冬の釣りを楽しむ 前編

冬の釣り

富所プロ

やはり冬というのは人間も魚も同じで、活発に動き回るよりは、暖かいところでじっとしていたくなるものである。
こと釣りというのは、寒さに耐える、アタリを辛抱強く待つなど、「忍耐」が必要な趣味なのだ。しかし冬の釣りは寒く厳しいため、釣り人皆が嫌いかというと決してそうではない。
むしろ冬を歓迎するかの様に釣りを楽しむ方法がある。「釣りを楽しむ=季節を楽しむ」と言ってしまってもいいのではないだろうか。
そこで冬ならではの釣りの楽しみ方や魅力を紹介したいと思い、今月のメインコラムではイカ先生の愛称でお馴染み、全国のあらゆる釣りを楽しむマルチアングラーの富所プロに話を聞いてみた。どうやら冬の釣りをもっと楽しむヒントは、釣りだけでなく「食」に隠されているようだ。釣りへのこだわりに負けないぐらい食にもこだわる、「美味しいハナシ」の一部始終。

ズバリ冬の釣り、何を釣る??

冬の釣りとなると、まず狙える魚種を考えた時、だいぶエリアが限られてくる部分はありますね。例えば日本海側の釣りとなると、冬は北風で海が荒れてしまうため船が出せなかったりします。そうなるとアジやメバルなど、オカッパリから狙える魚がメインになりますよね。

オニカサゴ
アマダイ

一方太平洋側になると、釣りをしない人でも「おお!」となる様な美味しい魚が狙える季節ですよね。鍋に本当によく合うオニカサゴだったりとか、アマダイなんかが本格的なシーズンになってきます。
カツオなど青物の様な暖かい水を好む魚でなく、身の引き締まった白身の魚が割合的に多くなってきますよね。他にもアカムツだったり、そんなに走り回る魚じゃなくて、どちらかというと底の方をじっくり狙う魚がメインになるかなと。

冬だからこそ外せない魚、冬だから釣れる理由

アマダイ

先ほど底を中心と話しましたが、個人的にはやっぱり冬のタチウオですかね~。他にもアマダイも外せない。
れっきとした美味しい高級魚をしっかり狙うことが出来ますよね。

確かにこの時期の魚は全体的に身も厚くて、脂も乗っているイメージですね。

そうですね。例えば、もともとタチウオは脂の乗っている魚なのですが、やはり冬のタチウオは特別です。食べるのには持ってこい!ただ寒いんですよね(笑)

しかし寒くても頑張れるのはやっぱり美味しいからというのは大きいですよね。

それと、夏・秋なんかは魚も元気ですが、その分人も多い。そういった、釣り物の多いハイシーズンに比べると、これからの季節は釣り人が圧倒的に少なくなります。それだけ自分の取り分が多くなるというメリットはありますよね。

なるほど、プレッシャーが減るわけですね。確かにあれだけ真夏には混んでいた漁港も、冬は見違えるほど寂しく見えたりしますもんね。

はい。その分、冬は本当に寒いけどチャンスは増えますからね。ちょっと宣伝みたいになってしまいますけど、Hayabusaの光電子®ウェアは本当にじっとしていても暖かいんですよ(笑)是非それを着て釣りに出かけましょう!

先に言われてしまいました(笑)なるほど、では冬も魚は活動している訳で、むしろ冬だからこそライバルも減って、もっと釣れるという見方も出来るわけだ。

美味しいハナシ

ここからがむしろメインの話です!「美味しい」というキーワードを忘れることが出来ない冬の釣りのですが、先ほど伺った富所プロ一押しの、脂の乗った冬のタチウオが手に入った時、実際にどんな風に食べられていますか?

タチウオ

そうですね~。やっぱり釣り人にしか出来ない特権という部分を考えるとまずはお刺身ですかね。

なるほど。確かに傷みやすい魚でもありますし、スーパーでお刺身で食べられるタチウオはあまり見かけませんね。新鮮な魚を持って帰られるのは釣り人の強みです。

タチウオ
タチウオ料理

しかもタチウオって、釣ったら20本30本と釣れてしまう時もありますけど、買うと本当に高い魚ですからね!しかも買っても、お刺身で食べれるものがほとんどない。しかも冷凍して保存も効く魚ですから、火を通して食べるのにもオススメですよね。
バター炒めにしたり、ムニエルなど色々ありますが、後は天ぷらも良いですね~。

天ぷら??それは食べたことありませんでした!

タチウオの天ぷらはふわふわっとして本当に旨いです。それにタチウオの蒲焼もオススメですよ。フライパンで煮詰めの様に蒲焼風に仕上げ、鰻丼の様にして食べるのですが、これもまた絶品です。しかもこの時期は白子と卵もありますから、5本分ぐらいあるのなら卵だけで煮付けても良いですし、ムニエルの時にも軽く小麦粉をつけて一緒にフライパンに乗せてしまっても美味しいですよね。

・・・・・。(完全に料理を想像して言葉が出ない)

インタビューは当初の予定より長く、他にも美味しい魚も話で盛り上がってしまった。話を聞いて実感したのは、やはり「釣って、食べる」という行為は、釣りを趣味として楽しむうえでの原点とも言えるのではないかということ。あくまで自然の恵みを分けてもらっているという気持ちを忘れずに、釣った魚を美味しく頂く。今年の冬は今まで以上に美味しいハナシが舞い込んできそうである。