堤防からクロダイをねらう!
ウキ釣りのメリットと好ポイントの見つけ方!

全国各地の沿岸に多く見られるクロダイは、関西では「チヌ」と呼ばれていることを釣りファンのみなさんならよく知っていることでしょう。古くから利用価値の高い魚のなかにはこのようにたくさんの地方名を持っている魚が多いのですが、それだけ庶民にとって身近な存在であることから、釣りの対象魚としても人気の高いことが伺えます。
そんな人気のクロダイをねらって、いろいろな釣り方が確立されていますが、それぞれに奥の深い楽しみ方があります。

そのなかから今回は、身近な釣り場で好釣果を望むことができる「ウキ釣り」についてお届けしましょう。

01_ クロダイ釣果
02_ クロダイの取り込み

クロダイをねらうには?
そして、そのコツとは?

クロダイのウキ釣りは大別して2通りあります。一つはマキエをダンゴ状に丸めてその中にサシエを包む「ダンゴ釣り」。地方によっては「紀州釣り」あるいは「紀州釣りスタイル」など、別の呼び方もあります。もう一つは「ウキフカセ釣り」あるいは単に「ウキ釣り」と呼ばれる釣り方で、今回紹介させていただく釣り方です。(ここでは以下「ウキ釣り」と表記させていただきます)

03_ 釣りシーン
04_ ウキ釣り
ウキが沈む瞬間のドキドキがたまらない「ウキ釣り」

このほかにクロダイを釣る方法としてはルアー釣り(チニング)や落とし込み釣りなどがあり、これらは装備が手軽で、食い気のあるクロダイがいればすぐに釣果を得ることができます。しかしながら手軽に行ける都市近郊の釣り場ともなると、連日、そこにいる釣り人に朝から晩まで攻められてしまうため、これらのエサや仕掛を見切ってしまう(=スレてしまう)ようになります。
そうしたことから、釣果を上げるコツはこまめに場所を移動することと、しばらくの間ほかの釣り人が攻めていないポイントをねらうことです。そのためには、よりポイントに精通していることがアドバンテージになるのです。

ウキ釣りでは「マキエ」が重要
その効力とは?

さて、クロダイをウキ釣りで効率よく釣るためには「マキエ」を用意する必要があります。マキエを用意するには相応の手間がかかるうえ、投入したあともマキエの成分が海中に拡散して効果が現れるまで時間を要するというデメリットがあります。しかし、クロダイは大変嗅覚が発達している魚なので、効率よくマキエを投入することにより近くにいるクロダイを自分の仕掛の周囲に集めることができるのです。
集魚効果という意味で、マキエはひじょうに重要なアイテムなのです。

05_ ウキ釣りの道具

ちなみにクロダイが好む「アラニン」というアミノ酸の一種は、エビやカニなどの甲殻類にも多く含まれています。このアラニンは10-8乗モルというとてつもなく希薄な濃度に薄めても反応する魚種があるといわれています。
アラニンの1モルというのは1Lの水に約90gを溶解させた状態を指しています。したがって、10-8乗モルというのはそれを1億Lの水で薄めたものです。数字が大きいので表現を変えると100m四方、深さ10mの水に90gのアラニンを溶解させた状態を指しているのです。

06_ アラニン解説
07_ アラニン解説2

マキエによって食い気が高まったクロダイは警戒心が薄れて(条件にもよりますが)、ハリやハリスが付いたサシエに連続して食ってくるようになります。

マキエで自分だけのポイントが作れる!?
だからウキ釣りがオススメ!

ウキ釣りをオススメしたい理由の一つとして、こんな身近な場所で? というような釣り場でも、思いもよらない大型のクロダイに巡り合う可能性が高いことが挙げられます。
「なぜそんなに身近な場所に?」と思われるかもしれませんが、クロダイは環境の変化に適応する能力が高く、また人によって作られた岸壁やテトラポッドに付着する生物を好んで食べます。また低塩分海域を好むため、海だけでなく河川の汽水域(河口付近など)にまで生息することもよく知られています。
ということは竿を出している場所、あるいは竿を出したい(出しやすい)場所にマキエを撒けば、自分だけのポイントを作ることが可能になるというワケです。

しかしながら、岸壁や堤防であればどこで竿を出してもよいというわけではありませんし、クロダイを寄せるのに好適な場所とそうでない場所もあるので、見極めが必要です。

08_ 良型のクロダイ
ポイントさえうまく見極めることができれば、身近な場所でも良型が釣れる!?

ウキ釣りにあまり向かない場所…

クロダイをマキエによって自分のポイントに集めるウキ釣りは、投入したマキエが拡散して効果が出るまである程度時間を要します。そのため以下のような場所はあまり向いていないようです…。

09_ 釣りシーン2
マキエの効果が現れるまでは少し時間が…辛抱が大切です。しっかりとマキエが拡散すれば魚は集まってくれます

 

10_ 堤防の先端

堤防の先端は、ほかの釣りを楽しむ方にとっても人気の場所になっていることが多いと思います。
ウキ釣りをしている横でカゴ釣りやブッコミ釣りの仕掛、あるいはルアーをキャストされてしまうとオマツリの原因になりますし、なんとなく集中力が下がってしまうことでしょう。
また、堤防の先端は根本付近と比べて潮がよく通るので、投入したマキエは思わぬ方向に拡散しやすいといえます。

11_ 漁港(漁協周辺)

それから漁港の場合、魚を仕分けするような場所では、水揚げされた海産物を選別したり容器を洗うときに少なからずそのニオイが流れ出るため、多くの魚たちが集まっていることがあります。もちろんこうした場所は漁船の往来の妨げになるだけでなく、水揚げされた海産物を運搬するフォークリフトや車両が行きかうため釣りはできませんが、少し離れた邪魔にならない場所があればポイントになる可能性は高いと考えています。
ただ、小場所になるほどクロダイがいるときといないときのムラが大きいようです。

