海外釣り旅 アメリカ・サーモンリバー編 マイク・アイコネリと!? バスでなくマスとサケを釣った話

キング現る

またも少し川上から「Fiiiiiiish!!」と叫び声が聞こえる。

09_ファイト
またもロッドを曲げたのはマイクだった

ガイドの指示に応えつつ、奇声を上げながらロッドを立てたり下流へ走っているマイクの姿は少年そのものだった。トレードマークともいえる、その感情をありのままに叫びファイトをするスタイルは、カメラが回っているかどうかは関係ないらしかった。まだアメリカに着いた実感すら湧く前に竿を振っていたのだけれど、想像した通りのマイクを見て、より一層目の前で楽しいことが起きていることを確認したのだった。

真面目にフライをやるのは数年振りらしいが、この魚以外にもマイクが何度かバイトを取っているのを見た。当然のことだが、やはり何をやらせても上手いのである。

10_キングサーモン1
無事にネットインしたのは黄金色に輝く美しいキングサーモンだった

いわゆる「ランドロック」のキングサーモン。巨大なオンタリオ湖を回遊した後、サーモンリバーに帰ってきて産卵し、その一生を終える。本当に素早く写真を撮り魚をリリースする。この時期のサーモンはベイトを追って捕食することもなければ、そもそもエサとなる小魚すら川にいないという。魚卵を模したフライを自然に流し、捕食というよりは本能で思わず流れてきたものに口を使う習性を利用した釣りらしい。マイクに聞くと、本当に小さいアタリだったそうだ。

初心に戻り投げ続けた1日

結果だけ先にお伝えすると、この日サーモンを手にしたのはマイクのみだった。しかも2匹。釣りをしたのが台湾人の友人2人、そして彼らと台湾で動画撮影などをしているロシア人が1人に、自分とマイクの計5人。もちろん指示されたポイントや投げているフライの種類など、全てがみな同じだった訳ではないけれど、流石の一言。世界トップレベルでバスフィッシングをするアングラーは、やっぱり何を釣らせても上手いのだろう。僕は結局一度も明確なアタリを感じることなく、あっという間に1日が終わってしまった。

11_キングサーモン2
いつかは絶対この手に抱きたい魚が増えてしまった

 

気温がようやく下がり始め、一気に秋めいてきたという鮮やかなサーモンリバーの冷たく澄んだ空気の中。残念ながらこの手に魚を抱くことができなかったけれど、新しい釣りを教わり、初心に立ち返って1日釣りができたことはとても贅沢だったと思う。

曲がりなりにも、幼いころから釣りばかりしていて釣り歴だけは結構長かったりすると、右も左も分からない釣りにはなかなか出会わなくなってしまう。ああでもないこうでもないと四苦八苦しながら1匹を追いかけた体験はとても貴重だったし、マットも最後まであの手この手を尽くして、教えてくれた。リップサービスかもしれないけど、「どうしてショータに魚が釣れなかったかのか分からない。完璧にやれていたよ」と言ってもらえて、単純に嬉しかった。そういえば釣りを教わったり、褒められたり、そんな感覚はいつ以来だったのだろう。

12_マット
13_カウンター上のサングラス
スチールヘッドが大好きというマットに、BIGFISH1983のレインボートラウトがモチーフの偏光グラスを彼にプレゼントしてきた

長い1日を終えて

14_釣りシーン

長い長い1日だった……。アメリカに到着後、ほぼ不眠不休で釣り場に立ち、クタクタになるまで釣りをした。というのも、翌日からもトレイル&フィッシュのハードな日程が詰まっていたため、今回の旅でこの釣りができるのはこの日1日だけだったからだ。トラウト好きとしてはひじょうに残念であった…。
だが一方で、自然のスペシャリストとして、釣りだけでなくフィールドのことや文化を伝えていくプロのガイドとの釣りはとても有意義だった。それに、やっぱり自分も釣りたいと思うのが釣り人。釣りを終えて、泊まっているロッジにあるパブで飲みながら、すでにみんな「次来るときはさ~」と話していた。また必ず戻ってきたいと思う。

15_パブでの反省会
16_集合
Special Thanks to Fishing Traveler
※今回ツアーを企画してくれたのが僕の古い台湾の友人であるピーターとリスト、そして彼らのフィッシングコミュニティがFishing Travelerである

 

17_遡上
少しわかりにくいけど、目の前をこんな風にキングが堂々と泳ぐ

僕らが釣りをした少し先のエリアでは、無数のキングサーモンが産卵床を作ったり、巨大な魚が次々に瀬を超えてくる姿を見ることができた。特に釣り禁止とかではないらしいが、「私たちはスポーツフィッシングをしているからね」とマットが言っていた。こういうところなのだ。
なんでも手放しに海外のやり方を真似すればいいというわけでは決してないし、当然アメリカでもさまざまな問題があると思う。しかし、この美しい自然の中で遊ばせてもらうために、最低限かつ厳しいルールを敷き、釣りだけではない知識やアティチュードを伝えていくガイドがいて、そしてそれに応えるように素晴らしい魚たちが毎年川を遡る。そんな素敵なことはない。

18_遡上2
使命を全うしたキングの姿

僕は、近い将来日本にも、美しい渓流魚や日本でしか見られない魚を釣るために、いろいろな国からたくさんの釣り人が訪れると信じてやまない。それぐらい日本のフィールドやターゲットも素晴らしいし、交通の便もよくフィールドへアクセスしやすい恵まれた国だと感じている。そしてルールやマナーの周知を含め、そんな未来をまさに今僕たちが「作っていくべき」なんだと思う。マイクの「子供たちを釣りに連れていくことが、今の釣りの未来に繋がる」という考えと重なって、少し熱くなった夜だった。

19_C&R
厳しいリミット、キーパーサイズやキャッチ&リリースは長く釣りを楽しむために絶対に必要である

 

熱くなりすぎたのか、翌朝目覚めると明らかに熱っぽく体がだるい…。
風邪を引いた僕は1人、予定していたストライパー釣りを諦め車で1日寝込んでいた。遠征で体調をここまで崩したのはあまり記憶にない。言うまでもなく、忘れられない旅となった…。

 

レポーターREPORTER

ショータ・ジェンキンス
プロフィール:ショータ・ジェンキンス
栃木県在住。国内のトラウトフィッシングから海外の釣りまで、人生を豊かにするライフスタイルとしての釣りを日々模索し発信しているフィッシングピーターパン。PIKE STREET MARKETディレクター。ひと×コト×Sakana栃木PRアンバサダー。
サポートメーカー:Huerco、BIGFISH1983、Rマジックテスター。VARIVASフィールドモニター、Patagoniaプロセールスプログラム。
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