あの釣りこの釣り古今東西 No.25 遅れてきた?人気魚種「ガシラ」という地味なスター

周囲を海に囲まれた我が国ニッポンは紛れもなく海釣り天国、多種多様な魚がねらえるが、同じ魚種をねらうにしても、さらに同じ釣りジャンルといえど、地方によって独特のカラーがあるのが、何より古くからニッポン人が釣りに親しんできた証拠。
「あの釣りこの釣り古今東西」第25回は、岸からの「ガシラ
(関西名。標準和名はカサゴ。ひじょうによく似たウッカリカサゴも含む)釣り」。北海道南部以南の日本各地に分布し、海釣りの対象魚としてはひじょうに手軽で釣りやす過ぎる魚であるため、海釣り界でスターとして扱われることは従来希だった。しかし、ソルトウォータールアーゲームの普及にともない、その地位は何段階か向上したのではないか思われる。そんなガシラ釣りの今昔を、思い起こせる範囲でご紹介しよう。

意外に素早いガシラの動き
貪欲さのなせる技?

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「ガシラ」は貪欲(どんよく)な魚だと思う。目の前にエサ(食べられそうなもの)があれば、警戒心も薄く見境なしに飛びついて捕食するのが、この魚のイメージだろう。実際にそんなガシラの“無警戒で貪欲”な性質を目の当たりにしたことがある。

とある水族館の飼育ブース。高さ1.5mほどの縦に長い水槽に、10数cmのガシラが20尾近く入れられていたと思う。「面白いものを見せてあげる」と飼育担当者が、水槽の水面にエサ(オキアミだったかな?)をパラリと入れると、それまで底付近で身動きひとつしなかったガシラたちが一斉にロケットスタート! 水面下に散らばったエサめがけて、信じられないよう素早い動きで上昇し捕食したのであった。「あの鈍そうなガシラが!」と、大いに驚いたことを覚えている。

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ガシラは無警戒で貪欲……。とある磯裏の海溝にサビキ仕掛を入れてみたら……

「食べられるものがあれば見境なく食い付く……」そんな性質のガシラだからこそ、海釣り入門者でも難しいテクニックは必要なく、かんたんに釣ることができる手軽なターゲットとしてのイメージが定着しているのは間違いないだろう。

ブラクリ仕掛が物語る
東高西低の人気の差

従来、ガシラ釣りは東高西低、北高南低だと思われる。つまり関東以北では古くからカサゴ釣りとして人気があり、釣り方も確立していたように感じる。カサゴなど根魚をねらうのに特化した「ブラクリ仕掛」での「穴釣り」が、古くから関東や東北地方でもてはやされていたのが何より物語っている。

ちなみに関西名はガシラだが、岡山など瀬戸内では「赤メバル」、四国徳島では「ガガネ」、九州方面では「アラカブ」というのが地方それぞれの通称で、「食べて美味しい魚」という評価は全国共通だ。

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とにかくガシラは美味しい。メバルより身の味が濃いように思う

かつて、兵庫県淡路島の洲本で懇意にしていた釣具店の大将に「ガシラの煮付け」をご馳走になったことがあったが、「激旨」「マジ旨」「メバルの数倍は美味しい」と感激したのだった。魚臭さは微塵も感じず、そのコツは「梅干し」を入れて煮ることと教わり、以降わが家ではガシラの煮付けに梅干しは欠かせない隠し味となった。

デイのワーミングで良型に期待!
ねらいはケーソンの継ぎ目

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近年、ルアーフィッシング、それもライトゲームの流行…メバリングの延長でガシラに出会う機会が増えた方も多いと思われる。ワームなどをキャストしてボトム付近を引けば、ガシラがヒットする確率は高い。しかしとくにねらい目なのは、ケーソン防波堤の継ぎ目の隙間。あまりに狭い隙間は厳しいが10cmほどの間隔があれば、その中にジグヘッドでワームを落とし込んでみるとよい。

そのポイント(隙間)を、もし誰も触っていなければ一発! 隙間内は薄暗いのでデイゲームでも問題なく食ってくる。しかも、そんな隙間にはけっこう良型が残っていることがあるから、ガシラが掛かったらケーソンの隙間から一気に引き抜くのがよいだろう。
タックルはメバリングのものよりも少しハードに、ラインもやや太めを使うほうが安心だ。そしてワームも、メバル用よりも太く大きめのものを使ってみよう。警戒心の薄いガシラにフィネスは無用だ!