12_ 船の係留場所

船が係留されている場所は、係留しているロープや海底に敷設されている係留用のブロック、そしてそれらを繋いでいるロープなどが障害になるばかりか、うっかりロープに仕掛を絡ませてしまうと、漁業者の方が釣りバリで怪我をするなど思わぬトラブルを招くことになります。
仮に釣りができたとしても、せっかくマキエが効いてきたころになって出ていた船が戻ってくれば場所を移動しなければなりません。ウキ釣りには向かない場所といえます。

ウキ釣りに好適な場所の見つけ方

さて、ザっと不向きな場所や条件をお伝えしましたが、これらを考慮すれば逆にクロダイに巡り合う確率が上るはずです。

プラスアルファの要素として、海底近くを泳いでいるクロダイは釣り人から見えにくいものの、カキやカラス貝、フジツボなどの付着生物が多く見られる場所はエサが豊富にあるため気配濃厚と考えてよいでしょう。また、アジやイワシなどの回遊があり、サビキ釣りなどが盛んに行われている場所にはクロダイもいるはずです。釣り場に到着したら、こうした好ポイントになる条件がないか状況をよく観察することが大切です。

13_ カキが付着した岸壁
カキが付着した岸壁。クロダイがいそうな好条件はあるか、釣り場に着いたら観察してみよう!

また、出掛ける前に「釣り場のポイント解説」をチェックしておくこともクロダイを探す近道です。
釣りの本(出版物)やインターネットの釣り情報にもポイントを示した図がよく掲載されていますので、これらを事前に調べておくことは言うまでもありません。しかし、このときヒントとして知っておくと役立つ情報もあります。

それはポイント図を見たとき、クロダイと記載があればそのまま信じてよいでしょうが、たとえばキスとかハゼなどクロダイ以外の魚種が記載されているようなポイントでも、十分に可能性があるということです。
それから、邪魔にならない範囲での船の往来や港湾の工事といった人的な騒音が激しい場所は、釣りでは何となく敬遠されがちですが、実は日常的に発生する騒音に対してクロダイは自分たちの身に危険が迫っていないということをよく学習しているため、意外な穴場となることが多くあります。

14_ クロダイ釣果2
思わぬ場所が実はクロダイのポイントだということも…。事前のチェックや過去の情報、好ポイントの条件があるか釣り場をよく確認しましょう

ウキ釣りで気を付けたいこと…マナー

最近釣り人のマナー問題が大きく取り上げられるようになり、私がよく通っている西伊豆の漁港も数ヵ所で釣り禁止となってしまいました。とても残念です…。

マキエを使用しての釣りは大変威力のある釣りであるがゆえに、周囲への影響も大きいことをとくに意識していただきたいと思います。先ほども触れましたが、堤防や岸壁では漁船など船舶の往来の邪魔にならないように注意が必要です。車を止める場所や竿を出す場所は、近くに地元の方がいれば事前に一声掛けておくことを心がけましょう。

15_ 後片付け
マキエを使用する釣りにおいては、とくに後片付けは丁寧にしましょう
16_ 救命胴衣
安全第一を考え、波静かな内湾であっても救命胴衣(ライフジャケット)は必ず着用しましょう

これら最低限のマナーを守ることにより、楽しくのんびりと大型クロダイに巡り合うチャンスを待つことができます。

 

いかがだったでしょうか? クロダイだけでなく魚を寄せる効果が高いマキエを使った「ウキ釣り」は、場所を見極め、自分だけのポイントを作ることができれば、かなり釣果が期待できます。
というわけで次回は、大型クロダイに巡り合うチャンスをさらに大きくするテクニックについてお伝えしたいと思います。

17_ アニメ01
①私もクロダイを釣ってみたいけど、沖磯や岩場に行かないと釣れないのかな? 足場の悪い場所だと不安だし、遠出をするのも何だか気が引けちゃうな~
18_ アニメ02
②実はクロダイは思いのほか身近な場所にもたくさんいるそうです。クロダイは低塩分水域を好むため、湾奥の静かな場所にも生息しています。たとえば、車を横づけできるような釣り場でも十分に大型が釣れちゃうんですって
19_ アニメ03
③そのクロダイを効果的に釣る一つの方法がマキエを使った「ウキ釣り」。その理由は、クロダイは嗅覚が発達しているので一ヵ所にマキエを投入すればそこが好ポイントになるからだそう
20_ アニメ04
④それなら何となく私にも釣れるような気がします! 次回は仕掛や釣り方のコツを教えてね!

 

レポーターREPORTER

長岡 寛
プロフィール:長岡 寛
1960年生まれ、東京都出身
北里大学水産学部(現・海洋生命科学部)を卒業後、大手釣りエサメーカーに入社し研究開発担当として数多くの新製品を手掛けた経歴を持つ。
定年退職後の現在は、「フィッシング彩」代表としてメジナ、クロダイ用の立ちウキ「彩ウキ」を製造・販売するほか、釣り関係の新聞・月刊誌などの執筆、大学や高校での講師としても活躍。代表著書に「釣りエサのひみつ(つり人社)」がある。
趣味はもちろん釣りだが、写真撮影、魚の組織標本作成、釣りに関連したアニメーション作成など多方面にわたる。さまざまな活動を通じて、ハードルの高い釣りのとっつきにくさやその先入観を拭い、できるだけ手軽に楽しんでもらうキッカケづくりができればと考えている。