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新緑が伸びて過ごしやすい季節になると、宮城から福島、茨城にかけての沿岸にはヤリイカが産卵のために大挙して接岸します。ヤリイカもほかのイカと同様に産卵を終えるとその一生を閉じます。つまり、春はヤリイカ釣りシーズンの最後のステージとなるわけです。
産卵絡みのシーズンとなるため、当たり外れも多い釣行になりますが、好機に当たれば大型のヤリイカの数釣りが可能なこともあり、アングラーには人気の釣りとなっています。
そんなヤリイカシーズン最後の釣りを楽しむために、北茨城の平潟から出船して釣行してきました。今回は実釣レポートのほか、もう一杯多く釣るために気付いたポイントをご紹介したいと思います。
当日の釣況は?
仕掛を工夫して好反応
2022シーズンの春ヤリイカの状況は、親潮の勢力が強く海水温が低かった影響を色濃く受けているようです。常磐海域は比較的安定して春ヤリイカの群れが入ってくるのですが、今年は群れも場所によっては入らなかったりと、不安定な状況が続いています。
産卵絡みの接岸ですので、産卵が終了すると一気に釣況ダウンする可能性もあるこの釣り。釣行タイミングが難しい面はありますが、当日はいいタイミングでの釣行となりました。
今回お世話になった船宿は平潟港の長孝丸さん。中乗りには若船長が乗船し、釣りの手ほどきやオマツリ時のレスキューなどしてくれる気の利いた遊漁船です。
平潟沖の春のヤリイカ釣りは水深が50m前後と浅場での釣りです。仕掛は一般的なプラヅノを使用してエダスを出す「イカサビキ釣り」や、浅場での釣りということもあり、近年になって人気の「イカメタル」や「オモリグ」といった釣りを楽しむアングラーも増えてきました。その様なさまざまな釣りがあるなか、私は今回イカメタル釣法でねらってみることにしました。
朝、明るくなった午前4時に出港。ほどなくポイントに到着し釣りがスタートしました。
開始してすぐはイカサビキ仕掛のアングラーにはポツポツとヤリイカが乗ってくるものの、イカメタルの私にはなかなかアタリが出ない状況です。潮流れが悪くヤリイカの活性も上がらないため、私にとっては渋い時間帯からのスタートとなりました。
ちなみに、私の仕掛はオバマリグ(一般的なイカメタルの仕掛)。ドロッパーにはスッテ1本を使用した標準的な仕掛です。イカサビキ仕掛と比べれば、ハリ数が少ないのでタナを合わせる手間はありますが、手返しの速さと細かい誘いなどができる点、ヤリイカの繊細なアタリをとらえて掛ける面白さを体感できる仕掛です。
潮だるみで活性低下、水色もややよくないようですがヤリイカはいるようです。しかしながら、朝マズメの時間帯は全くいいところなく、釣れない時間が長く感じます…。
ヤリイカの潜むタナには合っているはずなのになぜアタリが出ないのか? イカサビキ釣りの釣れ具合から、スッテよりもプラヅノの方が釣況に合っているのかもしれないと思い、ドロッパーを11cmのプラヅノ、ハヤブサの「ピカイチスティック スイッチドット 11cm シングル」にチェンジしてみました。すると、すぐにヤリイカからの反応が伝わってきました。
この一杯を機に、「やはりスッテよりもプラヅノにヤリイカが反応しているのかもしれない…」と判断。改めて仕掛を替えてみることにしました。オバマリグでドロッパーを2本に変更。ドロッパーにはピカイチスティック11cmを取り付けて釣りを再開です。
結果は良好でアタリも増えて、一時は入れ乗りとなる時間帯もありました。お陰で一時はどうなることかと焦りましたが、終わってみれば30杯ほど釣り上げることができ、楽しい1日となったのでした。
ナイスアイデア!?
イカメタルとイカサビキのいいとこ取り
イカサビキ仕掛の利点は仕掛全体の長さにあります。一般的な市販されている仕掛の全長は5本バリ仕様で5~6mほどあり、仕掛が長いためにヤリイカの泳ぐタナをカバーしやすく、釣果が伸びます。逆に欠点は、仕掛が長いので扱いにくく、仕掛絡みなどがどうしても多くなってしまうため手返しが悪くなるところです。
その点、イカメタルのオバマリグはハリ数が少なくリグの取り扱いがかんたん。船中でのオマツリ時もサッと解消できます。その代わりに、ヤリイカのタナに仕掛を合わせなければイカからのアタリが出ないことも多々あります。
どちらの仕掛にも、それぞれに利点欠点がありますね。
潮止まりなど、どうしてもヤリイカの活性が悪くてハリ掛りしない場面などは、さまざまな誘いや繊細なアタリを見極められるタックルを用いるイカメタル釣法の方が、イカを釣るポテンシャルは高いように感じます。
仕掛的にはイカメタル釣法のオバマリグはよく考えられた仕掛だと思いつつも、レンジを広くカバーするにはリグ自体の長さを考慮しなくてはいけません。イカサビキ仕掛のレンジカバー能力と、オバマリグの誘いや繊細な釣りができる利点を合わせれば、最強のイカ釣りができるはずです。同様に、ハリもスッテばかり使うことにこだわらずプラヅノを取り入れることで、これまでハリに掛けることができなかったイカを掛けることができるようになるはずです。ただ、仕掛全体の長さは抑えつつ、手返しの速さを維持するために、オバマリグのドロッパーは最小限とすればよいのではないかと考えています。
現場で対応
釣況に仕掛を合わせて難局を打破!
