学校で話したくなるお魚雑学 No.10とんでもなく美味しい?
食わず嫌いかもしれない釣りの外道&エサ取りたち


(注)ハコフグは中毒例が過去に報告されており、ハリセンボン、イシガキフグは無毒とされているが、他種との見分けが困難なこともあり個人での料理は控えよう

ある日の長崎県五島列島の宿。晩ご飯でふるまわれたメインディッシュは地元で「かっとっぽ」と呼ばれるハコフグの味噌焼きだった。腹側を丸く切り取り内蔵を処理し、くり抜いた身に味噌や薬味を合わせ再び腹に戻して焼いた料理なのだが、これがお酒にもご飯にもバッチリ! また別の日、鹿児島県は沖永良部島。ここのペンションでの晩ご飯は魚ちり鍋。「旨い! 何これ?」とオーナーに尋ねると笑みを浮かべつつ、ぷう~っと膨らませた頬にトゲトゲのジェスチャー。何とハリセンボン(イシガキフグだったかもしれない?)と判明しビックリしたのであった。このように釣りでは一般的に外道、エサ取りとバカにされている魚たちにも、とんでもなく美味いやつがいる。今回は衝撃的バカウマで見直した魚たちのお話。

冬場は刺身が美味いツムブリ

ある年の12月ごろだったと思う。高知県沖ノ島の磯で50cmぐらいのツムブリを何尾か釣った。グレねらいなので、もちろん外道である。沖ノ島ではいつも2日間釣りをするので、初日は釣った魚を宿でさばいてもらって晩ご飯のお供にするのが楽しみであり恒例だったため、この日は試しにツムブリを食べてみることにした。もちろん刺身で。一般的にはあまり美味しくない……という評判だったので期待はしていなかったのだが、何となかなか美味しかったのだ。脂も乗っていて旨みもたっぷり。ただ、ややザラザラした身の舌触りが気にはなったが、この日以来ツムブリを見直したのだった。

ツムブリ
ブリのようでブリでないツムブリは釣りの対象魚としての地位は低い。でも食べてみるとなかなか! 冬が旬なのかもしれない

タカノハダイ鍋に臭くないアイゴ

タカノハダイも磯釣りの外道として、おなじみである。実際に食べたことはないが、聞いた話では厳寒2月、タカノハダイの鍋が抜群に美味かったのだとか。また梅雨時期に愛媛県愛南町中泊の磯で釣れるアイゴが非常に美味しいという話。アイゴといえば独特の臭みで好き嫌いが分かれる魚である。一夜干しに、と吊してあったアイゴの開きのそばを通って、そのニオイに気絶しそうになったという人を知っている。ところが梅雨の中泊のアイゴはまったく臭くないという。話を聞いただけで食べたことはないので、どの程度のものなのかは分からない。

タカノハダイ
タカノハダイは厳寒期に鍋ネタに最高!? とのウワサ
アイゴ
紀州や九州では好んで食べるアイゴだが、やはり独特の臭みがある。梅雨時期、中泊のアイゴは身が霜降りになるのだとか?

見た目は最高!ニザダイの上身

実際に食べてみて仰天するほど美味かった外道もいる。それがニザダイだ。ニザダイは関西ではサンノジなどと呼ばれグレ釣りの代表的な外道である。アイゴに劣らず、その臭みは強烈で持ち帰って食べる人はまれである。ある日、徳島県牟岐の寿司屋のショーケースに、いかにも新鮮で美味しそうなネタが並んでいた。「おお、これ美味そうやなあ。これ何?」と大将に聞くと、ニヤッと笑った大将が「まあ、食べてみて」とわれわれに1貫ずつふるまってくれたので躊躇せず口に放り込んだ。

一噛み目。なかなか味はよい。そして二噛み目。独特の磯臭さが鼻を突き抜ける。全員で顔を見合わせて「サンノジや!」と意見が一致、正体判明。ちゃんとプロが下処理、料理しても、これほどニオイが気になる魚なのである。

ニザダイ
さばいてみると非常に綺麗な身をしているニザダイ。磯の近くで釣れる個体はニオイが強烈だが……

京都の料亭御用達!その名は樫野ハゲ

ところが! 和歌山県串本では、まったく臭くなく抜群に美味いニザダイが水揚げされるという。季節限定(記憶不明)でしか獲れず、そのほとんどは京都の料亭などに送られるため、地元でもなかなか口に入らないというのだ。その名も「樫野ハゲ」は串本大島の東端、樫野崎のかなり沖合に仕掛けた大敷網で獲れる沖合回遊型のニザダイである。聞けば磯の近くで釣れるニザダイとは、まったく食性が違い、沖合でプランクトン? を主に食べているため臭みゼロということらしい。

「いやいや臭くないといっても多少は臭うはず」と信じなかったが、ある人の好意で樫野ハゲを食べる機会を得た。串本から送られてきた樫野ハゲを仲間内でさばいて刺身で食べてみた。「うそ!」「なにこれ!」「まじヤバイでしょ!」と、その味に仰天。まったく臭くないどころかグレより美味いし味も濃い。何と普段は生魚が苦手な友人までも「美味いなあ」と、どんどん箸を進めるほどだったのだ。

夏が旬!タカベは脂のりのり

エサ取りの小魚たちにも、非常に美味しいものがいる。代表的なのがタカベ。これはマジで美味い! 20cm以上になると夏は脂ノリノリで塩焼きが最高! 火にかけるとその脂で身が反っくり返り、まるで揚げ物のようになるほど。伊豆諸島では夏休みに子供たちがタカベを釣って、お小遣いを稼ぐというのは有名な話。

タカベ
関西では十数cmの小型が多いが伊豆や四国西部では夏場に20cm以上の良型が釣れるタカベ。塩焼きが抜群に美味い!

福岡名物「アブッテカモ」はスズメダイ

同様にカゴカキダイも夏場は非常に脂が乗っていて塩焼きが美味しいし、福岡ではウロコが付いたまま多めに塩をして軽く干したスズメダイを真っ黒になるまで焼いた料理を「アブッテカモ」と呼んで珍重するという。「炙って噛もう」という意味のようで、これも初夏が旬だという。そんなにスズメダイが美味しいのなら同じスズメダイ科のオヤビッチャも美味しいかもしれない? 確かに水温が高い時期のオヤビッチャは身が分厚く脂が乗っているような気がするのだ。

カゴカキダイ
夏のカゴカキダイも塩焼きが最高!
オヤビッチャ
オヤビッチャも夏が美味いに違いない!? 絶対に脂が乗っているはず……

紹介した以外にも美味い外道やエサ取りがきっといるに違いない。試しにミナミハタンポで干物を作って食べてみたことがあるけれど、これはイマイチだったなあ……。ちなみにゴンズイは美味いらしいよ。