釣り人×森づくり「今、私たちにできるコト」とは?
森林育成事業に参加してみた!!

突然ですが今回、岐阜県・郡上市で開催された「第15回長良川源流の森育成事業」という植樹活動に参加させてもらいました。「山・川・海」の関係性を肌で感じることができた貴重な体験を通じ、当記事では「釣り人による森づくり」という観点で、釣り場の環境と森にはどんな関係性があるのか、いち「釣り人」という立場でこの事業に参加して感じたことを紹介したいと思います。
また、これから先の釣り場環境について、釣りを楽しむみなさんにも、さまざまなことを考えるキッカケになれば幸いです…。

釣り人が山に木を植える?
「第15回長良川源流の森育成事業」に参加してみました!

01_ 参加者の方々
この日の参加者は総勢156名

岐阜県のほぼ中間に位置する「郡上市(ぐじょうし)」で開催されたのは、第15回を迎える長良川源流の森育成事業。ここでは「釣り人による森づくり」が行われているのです。
木曽三川の一つとしても有名な長良川は、郡上市の大日ヶ岳(だいにちがたけ)を水源に、伊勢湾へと注ぐ一級河川です。長良川で釣れる魚といえばアユサツキマスが代表的な魚で、熱狂的な釣り人も多く、シーズンになると全国各地からこの川に訪れます。一方、長良川が流れ出る伊勢湾に目を向ければ、青物マダイ、ヒラメなどがねらえる好漁場としても知られる人気が高いエリアで、多くの釣り客で賑わっています。

02_ アユ
伊勢湾から遥々郡上市まで遡ってきた天然アユ

そんな長良川流域の最上流に位置する、郡上市を管轄(かんかつ)する「郡上漁業協同組合(郡上漁協)」が主催する植樹活動で、この日も多くの釣り人や関係者が参加しており、雨の降るなか植樹作業を行いました。郡上漁協では、平成22年から長良川の源流域に広葉樹の植樹活動を行っています。

今回植える木は「広葉樹」

03_ 山の上
急な斜面を登る。澄んだ空気が心地よい

何組かのグループに分かれて今回の現場に向かいました。急な斜面を慎重に登り、それぞれに割り当てられたエリアで植樹作業のスタートです。今回は「トチノキ」「ホオノキ」「コナラ」といった「広葉樹」の苗木を植えていきました。

04_ 針葉樹と広葉樹
植林地の向かいの山。濃い緑に見える部分が針葉樹で明るい緑が広葉樹

広葉樹とは葉っぱの大きな樹木のことで、根をまっすぐ張るスギやヒノキなどの「針葉樹」に対して、横方向にも広く根を張ります。斜面を包み込むように根を張ることで地盤を強固にし、土砂崩れなどを防ぐことにも期待されます。

05_ 広葉樹の苗木
植樹された苗木と分かるようにテープが巻かれています

立派に育ちますように…植樹作業スタート!

山のどこでも植えてよいわけではなく、ある程度の間隔を空けたり、斜面に合わせた場所に植えていきます。斜面には事前に設置された目印があったのでかんたんに作業を進められました。

目印を見つけたら、まずは鍬(くわ)を使って苗木を植えるための穴を掘っていきます。苗木の根部分がしっかりと土の中に埋まるように掘り進めたら、お次は苗木をその穴の中へ。

06_ 作業1
まずは鍬を使って苗木を植えるための穴を斜面に掘ります

苗木を植えたら、掘り起こしたあとの土をかぶせていきます。石や枝葉など、できるだけ異物が入り込まないように注意しなければなりません。

07_ 作業2
根部分が埋まるように土をかぶせます

土をかぶせたあとは、しっかりと足で踏み固め、かんたんに抜けてこないかをチェックします。根が浮いている状態では定着しづらく、土に含まれる水分などの吸い上げを妨げます。苗木を持って少し引き上げてみて動かなければ完了です。

08_ 作業3
苗木に根を張ってもらうためにしっかりと踏み固めます

という具合で10本ほどの苗木を植えたら作業終了。この日の苗木の本数は400本ほどだったので、もう少し植えたかったところですが…参加者のみなさんと分け合いながら無事に植樹作業を終えたのでした。

