仕掛屋さんのプチ知識 No.8 仕掛担当が教えてくれた
正しいエサの付け方【虫エサ編】

【閲覧注意】当記事には虫エサ(アオイソメ)の写真が多数ございます。苦手な方はご注意ください

釣り道具において「仕掛」は、ロッドやリール、ルアーほど脚光を浴びるわけではないが、魚に直接触れるアイテムとして、また、仕掛の良し悪しによって釣果が左右されるなど重要なアイテムだ。そんな仕掛を扱うメーカーならではのプチ知識を、開発担当者に聞いてみる当企画。「これ知ってたらお得」「釣果アップにつながる」「釣りが快適になる」…といったアイデアを紹介しよう。

01_ 田中さん

今回「正しいエサの付け方」について教えてくれたのは、長年、仕掛開発に携わる田中さんだ。「オキアミの刺し方」「虫エサの刺し方」について、丁寧に指南してくれた。前回のオキアミ編に続き虫エサ(アオイソメを例に)について見ていこう!

最もポピュラーな「通し刺し」

02_ 虫エサ(アオイソメ)

「虫エサ」とは、おおよそミミズやゴカイなどの細くて長い生き物のことを指し、アオイソメイシゴカイといった多毛類が代表的。その見た目から「触れない…」「触れるけど苦手…」といった方も多いことだろう。無理やり「慣れましょう!」とは言い辛いので恐縮だが(笑)、釣りエサとしては一般的で、ウキ釣りや投げ釣りに使われることが多い。ぜひエサの刺し方を知ってみては?
といったワケで、早速、田中さんに虫エサの付け方を教わった。

03_ ハリを刺す

「(ここではアオイソメを例に使用しますが)最も代表的な虫エサの刺し方に『通し刺し』があります。特殊な釣りでなければ、投げ釣りを中心にこの刺し方が一般的です。
エサの弱りはあとでご紹介する『チョン掛け』に比べると早く、動きのアピールも強くありませんが、なによりエサ持ちがよいのがメリットです」と田中さん。

「口から」通す

「刺し方には3通りほどあるのですが、まず虫エサの口から(頭から)刺す方法があります。虫エサが口を開けたタイミングでハリを通す必要があり、慣れない方や虫エサが苦手な方には難しいものの、頭の硬い部分にハリを通すのでエサ持ちがよいのが特徴ですね」。

アオイソメの場合、口に鋭い牙を持っており、その牙を出したタイミングでハリ先を刺し込む…なかなか初めは度胸がいるかもしれない…。しかし、一旦頭にハリ先を刺せば、あとはハリの軸に沿わせてエサを真っすぐに通していき、ハリ先を抜くだけ。
どこから刺すかの違いのみで、ハリの軸に沿わせてエサを送っていくように刺すのが、通し刺しの基本だ。

「首から」通す

「硬い口のすぐ下の首から刺す方法もあります」と田中さん。「硬い部分を避けられますし(怖い牙も)、頭をカットする手間もないため、やりやすい方法ですね」。
しいて言えば、若干エサ持ちが悪くなることと、最初に首元に刺す際にうまくスッとハリ先を入れられるかどうか…といったところだろう。

「頭をカット」して通す

「一番通し刺ししやすい方法は、頭をカットして刺す方法でしょう。硬い頭をカットするためワームにハリを通すのと同様にかんたんで、また、硬い頭がないために(魚の)食い込みもよくなります。キスやハゼなどにベストですね」と田中さん。
ただし当然、頭をカットしているのでエサの生きが悪くなり、動きによるアピールが最も弱くなる刺し方でもある。

12_ 通し刺し(カット)3

通し刺しの垂らし

これら3通りの通し刺しに共通することとして「垂らしの長さ」がある。
田中さんによれば、「基本的には小さい魚をねらう際には垂らしは短め、大きい魚をねらう際は垂らしを長めにしてください」とのこと。ハリからぶら下がる虫エサの長さを、ねらう魚のサイズに合わせて調整するというわけだ。

「キス・ハゼなどでしたら、ハリからの垂らしは1~2cm程度。食い渋るときは少し長めにするといいでしょう。また、虫エサの尻尾よりの方が細く、動きが活発なため、こちらを長めに使うと食い渋りの際は有効です」と教えてくれた。逆に魚の活性が高い場合は、垂らしはなくてもOKだそうだ。

