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周りに気兼ねなく、でっかい焚き火をしてみたいと思ったことはありませんか?
子どものころに野外活動でキャンプファイヤーをしたり、アウトドアで小さな焚き火を楽しんだりした経験のある方は多いと思います。夜が更けていくなかで大きな炎を眺めていると、原始時代に戻ったような、自然の中に自分が溶け込んでいくような気分が味わえますよね。
ですが、火を扱うことは危険と背中合わせ。市街地ではもちろんのこと、人里離れた海や山でも、不用意な火の取り扱いは思わぬ大火事につながりかねません。だからこそ、どこでどんなふうに焚き火をするかには、細心の注意が必要なのです。
倉橋島「ホシアカリ山びこ」
広島・倉橋島の南岸、桂浜(かつらがはま)からすぐの山際には、石切り場の跡地があります。昭和後期まで採石が続けられていましたが、現在は「ホシアカリ山びこ」というキャンプ場に生まれ変わっています。
まず、このロケーションがすごい! 一番高いところで60mある岩壁には、花崗岩を少しずつ切り出した跡が刻み込まれており、それが三方向から迫ってきます。その力強い切り出し跡はまるで、東京・西新宿の高層ビルの谷間にいるような錯覚を覚えるほど。しかし、実際は周囲を山に囲まれ、唯一空が開けている南西方向には海。思わず感覚がバグります。

ホシアカリ山びこ
住所:〒737-1377 広島県呉市倉橋町桂浜西側採石場跡
HP:https://beach-sandal.jp/yamabiko/
桂浜にはときどきキス釣りでくる程度でしたが、知り合いに誘われて、「ホシアカリ山びこ」で不定期に開催されている焚き火会に軽い気持ちで参加することになりました。桂浜から若干のデコボコ道を車で2分も登っていくと、突如として謎めいた石切り場跡地が姿を現します。「戦隊シリーズのロケ地か?」と思うほどのインパクト。いやあれはたしか北関東かどこかだったか…。実はこの違和感こそが、「ホシアカリ山びこ」で巨大焚き火ができる理由なのです。
戦隊シリーズでお約束の爆破シーンと巨大焚き火の共通点、それは「少々派手にやっても安全が確保しやすいこと」です。なにせここは三方向を50~60mの切り立った花崗岩の壁に囲まれており、火の近くには薪を持ってくる人以外には何もありません。火の粉が舞っても、せいぜい岩壁の高さの3分の1程度までしか上がらず、理想的な環境です。
私が訪れた日は、倉橋の観光事業会社「ビーチサンダル」と、広島の焚き火愛好家の集まり「日本焚火学会」による焚き火会が開催されていました。

焚き火準備ののちスタート!
昼過ぎから、ゆるゆると参加者が集まり始め、木枠を組み上げていきます。「…いきます」と書きましたが、私自身は前の用事が長引いてしまい、到着したときにはおおかた木枠が組み上がっていましたので、木枠の中に重量級の木材を投入したり着火剤替わりの小枝を挿し込んだりするだけの参加になりました。ラストには、夜が更けて投入予定の300kgはありそうな弩級の木材が3つユンボで運ばれてきて、いよいよ準備完了です。
そして、ちょっとしたセレモニーをしたのち、いよいよ着火の瞬間。たくさん挿し込まれた小枝に火が回るとあっという間に「パチパチ」とはぜる音がしだして、ものの数分で炎は業火となりました。夕方の空や周囲の岩壁に炎が映えます。

新しい木材が追加されるたびに「ブワっ」と大量の火の粉が夜空へ舞い上がる光景は、もはや映えの極致! スマートフォンのスローモードで撮影したものを見ると、火の粉がまるで生き物のようにウネウネと昇っていく様子が分かります。夜が更けると、岩壁を照らすライトの色が次々に切り替わっていき、さらに幻想的な雰囲気になっていきました。
焚き火は楽しい!
今回ご紹介した焚き火イベントは、なんといっても焚き火好きが高じて「学会」まで作ってしまった方々による大掛かりなイベントでしたので、誰でも同じようにできるかというと、ややハードルが高いかもしれません。ですが、みなさんでしっかりと安全を確保したうえ、コントロール可能な範囲で焚き火を楽しんでみてははいかがでしょうか。
日本焚火学会のサイトには「(焚火)公式ガイド」「焚火の基本」「焚火と法律」といった記事もあります。また、倉橋島の「ホシアカリ山びこ」に泊まって焚き火に挑戦してみるのもおススメです。安全に、そして楽しい焚き火を体験してみてください!

【おまけの話】国会議事堂の花崗岩「尾立石」
ところで、実は東京都千代田区にある国会議事堂には、全国各地の高品質な石材が使われています。そのなかでも、外壁の2階部分には、なんと倉橋島産の花崗岩「尾立石(おたていし)」が使用されているそうです。
尾立石の別名は「議院石」とも呼ばれており、それだけ国会議事堂のシンボル的な石材といえるでしょう。みなさんが国会議事堂の外観をイメージする際、その大部分が実は倉橋島産の石材で覆われていることを知ると、広島人としてなんとも誇らしい気持ちになります。もしかすると、かつて「ホシアカリ山びこ」の場所から切り出された石材も、国会のどこかをしっかりと形作っているのかもしれませんね。

高さ50~60mの岩壁に囲まれた石切り場跡で行われた焚き火会では、火の粉が舞う迫力ある炎と、ライトに照らされた岩壁が幻想的でした。安全に配慮された場所だからこそ実現できるダイナミックな焚き火は、普段なかなか体験できないものです。いつもとは違う焚き火の楽しみ方、試してみるのもおススメです。
企画・記事協力:FISHFRIENDS
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レポーターREPORTER
波止メインです。船釣りもしたい!