置きザオの投げ釣りやブッ込みで多用される遊動オモリ仕掛
前回の「固定仕掛から遊動仕掛へ」では、固定仕掛では対応できない状況を打破するために生まれた遊動ウキ仕掛をメインに説明したが、今回は遊動オモリ仕掛にスポットを当て、ウキ釣り仕掛も含めて固定と遊動での仕掛感度、魚を食わせるときの仕掛抵抗に関して話を進めたい。最初にお断りしておくが固定と遊動の優劣をつけるのではない。あくまでも、それぞれの仕掛のメリットを知っていただきたいのだ。
まず遊動オモリ仕掛とは、中通しオモリやテンビンなどを使って、ライン上でオモリが自由に移動できるようにした仕掛。その効果が期待できる仕掛の代表的なものにブッ込み仕掛や投げ釣り仕掛がある。ルアーフィッシングのテキサスリグも一種の遊動オモリ仕掛だ。いずれにしても基本的にオモリを海底まで沈めて使用する仕掛なのである。ズボ釣りやウキ釣りなどオモリを宙層に吊した状態で使用する場合はオモリを遊動にする意味があまりない。
オモリが固定された仕掛にくらべ、どのようなメリットがあるかというと、魚がエサを食って仕掛を引いたときにオモリは海底にそのままで、ラインだけが引かれるためオモリの重量が邪魔をせず、その力がダイレクトにサオ先に伝わる点と、エサを食った魚に対してもオモリの重さを魚に感じさせず違和感を与えにくい点である。特に15号、20号、30号……とオモリが重ければ重いほど、遊動オモリ仕掛でないと感度は鈍り、魚の食い込みが悪くなるのだ。
しかし高活性で元気いっぱい、少々の重いオモリをものともせずパワフルなアタリを送ってくれる魚には関係ないこともある。固定オモリのほうが、かえってその重量でハリ掛かりをアシストしてくれたりするのだ。ただエサを食った魚がオモリごと引きずってしまうので、その際に根掛かりするリスクは高くなる。
投げ釣りでも常に仕掛をさびく(引いて動かす)キスの引き釣りでは、テンビンオモリのアームに仕掛を直接つなぐ固定式が主流。引き釣りは常にサオを手持ちで釣るため、アタリがあれば即掛け合わせることができるし、弾力があるテンビンアームがサオ先の変わりをしてくれるので、仕掛に付いた数本から10本以上ものハリにキスをどんどんハリ掛かりさせられるのだ。常に仕掛を引いているためオモリから仕掛に負荷をかけているため遊動にする意味があまりないのだ。
しかし置きザオでねらう投げ釣りやブッ込み釣りでは遊動式にするのが一般的だ。とにかくサオ先にアタリを大きく出すためにはオモリの抵抗が少なく、またエサを食った魚にも違和感を与えず一気に走ってもらうため遊動オモリが理にかなっている。遊動オモリ仕掛を使って置きザオでねらうのは日中ならカレイやアイナメ。夜釣りではチヌ、マダイ、コロダイなどの大型魚。キスも夜間は置きザオを2、3本並べて良型、大型を遊動式のテンビン仕掛でねらう。磯のイシダイ釣りも遊動オモリや遊動テンビンを使う。
食い込みがよい遊動と高感度の固定。ウキフカセ仕掛の使い分け
前回紹介した遊動ウキ仕掛も深いタナ、長いウキ下が設定できるだけでなく、使い方によっては魚に与えるウキ浮力の違和感を軽減することができる。ウキ釣り仕掛では仕掛に付いているオモリが軽いほど効果的。
たとえばチヌやグレのフカセ釣りの場合、仕掛を引き戻して誘いをかけたり、仕掛の流れ方を軌道修正するたびにウキとウキ止めが離れ、そのときに魚が引けば、すぐにウキの浮力を100%感じることはない。オモリなしで浮力ギリギリのゼロウキなどを使っていればなおさらだ。
極端な例ではウキ止めなしのスルスル釣りと呼ばれる方法。ウキがライン上で全遊動であるため、いつ魚が食ってもウキの浮力を大して感じない。ただしラインテンションがかかっているので魚に引かれればウキは沈む。
このようにフカセ釣りでの遊動ウキは魚に違和感を与えないために使うこともあり、固定で釣れる浅いウキ下でも魚の食いが渋い場合は、あえて少しだけ遊動部分を作るという方法もとられる。ただし固定仕掛と軽いオモリ、もしくはオモリなしの遊動ウキ仕掛をくらべた場合、感度という面では固定仕掛が圧倒的に遊動を上回る。
遊動部分がない固定仕掛は魚がエサを食ったわずかな動きもウキに表現されやすい。遊動仕掛ではフリーの部分が、その動きを吸収してしまうためだ。また固定ウキは設定したウキ下に仕掛をほぼ確実に入れることができるが、軽い遊動ウキ仕掛は風や波、流れの影響で、きっちりと仕掛が落ちないことがあるのだ。
固定と遊動は一長一短。状況や目的に応じて両者を上手く使い分けることで釣果アップにつながるのである。