13_ 垂らし(基本)
基本の垂らしはハリから1~2cm程度

セットがかんたん「チョン掛け」

虫エサが苦手な方でも、比較的かんたんにセットできるのが「チョン掛け」という刺し方。その名の通り、ハリにチョンと掛けるだけの刺し方だ。

「チョン掛けには、虫エサが口を開けたタイミングでハリを口に通す(頭に刺す)方法と、硬い口のすぐ下の首に刺す方法があります。どちらも通し刺しのように体の中にハリを通すわけではないので生きがよく、長時間動きによってアピールしやすいエサの付け方です」と田中さん。
「逆に、チョンと掛けているだけなので、エサ持ちが悪いのがデメリット。エサを丸飲みする魚をねらうのに向いていますね」とのこと。

チョンと掛けているだけなので虫エサが弱りにくく、動きによるアピールは絶大! ただし、体液が出にくいので味やニオイによるアピールは少ないそうだ。

動きとボリュームでアピール「房掛け」

18_ 房掛け

これまでは、虫エサ1匹をシンプルにセットする方法だったが、その応用版ともいえるエサの付け方もある。いずれもエサにボリュームや動きを持たせ、大型魚をねらったり、よりアピールを増すねらいでの付け方だそうだ。
エサも消耗品なので、毎度、贅沢な使い方はできないかもしれないが、「ここぞっ!」というときには試してみてはどうだろうか?

「房掛けスタンダード」

『房掛け』は虫エサ1匹を通し刺しし、余ったハリ先に数匹をチョン掛けする方法です。エサの動きとボリュームが出るので、大型の魚をねらう際に効果的です」と田中さん。
通し刺しとチョン掛けの組み合わせなので、味とニオイによるアピールは控えめだが、なによりボリュームと動きの存在感は大きい。釣りの終盤、エサが余りそうなときにも一発逆転で試してみると面白いかもしれない。

19_ 房掛けスタンダード

「房掛けダブルアピール」

「かなり特殊な付け方かもしれませんが…、ニオイと動きの両方でアピールする付け方もあります」と田中さんが教えてくれたのは、「房掛けダブルアピール」というエサ付け方法。

「虫エサ1匹を縫い刺しにし、余ったハリ先に数匹をチョン掛けする方法なんですが、スタンダードな房掛けに比べ、1匹を縫い刺しにしているので味とニオイがしっかりと出て、チョン掛けした虫エサの動きと合わせて、ダブルでアピールする変わり種です」とのこと。
もうこれ以上ないというくらいアピール力満点のエサ付け方法だろう!

20_ 房掛けダブルアピール

ついでのお話「石粉」の賢い使い方

さて、いろいろと虫エサの付け方について田中さんに教わってきたが、最後についでの話として「石粉(いしこ)」の賢い使い方についても教えてくれた。

「虫エサの苦手な方のなかには、そのグロテスクな姿だけでなく、ぬるぬるとした扱い辛さを気にされる方も多いと思います。虫エサの粘液やカットした際の体液がヌメり、ハリを刺しにくいのはエキスパートの方でも同じかもしれません。そんなヌメリを解消するのに『石粉』が使われます。
ただし、石粉はエサ付けの際の滑り止めとして効果絶大なのですが、虫エサの弱りが早まる原因にもなってしまいますので、少量ずつ虫エサを石粉に入れるのがイイですね。決して、初めから石粉の中に虫エサを全部入れてしまうのは避けましょう!」

ナルホド! 都度、虫エサを使うごとに石粉に付ける。常に生きがよい状態を保つために、面倒がらずに少量ずつ石粉に入れるのが得策というわけだ。

21_ エサと釣りバリ

といったわけで2回に渡ってお届けした「正しいエサの付け方」はココまで。釣りに詳しいエキスパートなら「な~んだ」な知識かもしれないが、釣りを快適に、スムーズに楽しむための知識としてお役に立てれば幸いだ。
仕掛のスペシャリストとして日々開発に携わるなかで、きっとアングラーのタメになるアイデアがいろいろとあるはず! そんな目から鱗なプチ知識を発掘し、引き続きお届けしていこう。