当初、私の仕掛はオバマリグのドロッパー2本に鉛スッテのスタイルでした。普段はドロッパーを1本としていますが、先日のようにヤリイカの群れが濃くない状況ではハリを1本多くしてヤリイカとのコンタクトを多くした方が釣れる確率は上がります。そこで現場で急遽、2本のドロッパー仕掛を作りました。
また、ドロッパーのエダスと幹糸の接続はビーズを用いています。そして、スッテをドロッパーとして使用する際は、エダスにスナップで接続します。
今回の釣行のようにプラヅノをドロッパーとして使用する際は、あらかじめプラヅノにエダスを接続したものを用意しておきます。使用するときは、(幹糸の)ビーズにエダスを通して八の字結びで接続すると便利です。プラヅノ用のスナップも市販されていますが、できるだけハリはシンプルに使いたいので余分な金物は使用しません。
プラヅノを使用するとサバがイタズラしてハリに掛かることも多いですので、予備のハリは複数本用意しておくとよいでしょう。いざというときはハリスを切断し、プラヅノごと交換するなどした方が手間が掛かりませんよ。
乗り渋りのときこそ、誘いを重視した攻めの釣り
1日の釣行で朝から沖上がりの時間まで、ずっと釣れ続けることはそう多くありません。大抵は釣れる時間帯と釣れない時間帯がハッキリと分かれます。やはり潮が程よく動く時間帯はヤリイカの活性も活発でイージーに釣れるのですが、潮だるみなどの時間帯はヤリイカがいるのに掛からない場面も多いものです。
この釣れない時間帯こそ、イカメタル釣法の本領発揮する時間帯です。
イカサビキ仕掛と比較して軽い鉛スッテを使用できるイカメタル釣法では、細かい誘いや微妙なヤリイカの触りを感じ取りながら釣りすることが可能です。イカサビキ釣りでは攻略しにくい乗りの悪い場面でも、イカメタル釣法ならばしっかりと誘い、焦らして、アングラー側から仕掛ける形で釣りを展開することができます。
少しでも、自分の仕掛の周りにヤリイカの気配を感じたら、仕掛を細かくシェイクしたあとにピタッと止めると、間髪入れずにハリに飛びついてくるといった具合です。
また、ヤリイカのアタリを出やすくするために、大きくロッドをリフトアップしたあとにゆっくりと仕掛を落とし込んでいく、あるいは逆にゆっくりとロッドティップを持ち上げていくのも効果があります。
そのほか、スッテやプラヅノのカンナをシングルに変更したり、エダスを長くしてみたりといったことも効果ありです。こうした渋く釣れない時間帯に釣ることができれば、釣果を伸ばせること間違いありません。
固定観念にとらわれずに自由な発想で釣りを考えてみると、「もう一杯多く釣るには何が必要なのか?」が見えてくるかもしれません。その日の状況を分析して、どうすればよいのか試行錯誤するのも釣りの楽しさにつながります。
答えを求めても正解はなかなか導き出せないし、答えはいつも1つではないのが釣りの常ですが、今回のようにヤリイカからの反応が返ってきて楽しめたのは、よい経験になりました。
軽くライトなタックルで楽しめるのがイカメタルのよいところです。春のヤリイカシーズンが終わると次はケンサキイカ、スルメイカのシーズンが始まります。年中、そこかしこでさまざまなイカがねらえるイカ釣りはカンタンでもあり、奥が深い面もある楽しい釣りです。
ぜひ、多くのアングラーに挑戦してもらいたいと思います。
レポーターREPORTER
フライフィッシング、バス、シーバス、ロックフィッシュ、フラットフィッシュ、エギング、鮎釣りまで、さまざまなジャンルを釣りこなすマルチアングラー。現在はスーパーライトからヘビークラスまでジギング全般と、メタルスッテを中心としたイカ釣りに取り組む。
東北エリアの面白い釣りを発信することで、震災復興に繋げていきたいという熱い想いのもと活動中。
GOMEXUS社フィールドテスター /tamaTV社フィールドモニター /キーストン社フィールドサポーター などを務める。
ブログ:Anglershighごめのブログ