東京で楽しむ小さな釣り 東京で人気のハゼ釣りポイントを巡る
そのウマさはシロギスの1.2倍ですって??

都内および近郊の親水公園や川(水路)といった身近な場所で、コンパクトな道具を使って楽しめる釣りを紹介する当企画。第2回目の今回は「ハゼ釣り」です。

私のハゼ釣りの経験はというと、いわゆる「落ちハゼ」をねらいに江戸川放水路の船宿から和船に乗った1回だけ。落ちハゼとは、10~12月にかけて水温が下がるにつれ深場に落ちていくハゼのことなのですが、大型が釣れることも多く、東京では晩秋の風物詩となっています。船長さんが釣れるポイントに連れて行ってくれるというのもあって、同伴者におすそ分けできるほど釣れた記憶があります。

しかし、今回は初めてのオカッパリハゼ! そして残暑厳しい晩夏から秋のシーズン。思惑通り釣れるのか…、以前から行ってみたかったポイントを中心に「粘りのハゼ釣り」を繰り広げた模様をレポートします。

昭和の下町風景と高層ビル群
独特な空間を感じられる「佃堀」から

02_ 月島駅
最寄り駅はもんじゃ焼きで有名な「月島」

最初に選んだポイントは中央区佃(つくだ)にある「佃堀(つくだぼり)」。都営大江戸線月島駅から徒歩5分という、アクセスのよい場所にある人気のハゼ釣りポイントです。

この「佃」という地名の由来について少しお話しますと…。
江戸時代、徳川家康が江戸を支配することになった際、彼は大阪から多くの人々を江戸に呼び寄せ、都市の発展を図りました。このとき、摂津(大阪府)西成郡佃村の漁師33人が江戸に呼ばれたのですが、江戸にやってきた佃の漁師たちは、名もなき小島に「佃島」という名前を付けて住むようになりました。のちに埋め立てられ陸続きとなり新しい町名「佃」となったのです。

03_ 佃堀カモ
ときどきお尻をふるふるっとさせて泳ぐカモたち

また、「佃煮」という食べ物もここ佃から広まったといわれています。江戸時代は気象が不安定なこともあったそうで、漁師たちは悪天候の日には漁に出ることができず、代わりに煮物を作ることがありました。その結果、彼らが作る煮物が「佃煮」と呼ばれるようになったそうです。
さらに、参勤交代の時代になると、大名や武士たちが江戸と自分の領地とを行き来する際、佃煮は持ち運びが便利であったため、ひじょうに人気のある食品となりました。そういったことから、江戸時代の日本において佃煮は広まることとなったのです。

このようにして東京都中央区佃の名前は、大阪から呼ばれた佃の漁師たちによって名付けられ、彼らが江戸で作った佃煮は参勤交代を通じて広まったという、歴史的な背景に由来しています。

佃堀のシンボルにもなっている赤い橋の向こうにはたくさんの高層マンションが並びます。昭和の下町風景と近代的な高層ビルのコントラストが独特の空間を造っています。

01_ 佃堀1
昭和の下町風景と高層ビルのコントラスト

佃堀で初めてのウキ釣りにチャレンジ

今回準備した仕掛はハヤブサの「かんたんハゼウキ釣りセット」。のべ竿専用の仕掛なので、竿は振り出し式ののべ竿を使いました。

こちらの仕掛にはかんたんに取り外しができる玉ウキがセットされており、玉ウキをセットするためのウキ止めゴムを上下に動かすことで、水深に合わせてウキの位置を変更することが可能です。

とはいえ、何を隠そう今まで「ウキ」を使った釣りをやったことがありません! 揺れる船釣りメインで釣りをしているため、手の感触でアタリを判断するといった経験しかなく、果たして私は小さなウキの小さな動きを見てすぐに反応することができるのでしょうか…? 自身の反射神経が試されます。

カシメオモリで水深を確認するところから

ウキ釣りで最初にやることは、水深を確認し、ベストなウキの取り付け位置を決めることです。そのために、まずはハリに近い場所に一時的なオモリを付けます。
私が今回使用したのは、カワハギ釣りで中オモリなどの用途で使われることの多い、ワンタッチ式のシンカーです。カシメ構造になっているので、爪で広げてハリスを挟み込むようにしてかんたんに取り付けることができます。

