沖磯釣行に欠かすことのできないマストアイテム。もちろん、堤防や地磯でも安全のため装備しなければなりませんが、沖磯では必ず着用しなければなりません。

まずはライフジャケット。細かい釣り道具や装備品を収納できる便利さもありますが、ライフジャケットは万が一落水したときに浮かせてくれる命を守るアイテムです。最近は落水事故が増えていることもあり、ライフジャケットを着用していなければ乗船できません。

05_ ライフジャケット
ライフジャケットには数種類ありますが、沖磯に行く場合には「股紐付きライフジャケット(固型式)」を着用しましょう。釣行前には股紐の有無、フローティング材のチェックをしておくと安心ですね!

もう1つはスパイクシューズ(ブーツ)です。磯場はアスファルトのように平坦ではなく、ゴツゴツしていることがほとんどです。また、滑りやすい海苔や海藻が付着していることもありますし、波などをかぶって濡れていることも多々あります。スパイクシューズであれば滑りにくく、転倒を未然に防ぐことができます。また斜面になっている場所もあるので、踏ん張りが効くシューズが必要となります

06_ スパイクシューズ1
07_ スパイクシューズ2
磯専用のスパイクシューズ。足首までしっかりとホールドされており、靴底は滑りにくいフェルト付きスパイク仕様。これなら滑りやすい磯の上でも安全です

沖磯での一番のリスクは「転倒による落水・滑落」だと思われます。もちろんリスクはそれだけではありませんが直接命に関わります。安全に沖磯釣行を楽しむためにも必ずそろえるようにしましょう。

渡礁から帰港
流れを知って安全第一!

釣行当日はライフジャケット、スパイクシューズを着用した状態で乗船。出船を待ちます。ロッドケースやバッカン、クーラーボックスなどを自分のものと分かるようにまとめて船に乗せておきましょう。渡礁する順番を事前に船長から伝えられた場合には、船の先端に近い場所に荷物を置いておくとスムーズに受け渡しができますね!
さて、いよいよ出船です。沖磯へは数分で到着する場合もあれば、1時間近く船を走らせることもあるので船酔いには要注意です。不安な人は酔い止めを忍ばせておくとよいでしょう。渡船には備え付けのベンチやキャビンがある場合が多いので、放送で名前を呼ばれるまではのんびりと待機しておきましょう。

08_ 朝日
乗船したら船の後ろ側にあるベンチやキャビンで待機します。渡礁前は「どんな魚に巡り合えるか」期待と不安でいっぱい。独特な雰囲気がありますね!

「○○さ~ん」と放送で呼ばれたら、船の先端に向かいます。自分の荷物を確認したらデッキ付近に置き、忘れ物がないかを確認して船が磯に着くのを待ちます。このとき、船長は波の状況を見ながら船を着けるので、船長の視界を遮らないようにしましょう。船が着いて安全に降りられると船長が判断したら「どうぞ~」と声が掛かるので、速やかに渡礁します。
波によるアップダウンがあるため船を磯に着けられる時間はほんのわずかです。自分で持てる軽い荷物を持ち、慌てず降りましょう。もし、ポーターやほかの釣り人が同乗している場合、初心者の方は身一つで降りてもよいでしょう。磯に降りてから荷物を船から渡してもらえば安全に渡礁できます。

09_ 磯
渡礁が完了したらできるだけ高く安定した場所を探し、持ち込んだ荷物を置きます。沖磯は潮位が上がったり、風向きによって高波が発生することがあるので荷物が流されないように注意しましょう。荷物が流されない、飛ばされない対策もときには必要です

無事に沖磯に渡り釣りを楽しんだら、あっという間に帰りの時間…。お次は帰港時の流れです。
沖磯は堤防や地磯とは違い帰港時間が決まっています。港から出船するタイミングか渡礁時、または、見回り(船長が様子をうかがいに見回りにくる)のタイミングで迎えの時間を伝えてくれます。ですから、その時間に合わせて釣りを終え、帰港する準備をしておかなければなりません。
ついつい釣りに没頭していると時間も忘れがちに…。まして、釣れ続けている状況なら釣りを継続したくもなるでしょう。しかし、船の迎えが来る直前に「もうこんな時間!?」と慌てて片付けをしなくてもいいように、しっかりと時間配分しておくことが大切です。船の到着前に持ち込んだ荷物の片付けと磯の清掃を行い、余裕をもって迎えを待つのが理想です。

10_ 帰り支度
撤収時間までに片付けと清掃を終えておきます。磯は「来たときよりも美しく」を心掛けて綺麗にしましょう

帰港時は磯から船に乗り移ることになります。このときも渡礁時と同じで、磯に船を着けていられる時間は短いため速やかに乗り込みます
単独釣行の場合は前述したようにポーターやほかの乗船者の方に荷物を渡してから乗ると安心です。逆に複数人で渡礁している場合には1人が乗り込み、流れ作業のように荷物を受け渡していくのもよいでしょう。全員が乗り込み、忘れ物がないか確認したら帰路につきます。

 

11_ グレ

何といっても沖磯は堤防や地磯では巡り合えない魚に遭遇できたり、大自然を感じながら釣りを楽しめる魅力があります。もちろん自然相手ですから、天候や状況に左右されやすく危険と感じるシーンもあります。船長が危険と判断すれば釣行当日でも出船できなかったり、渡礁できても数時間で撤収しなければならないことがあることも知っておきましょう。そういったことも知ったうえで、正しいルール、安全な装備で沖磯釣行に挑戦してみてください。
これからは春磯シーズンです! 気候も安定し、のんびりと沖磯釣行を楽しめる季節となります。みなさんもぜひ、沖磯へ渡って大型魚をねらってみてはどうでしょうか?

12_ 釣果オオモンハタ

 

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レポーターREPORTER

鷲見 大地
プロフィール:鷲見 大地
1998年岐阜県生まれ /兵庫県在住
「海なし県」育ちということもあり河川で釣りを覚え、渓流ルアーフィッシングや鮎の友釣りをメインに釣りを楽しむ。釣具メーカー・ハヤブサに勤務し、最近は堤防・磯釣り・船釣り、SWルアーフィッシングなどに触れながら、日々勉強中。