なぜ釣り人が森づくりを?
釣り場の環境と森の関係とは

09_ 森の中

さて、今回は郡上漁協が開催する植樹作業に参加させていただいたワケですが、近年は漁業者や釣具店が主体となった植樹活動が積極的に行われています。「釣り人がどうして森づくり?」とギモンに思う方もいることでしょう。
釣り場の環境と森には、実際のところどんな関係があるのでしょうか? ここからは森(山)と川、海のつながりや森が持つ役割について触れていきたいと思います。

森が豊かな海をつくり、釣り場を育む

自然環境を広い視点で考えると見えてくるのが、この「山・川・海」の関係性。山から染み出た水が源流となり、徐々に大きくなって川へとつながります。そして、その川も流れの規模を変えながらも大河となり、最後には海へと注がれます。川も海も、すべては山から始まるのです。

10_ 源流
山からしみ出た水はやがて川となり海へと注ぐ

豊かな森や山が育んだ栄養は、川に流れ出て海へとつながり、海に暮らす魚や生物の暮らしや生態系を豊かにします。それらは魚の棲み処や産卵場となる海藻、魚のエサとなるプランクトンを育てる栄養となり、魚や海辺の生き物を守り、増やし、また育てることにつながっているのです。
私たち釣り人にとって、豊かな川や海はなくてはならない存在です。魚が釣れる環境を維持するためにも、こういったつながりや恩恵をしっかりと感じることが大切なのかもしれません。

11_ うみイメージ
森が豊かな海をつくり、釣れる環境を育む

森が持つ「水源涵養」の役割が釣り場を守る?

森や山に求められる役割の一つとして、「水源涵養(すいげんかんよう)」が挙げられます。水源涵養とは、山に降り注いだ雨水をしっかりと吸収し蓄えて、ゆっくり流していく機能のことです。豊かな森に求められることは、このスポンジのような役割で、極端な渇水や洪水を防いだり、土壌を通して得られる養分をゆっくり排出してくれます。

12_ 釣り人と川
水源涵養機能のおかげで釣り場が維持されている

この機能がなければ川に水がなくなり、これまで海と川を行き来していた魚が棲めなくなるかもしれません。ちょっとした雨でかんたんに洪水してしまい、海にも悪影響を及ぼす可能性もあります。また、川や海のさまざまな生物が必要とする養分を届けられないことにもつながります。私たち人間の営みだけでなく、魚や水辺の生き物にとってもこの機能は大切な役割といえるでしょう。

13_ 洪水
水源涵養機能がなければゲリラ豪雨や台風によりかんたんに洪水が発生することも

釣り人が釣り場の環境を守る時代に。
今、私たちにできること…

ここ最近、釣り人による釣り場の環境を守る活動が広がっています。「植樹活動」もその一環ですが、そのほかにも釣り人を巻き込んだ「清掃活動」や魚の「稚魚放流」などが積極的に行われています。釣り人が釣り場の環境を守る時代にシフトしているのです。
「今の私たちだけが楽しめたらよい」という考えではなく、この先10年、50年、100年先の未来も釣りを楽しめる環境を目指していくことが大切なことなのではないでしょうか。

もちろん自然環境に限ったことではありません。ゴミ問題モラル・マナーなど、釣り人が抱える問題はほかにもあるでしょう。すべてを解決することはできないかもしれませんが、今の私たちにできることを考えて行動につなげていかなければならないと思います。

さて、今回は植樹活動への参加を通して感じたことや釣りと森の関係について紹介してみました。
植樹活動に関しては、樹木の成長速度が遅いことから目に見える結果が出にくい活動です。また、「植えたら終わり」ではなく、何年も何10年もかけて成長を見守り、管理していく必要もあります。全国的に林業従事者が減っていることも大きな問題に…。釣り人だけで完結させることは難しいかもしれませんが、関心を持つこと、まず参加してみることが大切だと感じました。

今回植えた木が大木に育ったころ、日本の釣り場はどうなっているのでしょうか。今は私たちにできることを考えて、行動したいと思います。


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レポーターREPORTER

鷲見 大地
プロフィール:鷲見 大地
1998年岐阜県生まれ /岐阜県在住
「海なし県」育ちということもあり河川で釣りを覚え、渓流ルアーフィッシングや鮎の友釣りをメインに釣りを楽しむ。釣具メーカー・ハヤブサに勤務し、最近は堤防・磯釣り・船釣り、SWルアーフィッシングなどに触れながら、日々勉強中。