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「釣果アップの勘所」第14回のテーマはタチウオの引き釣り。大阪湾や播磨灘、淡路島沿岸など近畿圏の防波堤や護岸などの釣り場では初秋からタチウオ釣りの人気が高い。近年は人気のルアーフィッシングの陰に隠れ、やや存在感が薄れたように感じなくもないが、エサ釣りもまだまだ捨てたものではない。そんなエサ釣りのひとつである「引き釣り」について釣果アップのツボをまとめた。
横(距離と角度)と縦(水深)両方で
釣りを組み立てるのが引き釣り
タチウオの引き釣りは「タチウオテンヤ」と呼ばれる鉛のヘッドの後方に大きな下向きフックが付いた専用の道具にエサをセット。沖に向かって投げ込み、テンヤをルアーのように引いてタチウオを食わせる釣りだ。
単純には似たようなテンヤを使う船のタチウオ釣りの「上下の動きを横方向にしたもの」と理解してもらえばよいが、陸上からの引き釣りは横方向の動きに加え、テンヤを引く水深(タナ)というファクターも加える必要があるため、より釣りの組み立ては複雑だ。
古くから大阪湾などで盛んだった引き釣りだが、以前は専用タックルなどはなく短めの投げ釣り用の竿とリールを流用、ラインも当然ナイロン3~4号だった。しかし近年は一部ではあるが専用ロッドも発売されるようになり、ラインもPE(0.8~1.5号)が使われるようになった。身近なところでシーバスタックルなら竿もリールもそのまま使える。
ドジョウと冷凍キビナゴ
一長一短があるエサ
引き釣りのテンヤにセットするエサはドジョウもしくは冷凍キビナゴだ。ドジョウは冷凍物もあるが、できれば生きているもの(テンヤにセットする際はショックを与えたり、エラブタをハサミで切るなどして動きを止める)がよい。釣果という点では直前まで生きていたものにかなわないようだ。ドジョウはエサ持ちがよく1尾のドジョウで数尾のタチウオを釣ることも可能。
一方で冷凍キビナゴは身が軟らかいので、ドジョウのように何尾ものタチウオを釣ることは難しい。タチウオを1尾釣るたびに、またアタリがない場合も身崩れしたら即座に交換する必要がある。ただしキビナゴはドジョウにくらべずいぶん安価なので、近年はキビナゴ一辺倒のアングラーも多い。
いずれのエサの場合もテンヤフックの軸に沿わせ真っ直ぐにセットすることが必要だ。「少しぐらい歪んでいても大丈夫だろう」と高をくくっていると、隣ではアタリがあるのに、まったくアタリが出ないことも多い。水中でテンヤの動きがイレギュラーになり、それをタチウオが嫌うのかもしれない。
またテンヤのフックサイズに対し大きすぎるエサもよろしくない。もともと小さいキビナゴは関係ないが、大きすぎるドジョウは考え物。そんな場合はドジョウの頭部をハサミでカットしてテンヤにセットしよう。目安はフック後端から尾ビレが出る程度だ。
最近のテンヤはワンタッチでエサをセットできるものもあるが、基本は付属の針金を巻き付けてエサを固定する。ドジョウでもキビナゴでも硬い頭の部分をきつく多めに巻き、後半のボディーには粗くさっと巻き付けるだけでよい。余った針金は前方へ巻き返しヘッド付け根付近のフック軸などに巻き付けておく。
ゴールデンタイムは日没前後
短時間に能率よく釣る方法
よほどタチウオの個体数が多く活性が高い場合を除き、引き釣りタイムは日没直前から2~3時間。朝は逆に日の出前後の短い時間帯のみというのが一般的だ。つまり日没前後、日の出前後というタチウオが浅場に接岸し浅いタナまで活発にエサを追う時間帯に能率よく釣るのが引き釣りだ。
そんな短い時間帯に能率よくタチウオを釣り上げるには手返しのアップしかない。ワンタッチでエサを交換できるテンヤは別にして、針金を巻き付けるテンヤの場合は、エサをセットしたテンヤを複数組スタンバイし、エサの限界(ズレたりボロボロになったり)を感じたらすかさずテンヤごと交換することが望ましい。エサ交換の手間だけでも釣果に差が付くことが多い。
重めのテンヤで浅ダナを引くなら
竿先を天に向ける段引きが有効
その昔、テンヤの引き方はゆっくりリールを巻くだけ、いわゆるタダ巻き一辺倒(もちろんタチウオが多く高活性の場合はこれでOK)だったが、近年はルアーフィッシングの影響もあり、さまざまなアクションを加える人も増えたと思う。
ただ、重要なのはテンヤを引く速度とレンジ(深さ)の兼ね合いだ。日没前のまだ明るい時間帯はタチウオの泳層も深く、投げ込んだテンヤをしっかり沈めてからテンヤを引かないとバイトに結び付かないが、暗くなるにつれタチウオはどんどん浅いタナまで浮上しエサを追う。
ゴールデンタイムと呼ばれる日没前後の時間帯は、テンヤの数十cm上に取り付けたケミカルライトが見え隠れするほど浅いタナで食ってくることが多い。ここで問題になるのがテンヤの重量だ。
比較的軽いウェイトのテンヤを使用する場合は、表層近くをスローに引くことはかんたんだが、風が強かったり潮が速い場合など、どうしても軽いテンヤで釣ることが難しく重めのテンヤを使わないと釣りにならない場合が問題…。
前提として竿先でアタリを取る釣りなので、テンヤを引く際のライン角度は竿先に対し90度前後が望ましい。タチウオに違和感を与えず食い込ませる意味でも竿先の弾力が活かせるこの角度は必須だ。
そして重要なのが「竿先の高さ」。竿先を海面に向けることがあったり、竿を水平に構えてリーリングすることもあるこの釣りでは、使用するテンヤが重めの場合、なかり速く引かないとテンヤは深く沈んでしまう。ゴールデンタイムなどタチウオのタナが浅い場合、タチウオの泳力以上に速く引くと、これではなかなかアタリが出ないということになってしまう。
こんなときは軽めのテンヤに交換するのも方法だが、向かい風が強かったり流れが速い場合、これでは厳しい…。
そこで実践してほしいのが竿先角度。水平以上、ときには竿先が天を向くほど竿先を高く上げてテンヤを引く。ライン角度が上を向き、その分だけテンヤが持ち上げられ浅いレンジをキープしやすいのだ。
さらに竿先を上に向けてもスローなタダ巻きでは浅いレンジを引けないと感じたら(目印のケミカルライトに注目)、テンヤを持ち上げる感じで、竿を数十cmから1mほどのピッチで素早く段引きするのも方法だ。水平の竿先位置からグッ、グッ、グッと3~4回の段引きで天を向くまで。すかさずラインが緩まないようリールを巻きながら竿先を元の位置に戻し、同じ動作を繰り返す。
段引きした瞬間はテンヤの移動速度はクイックリーかもしれないが、段と段の間でポーズが入ることで、いわゆるストップ&ゴー状態になるため、タチウオのバイトチャンスが生まれる。
また竿で引くためアタリがダイレクトに伝わり、フッキングも同じ動作の延長で瞬間的に決めることができるはず。注意点はテンヤ上に付けたケミカルライトが沈みすぎないこと、また浮きすぎないこと。これらに気を付けて段引きでタチウオ連発させよう。