あっという間にお盆が終わり、つい先日までのうだるような暑い日々が嘘のように、朝晩めっきり涼しく過ごしやすくなった今日このごろ。涼しげなそよ風と足元から聞こえる虫の音、鱗のようにまばらに広がる空の雲を見ると、その秋の気配に少し“おセンチ”になってしまいそうだ……。
例年通り、今年もさまざまな釣り取材をこなしているが、今年はいつもとやや異なり取材のスタートが遅かった。
例年であれば、フィッシングショーが終わってすぐの3月あたりから何かしらの実釣取材が入るもの。ところが今年は、さまざまな思惑やわが社の練りに練った戦略からスタートが遅れ、実質的に6、7月からの取材となったのだ。そのお陰で、夏は思った以上に取材日程が詰まってしまい、しかも(たまたまだが)これまでになく、西へ東へ奔走し、本当にいろいろな場所に触れ合った気がする。
最近では主に、「ソルトウォータールアー」のジャンルが業界的にも市場的にも伸び盛りなのであるが、特にそのなかでも「鯛ラバ」にわが社は力を入れている。
その鯛ラバの取材が夏から始まり、今まであまり訪れることがなかった中部地区や関東、そして、これまで同様四国や九州と、この夏の間に行き来したといった具合だ。
ハードな「取材ロード」
日程もあまり空くことがなく、場所も飛び飛びであったため、取材荷物の手配や自分自身の移動、メディアの方との日程調整など、なかなかハードな日々だったように感じる。しかし、何よりもその取材に毎度お付合い下さったプロスタッフは、さぞかし大変だったことだろう……頭が下がります。
大変ついでに言うと、この夏の取材はなかなか環境的にも厳しかったように感じる。梅雨が短く、雨の降らない日が長かったせいで、気温が非常に高かった。常に日焼けと熱中症の危険を気にしなければならず、取材前の買出しでは、いつもより余計にドリンクを買い込んだりした。また、これから季節がよくなり、釣果ともに釣り人の皆さんが楽しく過ごせる“秋”を見越しての取材タイミングが“夏”であったため、釣果が厳しいなかでの取材となったことも挙げられる。取材はいつも“イージー“ではないことは重々わかっているつもりだが、竿を出して、キャストして、巻けども巻けども「魚信」がないのはやはり辛いのである。。。(プロスタッフはちゃんと釣っていますよ)しかし、そんな「取材ロード」においても、多少の楽しみや今後への糧はあるもので、これまた勉強になる出来事もあった。
勉強…?
三重県に取材に行った折、晩御飯を食べることになったのだが、元々わが社の爽やか営業マンS君がオススメの鶏焼き屋さんを教えてくれていた。宿泊したホテルのすぐ目の前にある、庶民的なそのお店は、何やら一風変った味とのコト。「三重県まで行って牛肉を食べないとはっ!」と思いつつ、鶏焼き屋さんで思い思いのメニューを注文したのだが、食べてみるとこれがなかなか美味しかった!!
普通“塩”や“タレ”でいただくことが多いと思うのだが、こちらのお店は“味噌ダレ”。しつこくなく、ほどよく脂が落ちた鶏に味噌ダレの組み合わせが絶品で、食と釣り談義が進む進む……。三重県に(お仕事で)通い詰めたS君のお手柄ともいえるオススメに、「地方への取材も悪くないな~」と癒された晩だった。
続いて愛知県での取材の話。
これまたたまたま、先の三重県での取材の次の日となったのだが、三重県から愛知県渥美半島への移動ということで、「伊勢湾一周の移動は時間が掛るな~ぁ……」と、時間と体力の消耗にややウンザリしていた。すると、プロスタッフK氏が「船で伊勢湾を渡れるんとちゃいますか?」とアドバイス。てっきり陸路しか頭になかった私は「なっ、その手があったかっ!!」とすぐさま調べてみると、“パールロード”でお馴染みの「鳥羽」から出港する『伊勢湾フェリー』を発見。伊勢湾を社用車で一周し、疲れた体にムチ打っての釣行になるかと思いきや、鳥羽から伊良湖へたったの55分で到着する当フェリーは、我々にとって“どこでもドア”に等しいほどありがたい交通機関であった。
取材では釣り道具があるために、必ず“車”が移動手段であるという思い込みが邪魔をしていたが、車ごと“船”に乗れるとは……。K氏のお陰で勉強になりました。
千葉県に取材した際は、ほぼ関東初取材となる私の頭のなかで、実は「関東は釣れない……なぜならエサ釣りの人でも苦労しているエリアだから……」と、勝手この上ないネガティブな先入観が渦巻いていた。過去に関東での取材を経験したことはあるがかなり遠い出来事であり、しかもエサ釣りであったため、今回のルアーでの取材に不安と事前の言い訳でいっぱい(笑)だったのだ。
釣果の方も、取材当日はあいにく台風の接近直前で、大きなウネリと濁りもあり、残念ながら恵まれなかったのだが、その外房の雄大な景色と直感的に肌で感じた環境のよさには大いに感動させられた。
太平洋に面した海は沖を見ればどこまでも広がる一面の水平線。陸地を見れば、切り立った崖が果てしなく続き、しかも崖の高さが一様に揃った台地形状。普段目にしている海岸線とは似て非なる空間の広がりに圧倒させられた。しかもここは、南から流れてくる“黒潮”と北から下りてくる“親潮”がぶつかる房総半島。当日は濁りが入っていたが、普段は透明度が高いというお話で、「魚が乏しいはずがないっ」と、たいした根拠もシックスセンスも持ち合わせていない私ではあるが、そう直感させられた。これからまだまだ試してみたい場所である。
取材ロードの楽しみ
ついでの話として、せっかく千葉県まで来たのだから何かご当地グルメをと、協力してくれた営業Tさんにお願いすると、「勝浦坦々麺」なるものがあるそうな。是非食べたいと連れて行ってもらったのだが、これまたなかなかの美味だった!! お邪魔した麺どころは、スープが“醤油”“とんこつ”“味噌”といろいろ選べてやや不思議に感じたものの、海辺に面した土地らしくワカメが乗っており、また、タマネギや青ネギが入ったベーススープにラー油が上手く絡んだ“やや辛“な味が、釣りで疲れた身体にエネルギーを充電してくれたのだった。
まだまだエピソードは尽きないが、この夏の取材を振り返ると、日程が詰まっていることと頻繁な移動は仕事と思えば辛いことも多い。個人的にも年々体力的な問題に直面しているから尚更だ。しかし、取材を通じて新たに見えてくる「土地や環境」「人との出会い」「新しい(釣り)文化の体験」「食」……etc、これらの経験が、また次の発想にも繋がっていくように思える。他社メーカーの担当さんや弊社協力スタッフを含む釣りのプロたちは、私とはくらべものにならないくらい、多くの土地で忙しくさまざまな経験をされていることと思うので、大層なことは言えないが、『新たな体験をし続けること』が明日への活力と人としての深みに繋がるのであれば、それはきっと“楽しい“”嬉しい“出来事なのかもしれない。これからもまだまだ「取材ロード」は続くのである……。
※本文は都合により脚色を交えております。ご了承下さい。