まったくのビギナーでも大丈夫!
初めての管釣りトラウト入門
覚えてほしい魚のトリセツ【ランディング~リリース】

これまでビギナーさん向けにお届けしてきましたこの『管釣りトラウト入門』シリーズ。今回は、魚の“トリセツ”と題しまして、主に管理釣り場での魚のランディング~リリースの流れや注意点を解説していきます。

管理釣り場は、アクセスのよさ、安全なフィールド、料金体系の分かりやすさ、お手洗いや休憩施設が完備されていることなど、魚釣りをまったくしたことがない方にも優しい釣り場なので、釣りデビューの場所として選ばれる方も多いことでしょう。釣り道具のレンタルやスタッフさんによる釣り方指導も充実しています。
しかし、釣り方や道具の扱い方を教わることはあっても、魚の扱い方については意外と知る機会が少ないのではないでしょうか? 間違った扱い方で魚を傷つけてしまうことのないよう、最近釣りを始めた方や、これから釣りを始められる方に知っておいてほしい魚の扱い方。これから全盛期を迎える管釣りトラウトに出掛ける前に、ぜひご一読ください!

基本的な作法

管理釣り場のタックルや詳しい釣り方などは、これまでのシリーズ内で解説していますので割愛させていただいて、ここでは実際に魚がヒットしてからの基本的な作法や流れについてお話します。

連載シリーズ
初めての管釣りトラウト入門

 

ランディング(魚を取り込む)

01_ ランディング

魚がヒットしたら、やり取りしながら足下まで魚を寄せてきます。そのあとは、写真のようにランディングネットを使用し、魚を水につけた状態でキャッチします。このとき、ロッドを立てると同時に水面で魚を滑らせるようにするとスムーズにネットインすることができますよ。(枠のサイズが大きく、柄の長いネットが扱いやすいです)

※リールを巻きすぎて、魚が宙を舞うことのないようにしましょう。また、陸にズリ上げるのもNGです!

リリース(魚を戻す・逃がす)

02_ リリース

魚がネットに入ったら、ルアーであればペンチリリーサー、フライであればフォーセップなどのアイテムを活用し、魚に直接触れることなくハリを外しましょう。すばやくリリースすることで、魚へのダメージを最小限に抑えることができます。

03_ フォーセップ
フォーセップ
04_ リリーサー
リリーサー

魚体に触れてしまうと、人間の体温との温度差によって魚がヤケドをしてしまいます。最悪の場合、それが原因で魚が病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

キープ(魚を持ち帰る)

魚をキープする場合は釣り場のスカリビクなどをレンタルして、帰る時間まで生かしておきましょう。帰り際にさばいてから持ち帰る方がより新鮮な状態を保つことができます。釣り場によってキープ方法が異なりますので、受付で事前に確認するのを忘れずに。

※一度キープした魚の入れ替えはNGです。また、匹数・重さ・サイズなど、釣り場によって持ち帰れる魚には制限があります

魚を弱らせてしまったときは

05_ 水面に浮かぶ魚

写真中央のように、弱っている魚や死んでしまっている魚を見かけたことはありませんか? また、釣り上げた魚のなかにはケガをしていたり、皮膚の一部がふやけて白っぽくなっている個体を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
残念ながらそれらの多くは、釣り人とのファイトのあと、うまく蘇生できずに死んでしまっていたり死にかけていたり…、釣り人との接触によりヤケドを負い、そこから病気(=水カビ病)になってしまった例なのです…。

 

水カビ病とは?

管理釣り場で見かける皮膚の一部が変色した魚は、「水カビ病」に感染しているケースが多いです。
水カビ病とは、キズやヤケドなど表面的にダメージを受けたところに白いカビ(水カビ)が生え、寄生部分がしだいに壊死してしまう病気のこと。見た目に変色が起こるだけでなく、食欲が落ちてどんどん弱っていき、やがて力尽きて死んでしまいます。そして、その原因のほとんどは、釣り人との接触によって起こるヤケドだといわれています。

魚の状態が悪くなると水質にも影響が出ますし、ひいては管理釣り場の運営にも影響を及ぼしてしまいます。こういった魚を増やさないためにも、魚の取り扱い方には十分注意をしなくてはなりません。