06_ ワンタッチシンカー
黄色いパーツが一時的なオモリ(カシメオモリ)

写真のように、ハリに近いところにオモリを付けてポイントに沈め、玉ウキが水中に潜ってしまった場合は玉ウキが下過ぎるので上にずらし、逆に玉ウキが水面で横になった場合は玉ウキが上過ぎるので下にずらします。この作業を繰り返し、玉ウキの下すれすれに水面がくるように調整すればタナ合わせ完了です。

エサはハゼ釣りの定番「ハゼほたて」

07_ ハゼほたて

最初に使ってみたエサは「ハゼほたて(マルキュー)」。ハゼ釣りを楽しむ人たちの間でも人気の虫じゃないエサです(笑)。船釣りと違いオカッパリはエサを自分で調達しなければなりませんが、「ハゼほたて」は常温保存できるので、イソメのように釣行の直前に用意する必要がありません(開封後は早めに使い切りしょう)。
買っておいたイソメを冷蔵庫に入れておいて家族に怒られた…という話をたまに耳にしますが、これであれば家族に迷惑を掛けることもないというわけです。

今までも、コンビニやスーパーで売っているホタテの貝柱を使ってハゼ釣りをする人がいましたが、この「ハゼほたて」はハゼが好むエキスが添加されているので、より期待が持てますね。見た目は美味しそうな貝柱ですが、食用ではありませんのでご注意を!

佃堀でハゼ釣りスタート!

10_ 佃堀釣り

さぁ! ハゼ釣り開始です。デッキの上から仕掛をたらし、あとはひたすら玉ウキが動くのを待つのみです。今までの釣りでは、底をとってから2m巻き上げてアジを待ったり、ひたすら底を小突いたりしてマダコを待つような釣りばかりしていたので、どうも底をとらない釣りは不思議な感覚ですね。

開始場所のデッキからの釣りは、残念ながら玉ウキが動くことなく終了。そばに見えている赤い橋の向こう側でやってみることにしました。
すると移動してビックリ! ハゼがたくさんいるではありませんが! 足下のコンクリートブロックのところだけでなく、離れた砂地のところにもハゼが群れをなしていました。ちょうど干潮に向かう時間だったので、どんどん見えてくるハゼ(笑)。

11_ 佃堀底
お分かりいただけるでしょうか…? ハゼがいっぱい!

こうなると、もはやウキを使う必要もなくなります。仕掛はそのままに玉ウキだけ外し、代わりに水深を確認するときに使ったカシメ式のオモリを装着して、ミャク釣りへと作戦変更です!
ちなみに「ミャク釣り」とは、竿を持った手でハゼのアタリを直接感じ取って釣り上げるやり方。プルプルっときたら抜き上げるシンプルな釣法です。

ほたての付いたハリを落とすと、ハゼたちが集まってつついてはくるのですが、なかなかハリ掛かりしない…。どうやらハリのサイズが大きかったようです。エサだけが永遠と取られ続けました(笑)。
釣るのではなく網ですくったほうが早いレベルのハゼだまりでしたが、ここでタイムアップとなり、ツ抜けに届かず佃堀での釣りを終えました。

12_ 佃堀ハゼ2
釣れるには釣れましたが、小さいハゼはリリース

住吉神社で道中の安全を祈願

13_ 住吉神社
某アニメの舞台にもなっているとか

次のポイントに移動する前に、佃堀そばにある住吉神社に立ち寄ってみました。海上安全、渡航安全の守護神として信仰されているらしく、釣り人としては素通りするわけにはいきませんね。

14_ だるま
粘り強さのシンボル! おきあがりこぼしのだるま

色とりどりのかわいいだるまのおみくじがあったので、紫のだるまをチョイス。紫のだるまは「道中安全・出世開運」の祈願が込められているとのこと。「はじめに願をかけて左目に墨を入れ、願いが叶ったら右目を入れて開眼させ、お焚あげをしましょう」と書かれていました。願掛けもいいですが、7色全部そろえて飾ってもかわいいかも。