目指せ!擬似餌マスター 第6回 イカ漁からイカゲームへ!
いわゆる「イカメタル」のルーツと現在

今回のテーマは近年、大フィーバーの遊漁船のイカメタルゲーム。人気に火が付いたのは、ここ数年のことだが、実は古くから現在のスタイルを予感させる釣り方が存在していたという。ごく簡単ではあるが、そのルーツを紹介したい。また現在主流になっている筒イカゲーム3スタイルの特徴も付記しておく。

ルーツはイカ漁伝統の「鉛トンボ」

細身で軽いロッド、高性能リール、高感度で細く強いPEライン、リーダーの先にスッテや餌木をひとつ、もしくは2個というシンプルなタックルでケンサキイカをメインに筒イカをねらうシンプルなイカゲームは、「イカメタル」「メタルスッテゲーム」「ライトケンサキ」などと呼ばれ、現在では多くの遊漁船で主流の釣り方になった。その基礎となっているのは、間違いなく古くからイカ漁に使われていた「トンボ」と呼ばれる伝統漁具だろう。戦後、あるメーカーが日本海沿岸部で使用されるトンボと呼ばれる「イカ針」の製造に着手し、「鉛トンボ」いわゆる「鉛スッテ」も、昭和30年代半ばには商品化されていたそうだ。

「トンボ」発祥は19世紀の佐渡島

一説に「トンボ」は1897年に佐渡島の漁師さんが考案したものが始まりとされており、もともとは本体の素材に牛角、牛骨、鯨骨などを使用していたが、時代とともに鉛やプラスチック素材に移行。鉛を素材にした重いものが「鉛スッテ」いわゆる「メタルスッテ」で、プラスチック製の軽いものが「浮きスッテ」である。

現在のイカゲームに欠かせない「鉛スッテ」は、各地でいろいろな形やタイプが古くからあり、漁師さんのリクエストでさまざまなものが存在した。昭和30年代半ばには、すでに「鉛トンボ」という名称で商品化されていたと聞く。

鉛スッテ
鉛スッテ
トンボを使用した漁師さんのスタイル。最下部に鉛スッテもしくはオモリ、上部に複数の浮きスッテを取り付けた仕掛を手繰って器用にイカを掛けていく。舳先からパラシュートアンカーを入れて流し釣りすることがほとんどだが、島根県などではアンカーを入れる場合もある。

古くから存在した「鉛スッテ」1個のみという釣り

現在でも兵庫県の日本海側、津居山地区の漁師さんは「浮きスッテ」がたくさん付いた、下オモリもしくは「鉛スッテ」をオモリ代わりにした胴突仕掛を手繰りながら、船の反対側に「鉛スッテ」1個だけを付けた仕掛を投入、簡単なサオの先に引っ掛け船の揺れに任せて釣る。これが古くからのスタイルだという。ここに現在の遊漁で主流になったイカゲームの原型をみることができるのだ。

現在の主流ドロッパー式は最も後発

日本海側に限らず太平洋側も含めてケンサキイカ釣りは、10年ほど前までは複数の「浮きスッテ」を取り付けた胴突仕掛を用い、電動リールを駆使して仕掛を上げ下げする職漁に近い感覚の釣りが主流だった。そんなケンサキイカ釣りシーンに「鉛スッテ」1個だけを使いライトタックルでねらうアングラーが出始めたのが元々イカ漁が盛んだった若狭湾。また以前から若狭湾にはオモリの下に3ヒロという長いハリスを結び、その先に餌木1個を取り付けた仕掛でケンサキイカをねらう釣り方も並行して存在し、その長いハリスをどんどん切り詰めて短くしたものが、現在の「オモリグ」のルーツだと聞く。下に「鉛スッテ」、上に餌木をセットした「ドロッパー式」、いわゆる「小浜リグ」が登場したのは、これらよりも後のことらしい。

イカ
イカ
イカ
イカ
イカ
ケンサキイカをねらう遊漁船の多くは「イカメタル」が主流になった。ルアーゲーム感覚で誘って掛ける釣りなので特に若いアングラーに人気が高い。若狭湾では梅雨ごろまでの初期は胴長40cmというビッグサイズも釣れるが真夏になると小型が多くなる

筒イカゲーム3スタイルの特徴

以上が取材して分かった「イカメタル」のルーツ、おおまかな歴史である。以下、現在の主流になっているイカゲームの3スタイルについて、簡単にその特徴をまとめておくので参考にしていただければ幸いだ。

「ひとつスッテ」
リーダーの先に「鉛スッテ」1個というシンプルなリグで、操作性がよくルアーファンに受け入れられやすいスタイル。ロッドアクションがダイレクトにスッテに伝わるため、イメージ通りのアクションを軽快にかけられるのが特徴。フォール中のアタリにも素早く対応でき、シンプルなリグのため手返しも早い。

「オモリグ」
先糸に親子サルカンもしくは三つ又サルカンを結び、スナップでオモリをセット。1mほどのリーダーには小型の餌木を結ぶ。中オモリ式のエギングと同様に、餌木をナチュラルにリフト&フォールさせられるため低活性時にも威力を発揮。数ねらいでは「ひとつスッテ」「ドロッパー式」にかなわないが、ナチュラルに動く餌木は特に大型ケンサキイカの反応がよい。

「ドロッパー式」
「小浜リグ」ともいう。「ひとつスッテ」の上、数十cmから1mほど上に短いエダスを出し、そこに浮きスッテもしくは餌木を結ぶ2段式のレイアウト。アピール力が高くレンジも効率よく探れる。2ハイのイカを同時に釣り上げることも可能で数釣りに向く。上下の餌木、スッテの組み合わせなどアングラー独自の工夫がこらせるため、現在では、このリグを使用する人が非常に多い。

イカゲームスタイルイラスト