大物がヒットしたら

06_ 大型のニジマス

釣りをしていると、不意に大物がヒットすることもありますよね。そんなときは釣り上げたい一心でキャッチすることばかりに集中しがちですが、魚を弱らせ過ぎないことも大切です。少し技術が必要かもしれませんが、あまり時間を掛けず、適度なファイトにとどめておきましょう。

また、釣り上げたばかりの魚は全力疾走したあとの状態と同じです。明らかに魚が弱っている様子(すぐにネットから出ようとしないなど)が見受けられる場合は、すぐにリリースせず、しっかりと体力を回復させてから帰すようにしましょう。

07_ ①-1
08_ ①-2
①ネットに入れたままゆっくりと揺らす → 自ら出ていくようならリリースOK
09_ ②-1
10_ ②-2
②ひっくり返ってしまうときは、魚を支えて正しい向きにし、蘇生させてからリリース

具体的にはネットに入れたまま前後にユラユラ揺らし、回復したらリリースします。このとき、もし、お腹を上に向けて浮かぶようなら天地が分からなくなっている状態なので、十分に手を冷やしてから魚を正しい向きにして支えつつ、前後にユラユラと動かします。手を放してもひっくり返らなくなったら①の動作へ。そうすることで魚のダメージを軽減することができます。

ちなみに、釣り場によっては、受付に『大物が釣れたらお知らせください』などと書かれていることがありますが、これは、サイズ計測や釣果情報のためだけではありません。(下の写真のように)酸素量が豊富なイケスで魚をゆっくりと休ませることで、しっかり体力を回復させるためでもあります。
管理スタッフの方がそういった作業をされているので、魚はいつも元気な状態でフィールドを泳ぎ回ることができているわけですね。

11_ イケス

釣果写真を撮る際の注意

釣りデビューをした日や大物が釣れたとき、はたまたお子さんとの思い出づくりなど、魚の釣果写真はとってもよい記念になりますよね。ですが、写真を撮る際にも魚の取り扱いには注意が必要です。
たとえば、暴れる魚を強く握り締めてしまったり、長時間水から上げてしまったりするのは、魚を弱らせてしまう一番の原因になります。

理想的なのは、魚をネットに入れたまま水につけた状態での撮影です。やむを得ず、魚を手に持った状態での撮影をされる場合は、十分に水で手を冷やして表面温度を下げてからネットごしに魚を持って撮影するようにしましょう。(グローブを着用し素手で触らないようにするのもGOOD)
必要以上に長い時間魚を水から上げた状態にしないよう配慮しましょう。

12_ 写真撮影1
ネットに入れ、魚を水につけたままの状態での撮影が理想的
13_ 写真撮影2
手持ち写真は十分に手を冷やしてネットごしに軽く持つくらい。(ギュッと握らない! 長時間触らない!)

また、魚のサイズを測りたいときは陸に直接置かず、ネットの中で測る、もしくはスタッフの方に頼んで、専用の計測ケースを使用させてもらうなど、魚を傷めないようにしましょう。

14_ 計測
魚の計測は専用のケースで行う

 

当たり前ですが、魚釣りは魚がいないことには成立しません。管理釣り場に元気な魚がいてこそ、その駆け引きやファイトを楽しむことができるのです。リリースの際は、また元気に遊んでもらえるように、管理釣り場の魚を極力傷めないように、魚の扱いに配慮するのが釣り人のマナーなのです。
常にパーフェクト…とはいかないまでも、正しい知識と作法を知って、気持ちよく釣りを楽しんでくださいね。

 

レポーターREPORTER

小西 栄里子
プロフィール:小西 栄里子
京都府京都市在住
不動産会社に勤務する傍らハヤブサフィールドスタッフとしても活動中の週末アングラー。渓流でのフライフィッシングが一番の癒し。釣りだけでなく、キャンプやスノーボード、お笑い観賞にカラオケまで(笑)
とにかく楽しいことが大好きなアウトドアガール。
インスタグラム:
@fishingram_connie (URL: https://www.instagram.com/fishingram_connie/)