長年釣りをしていると当たり前のことでも、釣りを始めて間もない人にとっては「目から鱗!」「そうだったのか!」という、ちょっとしたノウハウをお届けするのがこのコーナー。釣果に直接かかわることではないけれど、アナタの釣りが快適になるかもしれない!? ほんのちょっとの工夫とアイデア。
今回からは釣り上げた魚を美味しくいただくための締め方から持ち帰り方まであの手この手。第1回は誰にでもできるかんたんな方法。
じゃんじゃん釣れる小魚を
いちいち刃物で締めるのは面倒だから……
まだまだ残暑厳しい9月だが、海辺も徐々に秋めいてきて防波堤からのサビキ釣りやチョイ投げが楽しいシーズンだ。近郊の釣り場へお出かけするご家族も多いだろう。釣りものはサビキの小アジやカタクチイワシ、チョイ投げでキスやベラ、ガッチョなど。
「アジ釣れた!」「やったキスがヒット!」など歓声が防波堤のあちらこちらで。そのたびにお父さんは子どもたちが釣り上げた魚のハリ外しに忙しいが、よく見かけるのが海水を張った水くみバケツなどに魚を入れっぱなしにしている光景。
クーラーと多めの氷と水くみバケツがあればOK
確かに入れ食いのときなど目が回るほど忙しいのだが、せっかく釣り上げた魚は美味しく食べてやりたい。そこで手間なくかんたんに釣り上げた魚の鮮度を保てるのが「潮氷(しおごおり)」という方法。
多めの氷を入れたクーラーに、水くみバケツで海水をザブザブ! クーラーの大きさにもよるがクーラー内で氷がひたひたになるぐらい海水を入れる。そして釣り上げたアジやキスなど小魚なら、生きたままここに放り込むだけなのでごくカンタン。マダイやハマチなど大きい魚のようにナイフなどで締めて血抜きする必要はない。第一、数が釣れる小魚を1尾1尾、ナイフなどで締めて血抜きをするのは大変だ。
そう!早い話が「試験管アイス」の理屈
最近の若い人にはなじみがないかもしれないが、われわれオジサン世代なら子どものころの理科の実験を思い出してほしい。ビーカーと試験管で作るアイスキャンデーだ。氷と食塩が入ったビーカーに砂糖水入りの試験管を差し込んでわずか数分!? あっという間に砂糖水が凍ってアイスキャンデーができ上がるというもの。そう食塩、すなわち塩化ナトリウムには氷の温度を氷点下に下げる働きがあるのだ。
つまりクーラー内で氷と反応した海水は氷点下にならないまでも零度近い低温になり、そこに放り込まれた小魚は一気に体温を奪われ動きも止まるので、釣り上げてすぐの鮮度を保つことができるのだ。試しにこの潮氷に手を入れてみると数秒も我慢できないほどの超低温になっている。
ただ氷の量に対して、あまりに多くの魚を入れると、氷がすぐに解け、さすがに水温も上がるので入れ食いが予想される場合は多めの氷が必要。気温が高い時期は別のクーラーに予備の氷を持参しておくと安心だ。
帰路、氷と海水、魚で満杯になったクーラーを運ぶのが苦労するほど重い場合は、帰る直前に海水だけを抜いてしまおう。ある程度氷が残っていることが条件だが、魚たちは一旦キンキンに冷やされているので、短時間なら自宅までそれで大丈夫だ。
かなり以前、とあるグレ釣り名人と八丈島にでかけたとき、生かしたまま海から離れた宿に持ち帰ったグレをそこで締め、「さて、どうするのだろう?」と思って見ていたら、締めたグレを入れたクーラーに大量の氷と粗塩をブチ込み、その上からザブザブと水道水を。これで即席潮氷が完成。小1時間ほどで良型グレたちがキンキンに冷えたのを見計らって海水を抜き、そのまま空路で羽田空港に戻ったのだった。
サビキ釣りやチョイ投げなら、このように粗塩まで持参する必要はない。必要なのはクーラーに多めの氷、水くみバケツだけだ。