では実戦!カモを相手に
釣りに役立つアプローチを学ぼう
では話を本題へ。改めまして、テーマは釣りに役立つバードウォッチングです。まずは、カモを探しましょう。見つけたら、近づいてみます。どこまで近づけるか……という練習です。
マガモのオスです。
これはコガモのペア。派手なほうがオスですね。
頭が特徴のヒドリガモ。
そして私の近所の川では、最も近くまで寄ることのできるオナガガモです。
コツはとにかく、ゆっくりと近づくこと。そしてカモとの間にススキやアシなどの藪があれば、それを利用して身を隠すのも有効です。身を低くして、じりじりとにじり寄りましょう。
座して警戒心を解くのも一手。
その時にカモのとる行動は次の3つです。
①こちらに気づかない
②気づいて緩やかに距離をとる
③気づいて飛び去る
一番ダメなのは、飛び去られてしまうこと。そして一番いいのは、気づかれないこと。ですが、たいていの場合、カモは15mほどの距離まで近づくと、こちらに気づいて少しずつ距離をとりながら緩やかに逃げていきます。これって実は、釣りをするときに狙う魚にも同じようなことが言えるんですね。
こちらに気づいて、しかも驚かせてしまうと、魚はビュッと勢いよく逃げてしまいます。そうなると完全に警戒心を抱いている状態ですから、たとえばルアーやエサを投げ入れてもなかなか釣ることは難しいでしょう。
一番いいのは、釣り人は魚に気づいているけど、魚は釣り人に気づいていない状態。バスでもナマズでもイワナでもヤマメでも、そんな状態の魚は最も釣りやすいと思います。ですが、相手は普段からそこに棲んでいる野生の生き物ですから、それはなかなか難しいことです。なのでせめて、気づかれてはいるけれど、そこまで怯えてはいない状態にとどめておくことが大切なことだと思っています。相手がカモだと、上に挙げたケースの②気づいて緩やかに距離をとる状態となります。
相手に気づかれつつも飛び去らせず、じわじわと逃げていくような状態をキープする距離感だったり動きの速さだったりを身につけることは、水中の魚を相手にするときにもきっと役立つことと思います。
水辺のカモについて、釣りと関係することを、もういくつかご紹介しましょう。
まずは、カモってのんびりしているように見えて、実はしっかりと人間を観察しているってこと。特に水際で長い竿をびゅんびゅん振りまわす釣り人の存在はとても怖いようで、離れた所から川を観察すると、釣り人の側にはカモがいないか、いても極端に少ないことがわかります。カモは釣り人を避けているんです。これを逆手に取りましょう。カモがそこにいるということは、釣り人が近くにいなかったということを表しています。逆にいつもいる場所にいなかったとしたら、人が近づいた可能性があるということです。もちろん、風裏の穏やかな所に集まりやすいことなど、人間とは無関係の習性による部分もありますが、竿抜けの場所を探すうえで、カモはとても役に立つ存在なのです(コサギやアオサギも同様)。
そこにカモがいれば安心……カモ。
水面を流れてくるゴカイ類を食べるシーバス(スズキ)をルアーで狙う「バチ抜けパターン」の時期も、カモに注目です。明確な裏付けはありませんが、この時期、シーバスやカモメ類だけではく、カルガモなども流れに乗りながら盛んに水面をついばみ、ゴカイ類を食べているように思えます。その際、カモたちが流れているレーンは結構決まっているんです。あくまでも予測ですが、カモたちが流れるレーンこそ、シーバスのエサともなるゴカイ類が最も多く流れている筋なのではないか、そんなことを思っています。
最後に……これはカモもサギも、ミドリガメにも言えることなのですが、小さな川や池でバスやナマズを釣っているときに、彼らが“伝達役”になっている事実があります。伝達役とは「人間がきたぞー、気をつけろー!」という伝達を、釣りの対象魚である魚達に教える役割、という意味です。
たとえばカメは、慌てて転がってボチャンと……。
カメのみならず、カモやサギが人間に気づいて急に飛び立っても、おそらくそれだけで水中の魚も警戒してしまうのではないかと思うのです。なので、こんなときにも、まずはカモやサギを、先ほどの“緩やかに逃がす”接近法を用いた後に狙うとよいのではないでしょうか。ちなみに過去にバス釣りの達人を取材した際、その達人は、釣り場に着くと猫の鳴き声を真似て、そこにいるサギなどの鳥をまず逃がし、少し場を休ませてから釣りを始めていました。
ちなみにちなみにその方は普段から釣りの際はいつも迷彩柄。着ている服装によってカモたちの反応を観察してみるのも面白いかもしれませんね。
そんなことを色々と考えながら、ぜひとも釣りに役立つ水辺のカモウォッチングを楽しんでくださいね!